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遊園地

買い出しは昼前には終わり、慶太は遊園地に行こう、と行ってきた。 恥ずかしながら、俺は今まで遊園地に行った事がない。 せいぜいテレビ番組やタウン情報誌で見かける程度。 「どれから乗ろう、今日中に制覇できるかな」 パンフレットを眺めながら、慶太は嬉しそうだ。 夏休みともあり、家族連れやカップルが目立つ。 みんな大はしゃぎだ。 「まず、あれに乗ろう、広斗さん」 指差した先はジェットコースターだった。 多大な悲鳴が聞こえる。 「俺はいいよ、お前乗ってこい」 「なに?怖いの?」 その一言で意を決した。 胃がもちあがるような感覚と直角に落ちていく恐怖、俺は降りるなり、疲労困憊だ。 「面白かったー、ね、広斗さん」 「そうだな」 なんとか取り繕う。 慶太はあれこれ、絶叫マシンに乗りたがり仕方なく付き合った。 「少し休んでいいか」 「なにか飲む?買って来るよ」 敷地内のベンチに腰掛けると慶太が出店に向かっていく。 「はい、広斗さん」 コーラが2つ。 久しぶりにコーラを飲んだが、暑さの中と散々、絶叫マシンに乗った疲れからとても美味く感じた。 「お腹は空かない?広斗さん」 「少し減ったかな」 「飲んだらなにか食べに行こうか。レストランは...っと」 コーラの紙コップ片手に慶太はパンフレットを見る。 オレンジと黄色、黒のボーダーのオシャレなTシャツと黒のデニムが良く似合う。 俺は薄いストライプのシャツの裾を捲りあげ、ボトムはベージュのデニム。 首元にはお気に入りの自分で買ったシルバーのネックレス。 「少し歩いた先にあるみたい。もう飲んだ?」 「飲んだよ」 「じゃ、移動しようか」 2人で園内の小洒落たレストランに入った。 一体、年の離れた俺たちは周りからどう写ってるんだろう。 兄弟、てとこか?というか、兄弟で遊園地に来るものか、が愚問だが。 慶太はドリア、俺はナポリタンを頼んだ。 「慶太は兄弟、いないのか?」 「いるよ」 そう言うと、水を飲んだ。 「ねえ、次は何に乗りたい?」 はぐらかすように慶太がテーブルにパンフレットを拡げた。 「そうだな...とりあえず、絶叫マシンはもういいかな」 「やっぱり怖いんだ、広斗さん」 笑う慶太に誤魔化そうとする俺。 突然、慶太が俺の口元を紙ナプキンで拭いてきた。 「ソース付いてる」 「あ、ああ。ありがとう」 俺の要望通り、あとは緩やかなアトラクション。 「お化け屋敷だって」 「いいからそういうの」 「やっぱり怖がりだ、広斗さん」 「うるさいよ」 「じゃ、あれにしよ?」 巨大な観覧車を指差した。 30分待ちでようやく乗れた。 「高いのは平気?」 「高所恐怖症って訳じゃないよ、絶叫系が苦手なだけ」 暫く、向かい合わせで外を見渡した。 「広斗さんのマンションも見えるかな」 「見えるわけないだろ、方向違うんだし」 「わからないじゃん、見ようと思えば見えるかも」 外の雄大な景色を眺める真っ直ぐな瞳は何処か儚げだ。 「あ!」 慶太が叫ぶや否や、打ち上げ花火で観覧車の窓が彩られた。 気がつけば、もう夕方になっていた。 「綺麗だね」 「だな...」 2人で次々に空を染める美しい花火を観覧車から見下ろした。

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