12 / 21
第12話
「やっと、納得したかも。伯父さんの通夜や葬儀で、2人の兄妹は泣いていて、広斗さんはどうして泣かないのかずっと気になってた」
隣同士で並んで座り、映画は付けっぱなしなままだ。
「よほど情がないのか、プライドが高いのか、わからなかった、最初はね。
きっと泣けないだけだったんだね。
真実を受け止めきれなくて。
本当は一番、泣いていたのは広斗さん」
慶太は続けた。
「明奈は、通夜も葬儀もなかったんだ。霊安室で眠る明奈を見てたら涙が止まらないし、
泣きじゃくった。
何もしてあげれなかった自分に一番、腹が立ったんだ」
ふと、慶太が優しい眼差しで俺を見た。
「初めて会った日に言ったじゃん?慶太の好きなように生きるのが一番、みたくさ。俺も広斗さんに同じ事が言えるよ」
「...ゲイでも構わない、てこと。か」
「犯罪を犯してる訳じゃないんだし...でも」
慶太から笑顔が消えた。
「誰とでも寝るのは賛成できない」
真剣な慶太の眼差しとぶつかった。
「好きな人、見つけてよ」
「うん...」
「まだ、俺も半月あるし、夏休み」
そう言って慶太が笑った。
この晩、慶太になにが食べたいか、聞いたら、
「広斗さんの作るもの全部食べてみたい」
答えにならず、
魚の煮付け、茄子の煮浸し、タコと胡瓜、わかめの酢の物、炊き込みご飯、豚汁にした。
「凄い!豪華だね!」
「お前んちに比べたら全然だろ」
「家政婦だもん。愛がないから、愛が」
いただきます!と手を合わせ、散々、美味っ!を連発しながら慶太は食べる。
炊き込みご飯も豚汁もお代わりしまくった。
慶太を恋愛対象に思うのは変だよな、てわかってるのに、何処かで意識してる。
食事も慶太が食べ、笑顔を見届けてから、俺も箸を伸ばす。
ショッピングに映画館、水族館、プラネタリウムが見たいというので博物館も行った。
あっという間に慶太の夏休みが終わろうとしていた。
ともだちにシェアしよう!