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第62話
「...お前、好きなやつ、いんの」
リクに不意打ちで尋ねられ、カイが口ごもった。
ふと、海で出会った大輝が思い浮かんだ。
よそ見してぶつかった自分が悪いのに、砂浜にぶちまけたかき氷、イカ焼きを買ってきてくれ、カイもお返しにかき氷を買い、しばらく2人で話しをした。
日焼け止めを忘れ、真っ赤になった肌を労り、優しい指で軟骨を塗ってくれた。
高校はわかったものの、連絡先すら知らない。
「...わからない」
リクはもしかしたら、カイが好きなのは、瞬なんじゃないかと思った。
「...そいつ、イケメン」
リクに聞かれ、カイが記憶を辿る。
確かに、穏やかそうな笑顔をした、少し長めの黒髪をしたイケメンだった。
「うん」
「背は高い?」
うーん、と思い出し、確かに見上げた事を思い出し、
「うん」
そうカイが答えると、リクはやっぱり、と思った。
「...そんなに好き?あいつのこと」
「あいつ、て...リク、知ってんの...?」
「え?」
「え?」
寝転ぶカイと座っているリクの瞳が交差した。
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