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第52話

バスタオルを羽織り、ぼうっと、カイは水着で行き交う人達を眺めています。 不意に、うーん、と恭一が唸り声をあげました。 「熱い...」 長旅の運転疲れでつい眠っていた恭一でしたが、暑さと喉の乾きで目を覚ましました。 「あれ?カイ、いたの」 「うん。日焼け止め塗るの忘れてたから肌が痛いし休んでる」 「そっか。なにか飲み物、買って来る」 恭一はサンダルを履くとビニールシートを離れ、海の家に向かいました。 リクとソラも入れ替わりのように、全身、ずぶ濡れの笑顔で戻ってきました。 「カイ、戻ってたんだ。タオルちょうだい」 リクに2枚、近くのバスタオルを渡すと、カイの隣に、リク、リクの隣にソラが並んで座ります。 「恭一さんは?」 ソラが尋ねると、 「飲みもん買いにいった」 何処か、カイの口調がつっけんどんです。 「なんかあった?カイ」 リクが尋ねると、別に、と正面を向いたまま真顔です。 しばらくするとビニール袋を持った恭一が戻ってきました。 リクやカイ、ソラのぶんの飲み物も購入したので、それぞれにペットボトルを手渡します。 「カイ、やっぱ、肌、真っ赤っかじゃん。慌てなくても海は逃げない、てのに」 コーラを飲み、カイを見ながらリクが言います。 「痛む?」 ソラに聞かれ、カイは頷くだけでした。

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