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第69話
緊張の面持ちでリュックを背中に、リクは瞬の一軒家のドアの前に立っている。
キスをした夏祭りからほんの3日後。
(家で一緒に勉強しようぜ。)
と、瞬からLINEがきた。
LINEを送った瞬も実は断られやしないかとヒヤヒヤとドキドキものだった。
リクがチャイムを鳴らすと待っていたかのようにドアが開き、笑顔の瞬に出迎えられ、リクも釣られて、笑顔になった。
テーブル近くにリュックを置き、ふと窓際を見ると顔が熱くなる。
先日、瞬とキスをした場所だ。
2人でテーブルに宿題を並べ、しばらく無言で勉強に取り組んだ。
気まずい空気を割ったのはリクからだ。
カイが気になっている、と言っていた大輝の高校について話しを切り出した。
「あー...確かにあそことはよく練習試合もするから、知り合いもいるっちゃいるよ」
やっぱり、とリクは笑顔になった。
大輝の特徴や夏休み初旬に両親と妹とで海に行き、体当たりした子に優しくしてくれた子がいて、知り合いが気になってるらしい、良かったら協力して欲しい、とリクは瞬に話した。
瞬は聞き終わるなり、怪訝な顔でリクを見た。
「...本当に知り合いだよな?」
「え?」
「...実は知り合い、てのは口実で、実は自分の事でした、てオチじゃないよな?」
「ま、まさか」
瞬に詰め寄られ、リクは動揺した。
「お、俺じゃない、本当に知り合い...」
「...信じていいんだな?」
間近に迫ってくる瞬の顔。
「そ、そりゃ、俺が気になってるのはお、お前だもん」
瞬のキリッとした切れ長の瞳を見上げた。
「...まぢで?」
耳まで真っ赤になったリクが頷くと瞬はキスをするなり、近くのベッドにリクを押し倒した。
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