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第63話【お説教?】

「セリファはしばらくルミィール達と距離を置いた方がいいと思う」 王宮の一室ラフェル・リンドールの執務室でセリファは現在自分の恋人と向かい合わせに座っていた。 いつもは蕩けるような眼差しを向ける彼の視線は今は少し鋭く目尻は吊り上げられている。 「・・・うん。ラフェル、怒ってる?」 「怒りよりも安堵の方が上回っている。だが、二度と同じ事はしないで欲しい。そうでなければ私の心臓が幾つあっても足りなそうだから」 ルミィールと共にエゼキエルの下へ行ったと報告を受けたラフェルは持っていた全ての書類を投げ捨て王宮の地下室に駆けつけた。セリファの下へ向かっている間ラフェルは生きた心地がしなかったのだろう。セリファにもラフェルの乱れた感情の波が魔力を通して伝わってくる。 数時間前、難なくエゼキエルの魔力を抑え彼の胸に収まったルミィールを確認したセリファは慌てて向かって来るラフェルの下へ急いだ。 ラフェルはセリファを見つけ強く抱きしめると初めてセリファに怒鳴り声を上げた。 「何故直ぐに私を呼ばない!一つ間違えば死んでいたかもしれないんだぞ!!」 その言葉を聞いてセリファは自分が思っていた以上に危険な橋を渡っていた事に気付いたのである。 「・・・それでぇ?ルミィール達の我儘に付き合ってあげたんだって?エゼキエルの魔力暴走の恐ろしさを知る君がそんな迂闊な行動に出るなんてびっくりしたよ」 一方場面は変わり、王宮敷地の一番端リューイ・ハイゼンバードの研究執務室。 「・・・危険なので、なんとか止めようと試みたのですがエゼキエル様の【シルビー】には触れてはいけないと言われ止める手段がなく・・・彼等だけで向かわせるには余りに危険だったので、室長にもご報告を。短慮だったと反省しております」 そこには自分の状況を正しく理解出来たセリファとは違い全くわかっていないアルティニアがいた。 彼は先程から頬杖をつき見上げているリューイと向き合い姿勢を正した状態で立っている。その姿は側から見ればまるで上官とその部下の構図である。 「短慮だった、ねぇ?因みに君は、どの辺りが駄目だったか私に説明出来るのかな?」 「それは・・・急を用していたので詳細な情報を室長に伝えられず、貴方の手を煩わせてしまいましたし・・・」 何がいけなかったかと問われれば全てなのだがアルティニアはリューイの真意が汲み取れず、つい自分が一番気にしていた事を口にした。それを聞いたリューイの笑みが深くなる。 「成る程。アルティニアは私があの場に駆けつけた事を気に病んでいるのか。じゃあそれ以外は些末な事だと考えていたって事だね?」 表情は笑っているのに、どこが圧のあるリューイの声色にアルティニアは思わず緊張して身体を強張らせた。 リューイは怠そうに立ち上がると同じ背丈のアルティニアと目を合わせる。 「どんなに君が受け入れ難くとも、君は私の【シルビー】だ」 その一言に、部屋に入って来てから一度も姿勢を崩さなかったアルティニアが怯んだ。彼の瞳は困惑気味に揺れている。 遠回しに言っても伝わらないと学んだリューイはやり方を変える事にした。徐にアルティニアの頭に手を回すと、そのまま頭を自分の肩へ引き寄せる。 「もし怒り狂ったエゼキエルが君に傷を負わせたとしよう。その時、私はどうすると思う?」 「・・・・・・治療費用を、要求するかと」 リューイの肩口でガチガチに緊張しているアルティニアは問いの意味も分からず、この状態に混乱していた。 なのでやはり深く考えず、思ったことを口にした。 すると今度は腰に腕を回され頭だけではなく身体ごとリューイに抱き寄せられる。 アルティニアは慌てて顔をあげ、閉口した。 「必ず報復する。やられた以上に残酷なやり方でね・・・君はルミィール同様、自が番のいる【シルビー】である自覚を持つべきだ」 目の前にいたのは表情を消し去った真顔のリューイ・ハイゼンバード。アルティニアは自分が彼の笑っている姿しか知らなかった事に気が付いた。 そして到底信じられない彼の言葉にアルティニアはセリファの『ルミィールに不用意に触れてはならない』という言葉の意味をやっと理解した。 リューイの【シルビー】として引き取られてから、アルティニアはハイゼンバードに迎え入れられ現在養父となったメロウが治める領地を管理する仕事を学んでいる。生活をしているのはリューイの屋敷だが、リューイは仕事で屋敷にいない事が多く、魔力交差の必要もない二人は今まで碌に運命の番としての接触がなかった。セリファとラフェルのやり取りを覗いてしまったアルティニアが拍子抜けしてしまうほど二人の間には何も起こらなかった。 だからアルティニアは油断していた。 どこかで自分は例外であると思い込んでいたのだ。 「これから空いた時間に魔力交差をしようと思う。そのつもりで私の下へ来るように」 何故必要のない魔力交差をしなければならないのか。 その答えなら、今のアルティニアにも導き出す事が出来た。 「君は、私の【シルビー】なのだから」 これが、アルティニアへの罰なのだと。

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