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第47話【変化した関係】
「あの人、ほんと紛らわしい・・・」
向かいに座るセリファの苦言にラフェルも心の中で激しく同意した。
大神官の問題発言の後、彼の発言の真意を聞き直した二人は神殿を出て少し遅い昼食をとることにした。
「まぁ私とセリファで生み出すという意味ならば間違いではないのかもしれないが」
「・・・っ!ち、がう・・・全然ちがう・・・」
揶揄われたと思ったのかセリファが珍しくラフェルを睨んでくる。しかし、その頬がほんのり赤くなっているので全然怖くない。寧ろ可愛いとラフェルは思った。
「・・・その話は後々考えるとして私達の体に問題がないと確認出来たんだ、とりあえず今はそれでいい」
それよりも、と運ばれて来た料理を切り分けながらラフェルはこの先の事を考える。ラフェルは世界の問題よりも、まず身近な自分達の関係についてハッキリさせておかなければならないのだ。
「セリファ、ほら口を開けて」
「え?あっ?」
自然な動作でフォークに刺さったお肉を口元に差し出されたセリファは考える間もなく反射的にラフェルのお肉に齧り付いた。普段のセリファならこんな簡単な手に引っかかったりしない。それだけで動揺しているのがよく分かる。
「美味しい?」
口をモグモグ動かしながらセリファは頷いた。
しかし動揺を隠しきれていない。
きっとどんな態度で接したらいいのか分からないのだろう。
ラフェルの体が正常になった時点でセリファが側にいなければならない理由はなくなった。ラフェルの魔力を安定させる目的で連れて来られたセリファからすれば面倒事から解放される絶好の機会なのだが、彼はもうラフェルに特別な感情を抱いてしまっているので逆に困っている。
「・・・恥ずかしいから、自分で食べる」
「そんな事言わないで欲しいな。好きな人にはなんでもしてあげたくなる性分なんだ」
「・・・・・・俺も」
ただそれが杞憂である事も明らかだった。
ラフェルは改めてお互いの気持ちを再確認した。
「参ったな・・・セリファの気持ちが分かるのは嬉しいが、我慢するのが難しくなる」
【シルビー】と繋がり、印を共有する二人はある程度お互いの感情も感じ取れてしまうらしい。
「・・・ラフェルは、我慢しなくていいと思う」
セリファは自分の料理を口に運びながらモゴモゴと独り言を呟いたつもりだったが、その声はしっかりラフェルに伝わっていた。
「・・・っん、はぁっ・・・っ・・・ラフェルっ」
震えるセリファの怒張に優しく唇を這わせながら何度も穿ってきたその場所を指で解していく。そうしながら今までとは違う感覚をラフェルは味わっていた。
(魔力交差がない分セリファの匂いや体温をハッキリと感じられる・・・魔力交差で感度は上がる分、五感が鈍っていたのか・・・)
お互いの身体が変化して神殿に確認をとるまで二人は魔力交差を行わなかった。今まで意識しなくとも肌が触れれば魔力交差出来ていた二人の魔力は、ラフェルが安定した事によって触れても勝手に移動しなくなったのだ。
二人はもう無理に身体を重ねる必要はない。
以後身体を重ねるのは魔力交差の為ではないという事だ。
「大丈夫かセリファ、無理はしなくていいんだぞ?」
今までは触れるだけで敏感だったセリファの身体も今日はどこか固い。けれど反応が悪いわけではなかった。
「・・・ううん・・・嫌じゃない。ラフェルは?嫌じゃないか?」
ギュン!
息を乱しながら潤んだ瞳で尋ねられたラフェルはそれだけで色々大変な事になった。胸も下半身も落ち着かない。
「私がセリファを嫌がるなんて万が一にも有り得ない。もしそうなら最初から君に手を出したりしなかった」
「・・・よかった。必要がなくなったら、もうしないんじゃないかって思ってたから」
(それはこちらのセリフなんだが?)
助けた恩を返す為に身体を許してくれたのだと思っていたラフェルの方が拒絶される不安を抱えていたのだが、それは口にはしなかった。その代わり少し揶揄いを込めて別の言葉を口にする。
「・・・じゃあ今度こそ私が望む答えをもらえるか?」
まだ少し幼さを残すセリファの瞳が大きく見開かれ僅かに瞳が揺れる。神殿から屋敷に帰って来たセリファはラフェルの誘いを断らなかった。
その意味を理解した上で。
「もしセリファが【シルビー】でなくなったとしても君を手放したくない。唯一の伴侶として私の側にいて欲しい」
頑なに役目を果たそうとするセリファの姿にラフェルも一度は彼の心を手に入れることを諦めた。
「ラフェル」
しかし、こうなって初めてラフェルは少し前の自分が急ぎ過ぎていただけだったと思えた。
「俺、ラフェルのこと好きになった」
思えば目の前の青年は出会って今まで自らラフェルの側を離れたことはなかった。それなのに何故あんなにも不安だったのか今更ながら不思議に思う。
「俺【シルビー】じゃなかったら何も持たない、ただの平民の男だけどいい?」
ラフェルはぼやける視界の先を見ながら、きっと自分はセリファには一生敵わないと思った。
「っセリファ・・・君を、愛してる」
出会ってからずっと、良くも悪くもセリファはラフェルに誠実であり続けてくれたのだ。
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