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第16話

「連れてきたよ、明奈。お兄ちゃんがずっと会わせたかった人」 慶太が写真の中の明奈ちゃんに声をかける。 「笑われるよ、明奈ちゃんに」 「どうして?」 「男の人なの?て」 「そんな事ないよ」 「それに...俺、穢れてるし」 「穢れてる...?転んだの?いつ?汚れは見えないけど」 俺の体をぐるぐると見て回る。 「汚れてる、て感じてるならお風呂入ろ、ほら」 慶太が手を差し出した。 その優しく温かい手を握り、これまた広い浴室に向かった。 足を伸ばしても届かないくらいのジャグジー付きの風呂に2人で浸かった。 よせ、というのに、背中を流してくれた。 「恥ずかしがってる」 湯船の中、目と鼻の先に裸の慶太が座っている。 自分でも驚きだった。 両手両足を合わせても全然足りないくらいの男に抱かれたのに。 先に上がってて、と頼むと、なんで、と返ってきた。 取り越し苦労かな、と思ったが、念のため、アナルを洗浄した。 上がると待っていたかのようにバスタオルと部屋着を渡され、着替えた。 「良かった、サイズが合って。いつかこんな日が来たら、て目に付いたから買っておいたんだ」 真っ白なパーカーのスウェット。 慶太はお揃いの黒のパーカーのスウェットを着ていた。 ペアルックなんて生まれて初めてで顔が熱い。 突然、慶太にダブルベッドとは利かない、キングサイズのベッドに仰向けに押し倒された。 「全部、知りたい。教えて。広斗さんの好きなこと、気持ちいいところ」 自分で慶太が穢れてしまう、そんな気持ちはもう無くなった。 夢中で舌を絡め、キスをした。 「みんなが見てるよ」 離れてはいるが犬たちの視線を感じ言うと、 「みんないい子だから大丈夫だよ」 慶太はもしかしたらディープキスも初めてかもしれない。 月夜の中、本能の赴くまま、互いの体を貪り合った。 年下の慶太に抱かれながら感じ、イッた。 慶太も俺の中で射精した。 慶太に胸元を抱き締められたまま、天井を見上げた。 「初めてじゃないのか?慣れてたな」 「予習しといたから」 「予習!?」 俺はまさかと思い、上半身を起こした。 「ネット、てつくづく便利だよね」 その一言でホッとした。 互いに下着のまま抱き合い、朝を迎えた。 来たときと同様、慶太の後を追い、1階のリビングへ。 「おはようございます。慶太さま」 「おはよう、石賀さん」 さま、付けなのか、と家政婦の中年の女性と慶太を見た。 「送って頂いてありがとう、なにかお礼しないといけないわね」 お母さんの一言に 「何もいらないです」 「俺、この人が欲しい。付き合ってるんだ、認めて欲しい」 俺は絶句した。 慶太のお母さんもぎょっとした表情を浮かべた。 「認めてくれないなら出ていく」 「待ちなさい、慶太」 「行こう、広斗さん」 俺の手を引っ張り、玄関に向かう。 「ちょっと待ってて」 と階段を駆け上がると、うさぎのぬいぐるみの入った小さな包みを持ち、携帯と財布をポケットにしまいながら慌てた様子で降りてきた。 「慶太!」 「行くよ!」 お母さんの制止する声。 慶太に連れられ、俺は慶太の住む豪邸を後にした。

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