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第13話
ごくりと織部が唾液を飲み込む音が聞こえて、天海はゆるりと腰を動かした。そんな実のない言葉に煽られたりして、若いことは面白いけれど、やっぱりこんなことをするのは後腐れない人間の方が良かった。織部の熱を持った目を見ていると、違うことを考えてしまいそうで怖かった。それを振り払うためにこんなことをしているのに、それが全部無駄にされているみたいで嫌だった。
「あっ、ん」
「はっ、あま、みさん、そんな声、でんの」
「んん、っ、そこ、」
「ここ?」
織部のそれが前立腺を擦って、天海はもう余計なことを考えるのは止めようと思った。今から考えても無駄なことだ。事の顛末なんてどうでも良かった、興味がなかった。それよりも今目の前にある快楽の方が大事だった。天海は自分で腰を動かして、織部のそれが自分のいいところを触るようにすると、織部もそれに合わせるみたいに下から天海を突き上げた。
「んんっ、はぁっ、あっ、あ」
「ほん、と。よさそ、あまみ、さん」
「ん、いい、もっと」
天海が腰を揺すって、織部にそう強請ると、織部は口元を歪めて笑うと、天海の方に手を伸ばしてきた。そしてそれで天海の既に勃ち上がっている性器を握る。びりびりと背筋が痺れた。本当はそのままもっと欲しかったけれど、天海は奥歯を噛んで織部の手を払った。
「いい、そん、な、ことするな」
「・・・なんで、あまみさん、散々俺にしたじゃん。それに・・・―――」
織部が何か一瞬言い淀んだが、天海はその続きは聞く意味がないと思った。そして黙ったまま腰を動かすと、また織部の眉間に皺が寄る。
「いや、まだ、話して、ん・・・だろ・・・っ」
「うるさい、んっ」
「アンタ、ばっか、ずる・・・」
織部の声が途切れる。何を持ってそういう見解になるのか分からないと思いながら、天海はちらりと織部を見やった。そこでさっきと同じ、不服そうな顔をしている。
「そんなこと、しなくても」
「・・・え?」
「お前のだけでイケるから、もっと、動け」
「・・・―――」
行き場のなかった織部の手が急に動いて、天海の腰骨あたりを掴んで、ぐっと引き寄せられた。奥まで突かれて、天海は考えていたことが一瞬真っ白になった。この感覚だった、欲しいのはこの感覚だった。何も考えなくていいということだった。
「あ、あっ」
「あま、み、さん、ほんと、アンタ」
「ん、や、ふかっ・・・いっ」
「ずるくて、えろい」
やっとぼんやりしてきた頭と視界で織部のことを見やると、その口元が歪んでいるのが分かって、何となく天海は安心していた。
「っ、あま、み、さん、俺、もう」
「ん、いい、出せ、よ。俺も、あっ、ん、イキそ」
ははっとまた織部が口元だけで笑って、それから一層腰を引き寄せられて、一番深いところを突かれる。織部は奥歯を噛んで、その快楽の波が押し寄せてくるのを待っていた。ぐっと織部が息を止めたのが分かって、それから中に吐き出されたのが、ぼんやりしてくる感覚の中で自棄に鮮明に感じられた。ややあって、天海も織部の腹の上に白濁を撒き散らしていた。
「・・・あま、み、さん」
「んー・・・」
果てた後の倦怠感で、天海は今すぐ倒れ込みたいような気がしていたが、まだ体の中に織部をおさめたまま、跨ったまま動かなかった。一瞬真っ白になれそうな気がしたけれど、まだ物足りなかった。ぺろりと口の周りを舐めると、自分の汗の味がする。
「なか、出しちゃったけど、大丈夫?」
「女じゃないんだ、孕んだりしない」
「いや、分かってるけど・・・」
言いながら織部は天海の腕を引っ張って、引き寄せようとした。何となくそういう所作が織部はいちいち慣れている気がして、天海はそれに身を任せてしまいそうになる。後ろ孔からずるりと織部が出て行く気配がして、天海は慌てて元の体勢に戻った。
「・・・あまみ、さん?」
「出てくるから、なか」
「・・・アンタ、どこまでえろいんだよー、もう」
「お前、まだいけるだろ」
「え、は?」
「腹いっぱい出せって言っただろ、こんなんじゃ腹いっぱいにならない」
「え、え?」
目が点の織部の上で、天海は疲れた体をまたゆるりと動かした。夜は長いのだ。こんなところで終わるのは勿体無い。織部の焦った手が伸びてきて、それに手首を掴まれる。それでも天海は体を前後に緩く動かし続ける。天海の中で織部のそれがまた固くなってきたのが感覚だけで分かる。
「ちょ、待って、あまみ、さん」
「なんだ、っ、集中、しろ」
「いや、だって・・・マジか」
後半、何かを諦めたみたいに織部が呟いて、その眉間に皺を寄せる。
「ん、固く・・・って、きた」
「そん・・・、うごく、から、あまみ、さん」
「言ったろ、搾り取って、やるって」
「・・・ほんと、に、こえー・・・って」
腰を揺らしながら天海はぺろりと口の周りを舐めた。
「一滴残らず、出せよ」
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