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初めての涙、優しい気持ち...
「きっと、広斗さんのご両親...少し意固地になっていたのかもね。埃ひとつ見当たらない。
毎日、広斗さんがいなくても掃除していたのかもしれないね」
学習机を指でなぞりながら囁くように言った。
「どうしたら良かったんだろう...親不孝だよな、俺...」
慶太が手を握ってくれた。
温かい手のひら。
「大丈夫だよ。きっと2人は怒ってなんかない。広斗さんの幸せを願ってる。俺はそう感じるよ」
優しい言葉に胸が熱くなり、ようやく初めて俺は母だけでなく、父の死に涙が止まらかった。
今晩は俺の実家に慶太は泊まることになった。
慶太の父は多忙だからと来てはいなかった。
お母さんもそんな旦那だから準備もあるし、と言い、慶太に、帰りましょう、と促したが、慶太は僕が送っていきますから、と窘めた。
「東京の広斗さんの部屋より、物が多いね」
慶太はニコニコしながら、実家の俺の部屋を見て回る。
「アルバム見たいな」
「下にあるかもな、待ってて。あ、飲み物とかは」
「良かったら」
俺は階段を降り、アルバムと飲み物を取りに行った。
兄の優斗が親戚と酒を酌み交わし、妹の真由が料理を出している。
「手伝おうか」
「どうしたの?お兄ちゃんいきなり、びっくりした」
真由は笑顔だった。
「いいよ、楽にしてて。動いていた方が気が楽なの」
「アルバム、てあるかな」
「どうだろう...父さんの部屋にあるかも」
俺は1階の奥にある父さんの部屋に入った。
本棚には沢山の書籍、しばらく探して、ようやく、アルバムを見つけ出した。
2ℓのコーラと2つのコップ、脇の間にアルバムを挟み、階段を上がり、自室に入る。
俺の本棚から中学の頃の教科書とかを手に取り、眺めていた慶太に手渡し、2人でアルバムを見た。
「うわっ、若い」
「自分は若いとか子供とか言われたらぶすくれる癖に」
思わず笑うと、確かに、と慶太が笑い返す。
「中学の頃、小柄だったんだね」
「そりゃ子供だったからな」
「今何センチ?」
「だいぶ測ってはないけど...最後測った時が173だったかな」
「まぢ!俺、もうすぐ追いつくよ、170になったから」
「まだ伸びんの、お前」
「もちろん」
お互い、丸い目で見つめ合い、その後、同時に爆笑した。
トントン、ドアがノックされた、兄の優斗だった。
だいぶ飲んだみたいだ。
「風呂沸いたから入れ、あ、慶太くんも」
慶太に気づき、慌てて口調を変える。
「ありがとうございます」
慶太の朗らかな笑み。
慶太の邪気のない笑顔は汚い俺の心まで綺麗にしてくれそうだ。
だが、その無邪気さを汚してしまいそうで怖い。
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