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第14話

「いや……割と前回の『同級生』とか『友人』とかは最後の最後で、柿埼は死ぬんですけど、まだギャグっぽい感じだったり、ほのぼのって感じだったから油断したよね」  柿埼こと津麦が何とか取り繕うように言うと、多米もそれに倣う。 「まぁ、そうだね。『義理の兄弟』か……もし、自分が2人の立場だったら、ロマンティストとーりはどう?」 「それ、まだ続行だったん?」 「まぁ、うん。で? 十李さんは? やっぱり、柿埼みたいな感じ?」 「うーん、悩むな。柿埼みたいに本当は好きなのに突き放すような風にはできそうにないし、かと言って、栗田みたいに偏見とか困難を恐れずに相手に好きって言うのも難しそうだし」 「そう……」  多米は津麦にもそんな風に思えるほど、恋をしている人間がいるのか、と思うと、今日の実況はここまでにしないかと切り出す。  もう3月も3週間を切っている。あっという間に大学4年間は終わり、津麦も多米も卒業する。  だが、既に『LOVERS』の攻略は96パーセントまで進んでいて、あとは特殊バッドエンド1つとトゥルーエンド1つを残すのみとなっていた。 「でも、ほんと、kyo-さんはフラグ、立てんの、上手いよね。NO.8だか、9だかの『電気ウナギ』エンドとかなんでそのフラグで立つんだって感じだし、ナンバー忘れたけど、『毒林檎』のフラグは初期の方に重要なフラグがあって、それがなかなかさり気なくて、鬼畜だしって、たーさん?」 「えっ、ごめん、ちょっと鼻が詰まってるみたいで……」  世間的には既に花粉症の季節になっていて、多米は鼻をかみながら、実況を撮り続けていたのだと言う。  確かに、多米が若干花粉症気味なのも、鼻が辛いというのも嘘ではないが……。  BLゲームにしては難易度が高いものの、多米の粘り強い攻略で、もうすぐ『LOVERS』の実況は終わる。  それは津麦との実況の終わり、津麦との関係の終わりを意味していた。 「悪あがきだな……」  多米は津麦に聞こえないように呟くと、深緑の折りたたみ椅子から立ち上がる。  悪あがき……。  どうしたって栗田のように時間を戻して、津麦と一緒の時間を過ごすなんてことはできないから、先延ばしにしてしまう。  いつか終わるであろう、津麦と一緒にいることができるその日を。

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