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第42話【唯一】エゼキエルとルミィール*

「他の者の【シルビー】に手を出すなど前代未聞でございます。貴方をお許しになったラフェル様の心の広さを貴方は後々知る事になるでしょう」 そう言葉を吐いたのはエゼキエルが軽い気持ちでセリファと魔力交差を行おうと試み、激怒したラフェルに肩を貫かれた後に彼の屋敷にやって来た大神官だった。 彼等は【シルビー】が害される事を由としない。 詳しい事はエゼキエルにも分からない。 彼等は昔から【シルビー】を守る為に存在した。 「めーずらしく、こんな汚ねぇ場所までやって来たと思えば、小言かよ。だったらさっさと俺の【シルビー】を見つけて欲しいもんだな」 年々魔力制御が効かなくなり体が思うように動かないエゼキエルは焦っていた。彼も【シルビー】を探すよう依頼していたが、大神官は結局エゼキエルが出会うまでルミィールの存在を明らかにしなかった。 「【シルビー】を粗雑に扱う者に我々が協力するとでも?彼等は愛されて初めて本来の能力を発揮出来ます。例え相手が見つかったとしても、今の貴方に【シルビー】を活かせるとは思えませんが?」 大神官の本気の怒りがエゼキエルにも伝わってくる。 彼等は滅多に感情を露にすることはない。 それだけの事を自分はしたのだとエゼキエルは改めて認識した。 「・・・別に傷付けるつもりだったわけじゃねぇが・・・俺が軽率だったっつーことは素直に認めとく」 「・・・覚えておいて下さい。【シルビー】は、ただ魔力交差の相性が良いだけのパートナーではありません。もしこの先、奇跡的に【シルビー】に出会う事が出来たなら貴方はその時、私の言葉の意味が理解できるでしょう」 大神官の言葉は、予言に近かった。 「運命の【シルビー】と出会えたなら、ただその人だけを愛しなさい。そして【シルビー】から唯一愛される者になるのです。それが貴方達を救うことに繋がります」 「はぁ?まぁ【シルビー】はそういうもんなんだろうがよ?」 エゼキエルは今、大神官のその言葉を思い出していた。自分とルミィールの間には彼が言ったような愛情めいたものがまるでない。エゼキエルはそれを感じる度に何故か気分が悪くなった。 「エゼ、キエル・・・もっ・・・と、ゆっくりぃ」 今、目の前には実在するとは思わなかったエゼキエルの【シルビー】がいる。 出会った当初はエゼキエルを警戒し近づくのを嫌がられた。周囲の協力でなんとか魔力交差の許可はもらえたが、まともに会話が出来るようになったのは最近になってからだ。 だがエゼキエルが、ルミィールの頭を撫でた日からルミィールの態度が少しずつ変化したように思う。 自分がルミィールに怖がられていると気付いたのもその辺りからだった。 そもそも冷静に思い返せば身体の小さなルミィールが極めて濃く魔人の血を引く大柄なエゼキエルに捕まえられたら怖がるのは当然である。ルミィール程小柄ではない一般兵士にもエゼキエルは怖がられているのだ。エゼキエルがやっとその思考に辿り着いたのは、何度かルミィールと魔力交差し、体と精神のバランスが取れ始めた頃だった。 遅すぎる。 正直ルミィールに好かれるにはどうすればいいのか、全く分からなかった。だからエゼキエルは柄にもなく、ルミィールに従う事にした。他人に指図されるのが大嫌いなエゼキエルが、である。 他人に執着した事がないエゼキエルが、そうまでして自分を見て欲しいと願った相手が【シルビー】(ルミィール)だった。 「随分と苦しそうだな?経験済みだったんじゃねぇのか?」 「バッ・・カ!して、ねぇし!アン、タ・・・無駄に、デカいんだ、よ!!ーーーっひ!?ぁん!!」 先程までモヤモヤと纏わりついていた胸焼けの様な不快感がルミィールの否定でスッと取り除かれエゼキエルは口の端を上げた。 指で散々解しながら発見したルミィールの弱い箇所まで腰を引き、挿れた自分の欲の猛りの先端をその場所に固定するとルミィールが痛くないようユルユルと腰を揺らして刺激する。 「っぁ!っぁーー・・っそこぉ・・・ぁんっ!まり、しな・・・ぃでぇ〜〜〜!」 動きが激しくならないようエゼキエルはピッタリとルミィールに覆い被さると彼の耳元に唇を押し当て笑いながら熱い吐息をかけた。その度にルミィールの身体がビクビクと反応を返してくる。 「いい反応だな。ここが気持ち良いんだろ?お前のピンク色の乳首もビンビンになって触って欲しそうぜ?触ってやろうか?」 涙目になりながら腰を揺らすルミィールが物欲しそうにエゼキエルを見ている。それでもルミィールはまだそこまでをエゼキエルに求めてこない。 身体はこんなにも分かりやすく反応しているというのに。 「それに前を扱きながら、もっと奥を突いて中に出したら、絶対に気持ち良いいぞ?どっちがいい?このままお前がイクまで浅く擦るのと、奥まで挿れて中に出されるの・・・お前の我儘なら、特別に聞いてやるぞ?」 緩やかに与えられる快感に喘ぎながらルミィールの開いたままの口が僅かに動いた。 エゼキエルは汗に濡れたルミィールの額や頭に唇を落とし彼の口元に耳を寄せる。 ルミィールの望みを聞きたい。 そこから紡がれる言葉が、例えいつもの悪態であってもエゼキエルは構わない。 「・・・・・・エゼ、キエル・・・すき」 濡れた瞳に見据えられエゼキエルの心臓の鼓動が跳ねた気がした。 「どっちも、すき。・・・両方して、エゼキエル」 ルミィールの紛らわしいおねだりは、エゼキエルを少しだけ落胆させた。そしてその後二人は、関係の変化がないまま度々身体を重ねるようになった。

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