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第19話

慶太は車の中でひたすら無言だった。 帰宅すると、湯船にお湯を張った。 「慶太、ごめん」 俺は慶太を力いっぱい抱き締めた。 「どうして、広斗が謝るのさ...」 「お前を探し出せなかったこと、俺のせいで...辛い思いをさせたこと」 泣きたいのは慶太の筈なのに涙が溢れた。 「本当にごめん」 「謝るのは俺の方だよ」 慶太の話しによれば、バイトから帰宅中、喧嘩中だった為に帰宅の足を止め、公園で道草していたところを裕司に声を掛けられたらしい。 元気のない慶太に、ストレス解消に飲みでも行くか、と誘われ、飲みに行った後、慶太は酔っ払い。 気がついたら裸で横たわり、裕司に犯された後だった。 それから1週間、裕司を含め、裕司の友人2人もたまに含め、犯されていたとのことだった。 「軽々しく誘いに乗ってごめん、広斗」 「一生のトラウマになるな...」 俺は大人気なく、涙で鼻を啜る。 「大丈夫だよ、あんなの。事故としか思ってない。ただ、広斗を心配させて、傷つけたこと、凄く反省してる。ごめんなさい」 慶太にギュッと抱きすくめられた。 気がつけば、身長は俺より上回ってる。 少しずつ、慶太が大人になっているのがわかる。 「子供と大人の境界線、てなんだろうな」 「なに?」 「ううん、独り言」 訝しげな慶太の眼差しはまだ少し子供らしさと、少しの大人っぽさで、無限の可能性を秘めている。 「お前の母さんも心配してたよ」 「母さんが?」 「うん」 「行ったの?家」 「ああ。お前のことも明奈ちゃんのことも、お母さんは愛しているよ」 慶太がほんとに?という顔をした。 「近々、2人で会いに行こう?」 「うん...」 明日でいい、と言うのに、慶太はバイト先に辞める旨を報告していた。 電話越しに、そうなの?君はムードメーカーだったし、残念だね、という店長さんの優しく思いやりに満ちた声が聞こえる。 久しぶりに慶太とショッピングに出かけた。 なにやら買いたいものがあるらしい。 帰宅したら夕飯の支度。 チキンのガーリックソテー、カプレーゼ、コーンスープにライス。 これまた久しぶりに2人で食事、嬉しかった。 「やっぱり美味しい」 「たくさん作ったからお代わりしていいからな」 「また2人で色んなとこ行きたいよ」 「俺もそう思う」 テーブルを挟んで向かい合って座り、一緒に微笑んだ。

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