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第16話

『再生数:194910回』 『再生数:211607回』 『再生数:181304回』 『再生数:241913回』 『再生数:231812回』 ・ ・ ・  動画を上げていたのは十李とkyo-という実況者で、彼らが大学1年生の3月から3年間で上げたのは7本のゲーム実況だった。  1タイトル1回のみの単発もあれば、全エンディングまで40回ほどかかったものもある。 明るく、よく通る声の十李に、優しく、落ち着きのある声をしているkyo-。そんな2人の実況は声の相性も良く、最初は津麦目当てだった視聴者も多米を共同実況者として認めるまでになっていった。 「俺、今までたーさんに言ってないことがあったんだけど……」 「ん?」  実況者・十李こと津麦桃李と同じく、実況者・kyo-こと多米杏一は電車に乗っていたが、とある駅で降りる。  というのも、昨日、多米の花粉症が落ち着いていたら、海にでも行こうと言っていたからだ。文字通り、プラットホームからでも海が見える駅。  だが、そこには青い海もなく、春先ではあるものの、散歩する人影の1つもなかった。 「俺って極度の雨男でさ、いつも花見とかバーベキューの約束をしてたら、雨、降らせてたんだよね」  津麦はぽつりと言った感じで告白すると、多米は笑う。 「なんだ。そんなことか……俺も雨男の方で。しかも、それこそびーさんも真っ青なエピソードもある」  2人の雨男が海に来たせいか、雨を通り越して、季節外れの台風が来ると言う。 「だから、お互い、ゲームとかインドアでできるものが好きになったのかもね」  しかも、2人が蓮田駅から電車に乗った時は台風自体は南の海域で発生していたものの、まだ日本に上陸するという情報さえも出ていなかった。 「何だか、世界が終わるってことがあれば、こんな感じなのかな?」  普通では考えられないスピードと軌道で上陸しつつある黒と白と灰色の雲に、同じく、白い波に黒や灰色に染まる海面。  雨は降っていないが、豪雨になるのも時間の問題かも知れない。 「まぁ、ゲームとかだと世界が終わるなんて設定、よくあるけど、本当に見たことがある人なんてさ。いる訳ないっていうか……」  津麦は何かを考えているのか、先程から多米ばかりが口を開いている。  そもそも、津麦の方から海に行こうと言い出した筈なのに、異様なテンションの低さに多米は戸惑う。 「帰れるところまで帰る? 台風で電車が止まってしまうかも知れないけど」  多米はそんなことを言うと、反対側のホームの時刻表を覗く。ホームには海と同様、誰もいなかったが、津麦は多米を後ろから抱きしめた。

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