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第30話【セリファの疑問】

(・・・昨日も、すごかった・・・) 朝。セリファは身体を起こす事が出来ず、うつ伏せの状態のまま、ふかふかの枕に顔を埋めていた。 昨夜ラフェルは宣言通りセリファの中で射精しその後そのまま奥まで入ってきた。一度放たれた魔力の影響でセリファの中はすっかり蕩けており、放ってもなお衰えないラフェルの欲望が幾度もセリファを突き上げた。 その度、奥でラフェルを受け入れることに、まだ抵抗があるセリファの身体は、繰り返し与えられる快感に何度も悲鳴を上げることになった。 (アレが普通なのか?それとも魔力交差だからやっぱり少しやり方が違うのか?) 軋む体をそっと動かすと下半身がとても重い。 それでも満たされた感じがするのは、体内の魔力が満たされ安定しているからだろう。 セリファはジッと自分の手のひらを見つめた。 (ちゃんと、魔力交差出来てるよな?) ラフェルと身体を合わせたのは二度目だが、今までで一番、多くの魔力をラフェルと交換出来きたとセリファは感じている。 最初の頃はよく分からなかった魔力交差も何度か繰り返していくうち、互いの魔力の色や特徴を感じ取る事ができ、魔力操作のコツも分かってきた。 あと最近ルミィールが【シルビー】の事情に詳しい事が判明したのもあり、彼からも情報を得ることで更に以前よりも多く【シルビー】について知る機会が増えた。 (俺もラフェルも魔力の色に変化がない。やっぱり話が大袈裟に伝えられてるだけじゃ?) 実はルミィールから聞いた話によれば【シルビー】は"妖精の生まれ変わり"という説があるらしい。 確かに妖精は気まぐれに気に入った人間に目印をつけ、その相手に加護を与えるという言い伝えがこの国にはある。その印をつけられた者は魂に印を刻んだまま何度も生を繰り返し、妖精がこの世界に存在する限り、彼等はその加護を失う事がないという。 その妖精が生まれ変わったもの。 それが【シルビー】だとルミィールは教えてくれた。 セリファは話をルミィールから聞いた時、あまりに現実味が無さすぎて聞き流した。彼の話が真実ならセリファもルミィールも妖精の生まれ変わりという事になる。 全く身に覚えもなければ実感もない。 セリファは勿論、自分はただの人間だと思っている。 しかしそれを否定しきれないのは、もしかしたらという思いも、少なからずあるからだ。 彼は最近色々と気がかりな事があった。 セリファが王都に来たばかりの頃、大神官に聞かされた【シルビー】の特性について思い出したのだ。 「いいですか?一部の【シルビー】は真実の番に会い、その相手と正しく繋がると本来の能力を目覚めさせます。しかし、それを成功させた【シルビー】は歴史上私達が知る限り、指で数える程しかおりません。私達は、それを成し得る可能性がある【シルビー】をずっと探しているのです」 その時のセリファは大神官の説明を理解できていなかった。そして、その大神官も説明はしてもセリファが聞き返さなければ敢えて詳しく語る事はなかった。 そもそも、説明されてもセリファには【シルビー】がなんなのかよく分からない状態だったのだ。 セリファの魔力を必要としてる人がいる。 その程度の認識だった。 「本来ならば、まだ貴方をラフェル・リンドールに渡してはいけないのですが、貴方の希望と私達の事情もあり、今回は特別に貴方を彼の【シルビー】として紹介する事になりました。これは極めて異例であり特別な措置であるということをお忘れなきように」 案に"勝手に逃げ出すことは許さない"、そう釘を刺されているのだと、その時のセリファは思っていた。 しかし、それは言葉通りの意味なのかもしれなかった。 ここに来たばかりのセリファは窮地に追い込まれ家族を守る事に必死なだけの、何も知らない平民の青年だった。 しかし今は違う。 彼はルミィールに付き添う事で【シルビー】という存在を客観視出来る様になった。 そして、やっと言葉で説明されても理解出来なかった部分を理解し始めている。何故なら、明らかにあの二人は魔力交差が上手くいっていないのがわかったから。 ルミィールが嫌がっているからだ。 (【シルビー】が望まない魔力交差に相手を癒す力はない。運命の相手だから多少の効果は出ても、本当の意味で相手を癒すことは出来ないんだよな。でも・・・) セリファはラフェルとの魔力交差に失敗した事はないと思う。拒絶反応もなければセリファがラフェルに不快感を抱いた事も、最中に魔力が途切れた事もない。 そしてそれは、恐らく全てラフェルのお陰だと思う。 彼は出会った頃から徹底してセリファの意思を尊重してくれた。やり過ぎではないかと思うほどに、ラフェルはセリファに甘かった。 セリファはそれは、自分が子供だからだと思い込んでいたが、そうでなくてもきっとラフェルは変わらなかっただろう。 あまりの過保護ぶりに、思わず卑屈な考えを起こしてしまう程、セリファはラフェルに甘やかされていた。 セリファはベッドに腰掛けながらラフェルが横になっていた場所を振り返った。 (ラフェルは俺を子供扱いしなくなった) 成人を迎える前、ラフェルは時間が出来ればセリファの様子を見に来てくれた。その度にさりげなく頭を撫でてくれたりもした。 少し前の出来事なのに、今ではなんだか懐かしく感じる。勿論、今でもラフェルはセリファにとても優しい。 けれど・・・。 (ラフェルが前みたいに、俺に触れなくなったから、余計な事考えてるのか俺?) ラフェルはセリファの希望通り、セリファを子供扱いしなくなった。 節度を持って接し、必要以上に触れたりしない。 当然、キスもしなくなった。 その必要がなくなったからだ。 (俺が子供扱いされたくないって望んだからだ。ラフェル様だって暇じゃない。なのに・・・なんで俺もやもやしてるんだろ?) 冷たいシーツに触れながらセリファはルミィールとの会話を更に思い出す。 『【シルビー】は真実運命の相手と繋がると相手と同じ色の魔力に変化するらしいぞ?そうなったらもう魔力交差しなくても平気になるらしい。それが【シルビー】にしか出来ないことらしい』 『そうなったら俺達この役目から解放されるってことか?』 『それは分からない。でも、そうなったらセリファはどうするんだ?』 果たして、その話をラフェルは知っているのだろうか? (・・・やめよう。もしラフェルが知らないなら俺が気にしても仕方ないし・・・どちらにしても今の俺じゃ多分無理だろうし) "子供扱いされなくなって嬉しいのに、寂しい" 相反する自分の感情に戸惑いながらも、どうする事も出来ないセリファは結局、そのまま一人ベッドにダイブしたのだった。

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