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第14話

「きっと、広斗さんのご両親...少し意固地になっていたのかもね。埃ひとつ見当たらない。 毎日、広斗さんがいなくても掃除していたのかもしれないね」 学習机を指でなぞりながら囁くように言った。 「どうしたら良かったんだろう...親不孝だよな、俺...」 慶太が手を握ってくれた。 温かい手のひら。 「大丈夫だよ。きっと2人は怒ってなんかない。広斗さんの幸せを願ってる。俺はそう感じるよ」 優しい言葉に胸が熱くなり、ようやく初めて俺は母だけでなく、父の死に涙が止まらかった。 今晩は俺の実家に慶太は泊まることになった。 慶太の父は多忙だからと来てはいなかった。 お母さんもそんな旦那だから準備もあるし、と言い、慶太に、帰りましょう、と促したが、慶太は僕が送っていきますから、と窘めた。 「東京の広斗さんの部屋より、物が多いね」 慶太はニコニコしながら、実家の俺の部屋を見て回る。 「アルバム見たいな」 「下にあるかもな、待ってて。あ、飲み物とかは」 「良かったら」 俺は階段を降り、アルバムと飲み物を取りに行った。 兄の優斗が親戚と酒を酌み交わし、妹の真由が料理を出している。 「手伝おうか」 「どうしたの?お兄ちゃんいきなり、びっくりした」 真由は笑顔だった。 「いいよ、楽にしてて。動いていた方が気が楽なの」 「アルバム、てあるかな」 「どうだろう...父さんの部屋にあるかも」 俺は1階の奥にある父さんの部屋に入った。 本棚には沢山の書籍、しばらく探して、ようやく、アルバムを見つけ出した。 2ℓのコーラと2つのコップ、脇の間にアルバムを挟み、階段を上がり、自室に入る。 俺の本棚から中学の頃の教科書とかを手に取り、眺めていた慶太に手渡し、2人でアルバムを見た。 「うわっ、若い」 「自分は若いとか子供とか言われたらぶすくれる癖に」 思わず笑うと、確かに、と慶太が笑い返す。 「中学の頃、小柄だったんだね」 「そりゃ子供だったからな」 「今何センチ?」 「だいぶ測ってはないけど...最後測った時が173だったかな」 「まぢ!俺、もうすぐ追いつくよ、170になったから」 「まだ伸びんの、お前」 「もちろん」 お互い、丸い目で見つめ合い、その後、同時に爆笑した。 トントン、ドアがノックされた、兄の優斗だった。 だいぶ飲んだみたいだ。 「風呂沸いたから入れ、あ、慶太くんも」 慶太に気づき、慌てて口調を変える。 「ありがとうございます」 慶太の朗らかな笑み。 慶太の邪気のない笑顔は汚い俺の心まで綺麗にしてくれそうだ。 だが、その無邪気さを汚してしまいそうで怖い。

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