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第6話【シルビーは未成年】
セリファは現在ラフェルの隣に座ったまま少し困ってしまっている。
「・・・・・・」
毎日決まった時間セリファはラフェルと魔力交差を行う決まりになっている。今日はラフェルの両親が突然押しかけて来た為、その予定がズレ彼等が帰った今セリファは呼ばれたのだが・・・。
いつもの様にラフェルの隣に腰掛けラフェルが自分の手を握るのを待っていたセリファは、いつまで経っても動かない主人に現在困惑中である。
(え?なんだろ?なんで動かない?俺が何かしなきゃいけないのか?)
隣の男の表情をチラリと見上げると、いつも微笑んでいるラフェルの顔は無表情だった。
正直感情が全く読めない。
セリファはこんな時、どうしたらいいのか全く分からなかった。
(俺、もしかして何か気に触る事でもしたのか?)
沈黙を続けるラフェルに段々と不安感が大きくなっていく。セリファは思い切ってラフェルの腕の裾を摘んでみた。
「・・・・・・あの」
「・・・ん?あ、すまない。少し考えに耽っていて。もしかして私が声を掛けるのを待ってくれていたのか?」
セリファの呼び掛けに反応しいつも通りの反応を返した主人にセリファは酷く安堵した。それが、表情にも現れていたらしい。ラフェルは少し驚いた顔でセリファを見た後、柔らかく微笑みセリファの頭を撫でた。
「・・・んっ」
その手の予想外の気持ち良さにセリファは目を閉じた。マクベスに撫でられた時よりも数倍気持ちいい。
「頭、撫でられるの嫌じゃない?」
「嫌じゃない」
よく考えたらセリファは弟妹が生まれてから頭を撫でられた記憶が余りない。子育てと仕事に追われる生活の中、両親が気にかけるのは幼い下の子供達であり、セリファは頼りになるお兄ちゃんだった。
マクベスにされた時も思ったが、こうやって誰かに頭を撫でられるのは恥ずかしいが悪くない。
まるで、自分に兄ができた様な不思議な気分になった。
「じゃあ、これからはこうやって撫でても構わないかな?」
「・・・ごしゅじ・・・ラフェルさまが、嫌じゃなければ・・・」
ラフェルの手は女性ほど細くはないが長くて綺麗である。指先も荒れてなくて撫でられた所が気持ち良い。
最初は頭の上にあった手がゆっくりとセリファの首や耳、頬に触れると、そのまま胸元まで撫で下ろされる。セリファは疑問に思いながらも抵抗せず身を任せた。
ふと、ラフェルのその手がピタリと動きを止めた。
「・・・・・・ラフェル様?」
「抱っこしたら怒るかな?」
「・・・・・・え?」
抱っこと言われセリファは一瞬混乱した。
今まで自分が弟妹を抱っこする事があっても自分を抱っこしたいと言った人などいない。
そもそもセリファは抱っこしたいと思うほど子供でもないし、どちらかと言えば町の女の子を祭りで抱き上げてあげる側だった。
つまり、自分と抱っこが結びつかなかった。
「魔力交差をするなら本来もっと身体を密着させなければならない。セリファは私と同じ男だから嫌じゃないかと思って手を握っていたんだ。もし、セリファが平気なら君を私の膝の上に乗せたいのだけれど?」
「え?でも俺、結構重い・・・わっ!」
「大丈夫だよ。ほら、私の膝を跨いで腰掛けて」
少し強引に引き寄せられセリファは恐る恐る言われた通りラフェルの膝に座り彼と向かい合った。
すると先程よりも明らかに多くの魔力が二人の間を行き来し始めた。触れる面積が多いと、それに応じて与えられる量も変わるらしい。
ラフェルは驚いているセリファの腰に手を回し安定させると、それ以上は触れて来なかった。
「1度に多く魔力交差出来れば1日に行う回数を減らす事が出来る。君の自由に出来る時間も増えるから徐々に慣らしていこう」
「それは、今すぐには出来ないのか?」
セリファの問いにラフェルは苦笑いした。
「まぁ出来ない事もないけど。子供の君には少しばかり、刺激が強すぎるからね。徐々に慣らしていこう」
そんなラフェルの態度にセリファはきっと自分はまだ未熟な子供だから能力が足りないのだと、この時は思っていた。
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