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第17話

「良かったのか?これで」 服を着たまま、ベッドの上で俺たちはうちのマンションの部屋の天井見上げてる。 「構わないよ。一昨日さ、父さんに議員になれ、言われた。やなこった」 「俺んちいたら探し当てられるんじゃないのか」 「大学は行きたくない、議員にもなりたくない、用無しの俺を探すほど暇じゃないよ」 グルッと体を勢いよく反転させると、 「このまま一緒に暮らそ!」 明るく慶太が言った。 「夢はどうするんだ。明奈ちゃんやケイを見捨てるのか」 「そういうつもりはないよ、ただ...」 「ただ?」 「今はただ、一緒にいたい。て、駄目かな」 真っ直ぐだけど、今にも泣き出しそうな瞳を見つめ返した。 「今はなにも考えたくない。広斗さんの手料理が食べたい」 「腹が減ったのか?」 「そういう意味じゃないよ」 と、口元を緩ませた。 慶太が寝ている間、ほぼ手ぶらで飛び出した慶太のために、クローゼットから慶太に合いそうな服を選んだり、冷蔵庫と冷凍庫の中身を確認した。 しばらくの食材はありそうだ。 隣に並んで横になり、慶太の寝顔を間近で眺めた。 起きるなり、慶太は突拍子もない事を言い出した。 しばらくの貯金もあるけど、バイトする、と言い出したのだ。 「お前は高校行かなきゃだろう」 「制服、持って着てないよ」 「だったら買えばいい。買いに行くか?」 慶太は黙りこくった。 高校を中退させる訳にいかない。 昼ごはんを食べ終えると、慶太の高校の制服を購入し、貯金も一部、おろした。 「だったら、週3...いや、週1、2でいい、夜バイトする、それなら構わないでしょ?」 慶太の意志の強さに根負けし、親に頼る事が出来なくなった慶太は、週2のペースで近所のコンビニでアルバイトを始めた。 水曜日と土曜日、19時から0時までの勤務だ。 必然と週2日の夜は寂しいものになった。 しばらくは今までと変わりなかったが、半月後、俺たちは初めて大喧嘩をした。 高校を辞めて正社員で働く、と言い出したのだ。 なんでも、俺に金を出させるのが嫌だという変なプライド。 「言っておくけど、俺は女じゃない!慶太に養って貰うつもりもないよ!」 「働かなくていい!広斗には家にいて欲しい!食事作って、帰宅したらいつもいて、笑顔で出迎えて欲しい」 「頼むから学校は辞めないでくれ」 真っ向から俺たちは対立し、殆ど口もきかなくなった。 食事の際ですら。 そんな時に事件は起きた。 慶太が帰ってこない。 拗ねてネカフェにでもいるのだろう。 ところが1週間が経っても慶太は帰っては来ず、連絡も無かった。 さすがに心配になり、慶太のスマホに連絡を入れた。 電源が入っていない。 愛想つかして帰った...とも思えない。 俺は慶太がバイトしているコンビニに出向いた。 「ああ、慶太くんね。無断欠勤していてね。あんなに笑顔で頑張っていたのに、どうかしたの?」 コンビニの店長も不審がった。 やっぱり、さすがにカミングアウトしたようなものだ。 実家に帰ったとは思えない。 何処からどうやって慶太の行方を探したらいいのか...。

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