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第78話

大輝はカイを見つけるなり、瞬時、笑顔を見せた。 「カイ」 「大輝、どうしたの?」 大輝の笑顔が消えた。 「...返事、聞かせてくれる?」 「返事?」 なんの事かとカイは大輝を見上げた。 「...入ってなかった?美和が箱の中にカード、入れた、て言ってたけど...」 「カード...美和...」 「...妹がさ、恥ずかしいから、俺に渡してきて欲しい、て頼んだんだ。カイが好きな物も色々、聞いて欲しい、て頼まれた」 カイはようやく意味がわかり、愕然とした。 LINEで自分の好きな物や好きな事を尋ねていたのは自分が気になる妹の為、妹の作ったシュークリームを大輝が作ってくれた、と勘違いしていたのだ。 「...カード入ってはなかった、入れ忘れたのか知らないけど、俺は大輝の妹に興味はないよ」 「そっか」 大輝が微笑んだ。 「俺には気になる人がいる、いや、いた、かな、わからなくなってきた。大輝は?」 大輝がカイを見下ろし、真顔になった。 「...俺にはいるよ、好きな人」 カイは初めて、恋愛で、ジェラシー、悔しさ、悲しさを痛感した。 帰宅するなり、ベッドに倒れ込んだ。 「どうしたの?大丈夫?カイ」 ソラの何も知るわけはない柔らかい声に、思わず、 「うるさい!」 つい、カイは怒鳴ってしまい、シン、となり、ソラに八つ当たりしている自分に気づき、カイはソラを見ないまま、謝った。 「ごめん、ソラ」 「う、ううん、ちょっとびっくりしただけ」 ソラは動揺した。

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