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第15話

「なぁ、実況は休んでるし、どっか行かね?」 津麦の部屋でドラサバをプレイしたり、各々、RPGゲームのエンタクことエンジェルタクティクスやエタエデことエターナルエデンを攻略したりする。 腹が減れば、多米が作ったり、テイクアウトをしてきたり、2人でファミリーレストランにも行く。  勿論、たまに多米が自分の部屋に帰ることや眠くなって仮眠をとることはあったが、基本的にはいつも一緒だった。 「びーさんと?」 「うん、びーさんと」  茶化すように津麦は自身とどこかへ、と言うと、ゲームのメインヒロインのように笑う。『あざとい』という言葉が多米の頭によぎるが、嫌いというのではない。 「良いよ。じゃあ、場所は? 海? それとも、いっそ天国へでも行く?」 「あ、それ、『栗田』の台詞じゃん!」  『LOVERS』のバッドエンドNo.34『栗田』。  多米が口にしたのは柿埼のことが好きになり過ぎて、病んでしまった栗田が柿埼を包丁で刺す直前の台詞だ。 「でも、天国か……どんなところなんだろうなぁ」 「まさか、本当に天国に行くのが希望とか?」 「いや、行くにしても、ずっと先の話だろうけど、RPGみたいに明るくて、良い場所なのかなって……」  その瞬間、多米の脳裏にはあたたかな光の中、美しい自然と音楽で満ち溢れた光景の中に何人かの天使が舞っているのをイメージする。そこには、時間という概念はなく、年もとらず、ずっと愛する者と一緒にいられる。  津麦とだって、一緒にいられる、と思った。 「たーさん?」  津麦はおそるおそるという感じで、多米に声をかけると、多米の目から涙が一筋だけ流れた。 「どう……」 「ああ、ちょっと花粉が目にもきちゃってるかも」  多米は自分の荷物を無造作に鞄に詰めると、家に帰ってくる、と言う。  だが…… 「なぁ、たーさん」  津麦は多米の左手をパシッと掴むと、多米を呼ぶ。  すると、多米はまた一粒、二粒と涙を零した。 「何?」  多米は短く津麦に答える。 「あ、いや……花粉症、落ちついてたら、明日、蓮田駅に10時集合で」 「え?」 「天国には行けないけど、海にでも行くべさ」 「行くべさって何? まぁ、良いか」  じゃあ、決まりと津麦は笑う。  元々、津麦とは同じ大学で、同じ学部の、同じ学科の同級生だった。  しかし、別の世界にいるような人間で、本当なら出会うことや好きになることすらなかったのかも知れない。 「(それを思えば、今の状況だって十分だし、十分過ぎるじゃん)」  多米はそう思うと、明日は津麦と海に行くのに眠れず、実況していった動画を再生した。

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