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第7話 再会とあらたな約束
「……っ」
蒼空は、感極まって、言葉が出なかった。
「やっと、やりたい、って思える事が出来たから、お前に聞いて、ていうか、相談に乗ってもらおうと思って」
「相談?」
「LINE見てないのか?」
メッセージを、最後まで読んでなかった、ことを思い出し、蒼空は携帯をみたまま、目を見開いて止まっていた。
「え? マジ?」
「そう言う事なんだけど、頼めないかな? 来年……」
「どうにかする!」
「どうにかって。頼んでおいて、こう言うのも何だけど、そんな簡単に言っていいのか?」
少し心配そうに、夕輝は、蒼空を見上げていた。
「お前こそ、後になってナシなんて、絶対言わせないからな!」
「何だよ、そんなにムキになって」
「約束だぞ?」
「何言ってんだ? 俺が頼んでんのに、断るわけねーだろ」
夕輝の様子から、記憶が戻ったわけではなさそうだった。だけど、今度こそ、繋ぎ止めておける。
蒼空は、夕輝の肩に手をおく。
「そんな、じろじろ見るなよ……恥ずかしい」
少し、頬を赤く染めて、夕輝が目を泳がせていた。
「何日くらいいるんだ?」
「えっと……5日くらい。やっと、休みが取れてさ」
「明日! 明日は空いてるんだろ?」
「そりゃ、何も予定ないけど……」
「明日、飲みいくぞ、いいな?」
成人式にも来なかったせいで、夕輝とは、酒も交わした事がない。なにより、酔っ払った夕輝が見たかった。
「いいけど……」
気が進まない表情をする。
「嫌なのか?」
「そうじゃなくてさ。俺、酒飲めなくて。あーでもさ! 仲良かったやつ呼んでくれよ。久しぶりに顔見たいし。人選はお前に任せる」
夕輝は、蒼空の胸を拳で軽く叩いた。
飲ませたら……どうなるんだろう?
そんな、好奇心が、蒼空の中に沸々と湧いてきた。
「分かった。じゃ、明日、LINEで場所送るから」
「頼むな。きっとみんな、大人になってるんだろうな」
「バーカ。お前もだぞ」
夕輝の、少し大きめの、白いパーカーの背中に、桜の花びらが、ふたつ、寄り添うように飾られていた。
「あはは。じゃ明日な」
「送らなくて平気か?」
「何言ってんだ? お前。男なんだから大丈夫に決まってんだろ? 可愛い彼女くらいできたんだろ? そいつに言ってやれよ」
「大事だと思ってる、人はいる……」
帰ろうとして振り返った、夕輝は、眩しそうに蒼空に笑顔を返した。
「やっと、そう思う人が出来たんだな。そうだ、明日、その人も連れて来いよ。紹介してくれ」
分かってない。
驚く程、鈍感な夕輝に、蒼空は自信を持って言った。
「あぁ、明日。教えてやるよ」
「約束だぞ」
想いを伝えて、繋ぎ止めるのは、明日しかない。
蒼空は、まだ何も知らない彼の、驚く顔を思い浮かべて、にやにやと笑みを浮かべていた。
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