7 / 10

第7話 再会とあらたな約束

「……っ」  蒼空は、感極まって、言葉が出なかった。 「やっと、やりたい、って思える事が出来たから、お前に聞いて、ていうか、相談に乗ってもらおうと思って」 「相談?」 「LINE見てないのか?」  メッセージを、最後まで読んでなかった、ことを思い出し、蒼空は携帯をみたまま、目を見開いて止まっていた。 「え? マジ?」 「そう言う事なんだけど、頼めないかな? 来年……」 「どうにかする!」 「どうにかって。頼んでおいて、こう言うのも何だけど、そんな簡単に言っていいのか?」  少し心配そうに、夕輝は、蒼空を見上げていた。 「お前こそ、後になってナシなんて、絶対言わせないからな!」 「何だよ、そんなにムキになって」 「約束だぞ?」 「何言ってんだ? 俺が頼んでんのに、断るわけねーだろ」  夕輝の様子から、記憶が戻ったわけではなさそうだった。だけど、今度こそ、繋ぎ止めておける。  蒼空は、夕輝の肩に手をおく。 「そんな、じろじろ見るなよ……恥ずかしい」  少し、頬を赤く染めて、夕輝が目を泳がせていた。 「何日くらいいるんだ?」 「えっと……5日くらい。やっと、休みが取れてさ」 「明日! 明日は空いてるんだろ?」 「そりゃ、何も予定ないけど……」 「明日、飲みいくぞ、いいな?」  成人式にも来なかったせいで、夕輝とは、酒も交わした事がない。なにより、酔っ払った夕輝が見たかった。 「いいけど……」  気が進まない表情をする。 「嫌なのか?」 「そうじゃなくてさ。俺、酒飲めなくて。あーでもさ! 仲良かったやつ呼んでくれよ。久しぶりに顔見たいし。人選はお前に任せる」  夕輝は、蒼空の胸を拳で軽く叩いた。  飲ませたら……どうなるんだろう?  そんな、好奇心が、蒼空の中に沸々と湧いてきた。 「分かった。じゃ、明日、LINEで場所送るから」 「頼むな。きっとみんな、大人になってるんだろうな」 「バーカ。お前もだぞ」  夕輝の、少し大きめの、白いパーカーの背中に、桜の花びらが、ふたつ、寄り添うように飾られていた。 「あはは。じゃ明日な」 「送らなくて平気か?」 「何言ってんだ? お前。男なんだから大丈夫に決まってんだろ? 可愛い彼女くらいできたんだろ? そいつに言ってやれよ」 「大事だと思ってる、人はいる……」  帰ろうとして振り返った、夕輝は、眩しそうに蒼空に笑顔を返した。 「やっと、そう思う人が出来たんだな。そうだ、明日、その人も連れて来いよ。紹介してくれ」  分かってない。  驚く程、鈍感な夕輝に、蒼空は自信を持って言った。 「あぁ、明日。教えてやるよ」 「約束だぞ」  想いを伝えて、繋ぎ止めるのは、明日しかない。  蒼空は、まだ何も知らない彼の、驚く顔を思い浮かべて、にやにやと笑みを浮かべていた。

ともだちにシェアしよう!