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第35話
「リクのフリしたのは俺、カイだよ」
瞬のキリッとした瞳をカイが見据えた。
「いきなり抱きつかれてキスされて、お前がリクが好きだってこと忘れてムラムラしちゃってさ」
「悪い...意味がわからない」
瞬は同じ顔、同じ風格の3人を目の前にして、動揺している。
「リクに告ったんだろ?お前が告ったのは俺。リクの弟のカイ。ソラは偶然、見てただけ。リクはあの日、学校にはいなかった。俺らが帰ったと思って、先に帰ってたからさ」
「...俺が告ったのは...リクじゃなかった...?」
「そ。よく見てみ。リクは目のそばにホクロがある。俺は口元。さすがに覚えてないだろうけど」
「カイ...」
勇敢なカイの姿を見て、リクが呟いた。
「ちなみにお前を振ったのはリク本人。セックスしたのは俺なんだけどね。ややこしくてごめんね」
瞬が呆然となっているリクを見た。
「ごめん...瞬」
「リクにとって、お前、大切な親友なんだってさ。俺を怒りもせずに無理して笑ってやんの」
困ったようにカイが笑う。
「リクと変わらず仲良くしてやってくれない?リクはお前を友人として大好きなんだってさ」
瞬をリクが見つめた。
長い沈黙の後。
「...俺も3つ子とはいえ、弟と間違えたとはな、リク、悪いことしたな、痛かっただろ?ほっぺ」
しばらく呆然としたあと、リクはぶんぶんと首を横に振った。
「お、俺...勝手かもだけど、瞬と友達でいたい」
リクが泣きそうな顔で言うと、瞬も、うん、と頷き、リクに右手を差し出した。
「間違えた俺もまだまだだな。それに、お前を無視し続けるの、正直、辛い」
瞬はリクの目を見つめ、続けた。
「俺と友達でいてくれる?」
まさかの言葉にリクは泣きそうになりながら、右手を握り返し、握手した。
「当たり前だろ」
カイとソラに見守られながら、リクと瞬は互いに自然と笑顔になった。
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