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第3話 側室は挑発する
次の日、早朝から門番のところへ行き、ベイルを引き取ってきた。だが、ベイルは戦馬ではないため、戦場では別の馬に乗ることになった。だが、この子は町の巡回などで活躍の場を与えられてホッとした。
「リオ! そいつを馬丁に預けたらおまえの馬を探すぞ。相性が合うやつがいれば良いな」
よく世話をしてくれるように頼み、奥の馬房に進むと、数頭の重種の馬がいた。鎧を着た騎士を乗せるには、パワーのある馬が必要だ。
「カッツ、おはよう!! こいつらの機嫌はどうだ?」
「落ち着いてきた子もいるが、まだ難しいのもいるなぁ」
その馬房を担当する男が、一頭の馬にブラッシングをしながら答えた。
「リオ、こいつらは、先日の戦闘で主人を亡くしたんだ。だから、荒れているやつもいるから気をつけろ」
「了解」
一頭一頭見て回る。そして、一頭の黒毛の馬に目が止まった。
「こいつは?」
「あんた、そいつはダメだ。他人に触れられるのを嫌がる。もう戦場は引退かもしれないな」
「なぜだ? なかなか良さそうな馬だが」
「主人の血を浴びちまってな……相手は、ゴーデスだって」
「……」
(自分の主人が目の前で死んだのはつらかっただろうな)
「名前は?」
「へ?」
「こいつの名前だ」
「えっと、マリアだ。それでも雌だぜ」
俺はマリアの前に立って目を見つめると、彼女は不機嫌そうに鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
「マリア。俺はリオだ。俺はおまえと戦場に行きたい」
鼻面に手を伸ばすと、ブルルッ!! ヒヒィィ〜ン!! といななき前足で馬房を蹴っ飛ばした。
「おい、よせって……」
「聞いてくれ。俺がおまえの主人の仇を打ってやる。そいつを殺しにきた。おまえの力が必要だ。頼む」
「何言ってんだ? 相手は馬だぞ?」
ビリー副隊長が危険だと後ろに引っ張るが、俺は引かない。
馬は賢い。それに、気持ちは通じるはずだ。
もう一度手を伸ばすと、ビクッとしつつも逃げなかった。すりすりと鼻面を撫でる。
「マリア。俺とおまえでゴーデスを殺し、おまえの主人に報告をしよう」
ブルルッ……マリアは返事をするように鼻を鳴らしてくれた。
「よしよし……良い子だ」
「なんだそりゃ……」
「俺は馬と生きてきたからな。なぁ、マリア?」
こうして、戦場で命を預ける相棒も手に入った。馬場で軽く駆け足をしたが、想像通り最高の相性だった。
「ビリー副隊長!! ここでしたか!!」
一人の隊員が息せき切って馬房に駆け込んできた。
「なんだ?」
「あいつらが!! また関を突破して殺し回ってます!!」
「ワデムのやつら!! リオ! 後でな!!」
「待ってくれ、俺もいく!」
ビリー副隊長の腕を掴み睨み合う。
「おまえは入ったばかりだろうが!!」
「邪魔はしない! 敵をこの目で見ておきたい!」
「チッ! 大人しくしてろよ」
走り出すビリー副隊長についていけば、ブロンコ隊長も許可してくれて思ったより反発も受けずに参戦がかなった。
相当疲弊しているんだな。見ず知らずの新人でも良いほどに……
胸当てはどうにも小さいが、ないよりはマシだ。盾も手に入った。だが、小手も何もかも小さくて、諦めて放り投げた。武器は自分の武器を装備する。
「リオ、無理をするなよ? 今回は関の向こうに押し戻せば良い」
「はい、ブロンコ隊長」
新しい相棒マリアとともに駆け出す。
「町と関の間は城門しかない! 突破されたら町民に被害が出る! いくぞ!!」
関に着いた時には、警備兵が何人も倒れ、派手な装飾で鎧を飾った男たちが彼らを蹴飛ばしていた。
なんてゲスなまねを……
俺たちに気がついたワデム兵は、ニヤニヤと笑いながらこちらを見ていた。
「ビリー副隊長の隊は生存者の救出を! 残りはやつらを押し戻すぞ! かかれっ!」
うぉぉぉ! と雄叫びをあげながら人馬一体となって攻めかかると、隠れていた弓兵の弓矢が飛び交う。隊員たちは盾で身を守るが、数人に被害が出てしまう。
敵兵に迫れば矢は止まる。全力で突っ込み、手近な敵をぶった斬る。
「リオ! なんでこっちに来た! ビリー副隊長につけと言っただろう!」
隊長に怒鳴られたが、最初からこちらに来るつもりだった。
「ほうっ!! ふんっ!!」
真っすぐに走らせながら右に体を乗り出し、手近にいた敵兵の腕を切りつけると、血飛沫が飛び散る。
「畜生!! その金髪をぶち殺せ!!」
反撃に転じた兵の剣を馬上からたたき落とし、反転して首を落とす。
だが、一度に三人が俺をめがけて向かってきたため、下馬をしてマリアを本陣の方に向かせ尻をたたいて逃す。さすがにまだそこまでは息があっていないから、マリアを殺されるかもしれないからだ。
「へへっ!! 観念しろっ!」
「それはどうかな?」
体の奥底から血が沸き立つような高揚感!! これだ!! 俺の、生き方——!
剣先がビュッと空気を切り裂いて、スレスレでかわす。前後と左にいる敵は、いつでも俺を殺せるとニヤついている。
前方の敵に向かいダッシュ——すると見せかけて、後ろに回転して飛びながら剣を後方の敵にたたき込む。
ずぐっ! と剣が体に食い込み、あばら骨にごつりと当たって剣を引いた。剣を振り上げていた敵は丸まって崩れ落ちる。
次、前のやつ!
「このやろう!!」
大声を上げながら繰り出してきた突きを切っ先でいなし、その剣に沿うように俺も突き返す。だが、剣先が届く直前にそいつはバックステップでかわした。
「テメェ、フィディーリアの騎士じゃねぇな?」
「俺はギディオン王に忠誠を誓う戦士だ」
「おい、こいつは俺の獲物だ! 手ぇ出すなよ!!」
部下らしい男にそいつが叫ぶと、俺たちの周囲から人が引き、ぐるりと囲われた。
「一騎打ちのお誘いか?」
「おお。 テメェをぶち殺してやる。いや……良い体をしてやがるな俺が勝ったら、俺たちの慰み者にしてやる。死んだほうがマシだと泣き叫べ」
「ふん! 冗談じゃない。俺を殺しておかないと面倒になるぞ?」
「ほざけ!! おらぁぁ〜〜!!」
そいつは怒りに任せて無造作に振りかぶる。——脇がガラ空きだ。罠の可能性も考えつつ、鎧の隙間目指して剣を突き立てた。
ガッ!!
「うぉっ?!」
「チッ!!」
鎧の隙間を狙ったが、わずかにズレて剣先は鉄の板に阻まれた。
「この野郎! 手足をもいで便所にしてやる!!」
「おまえなんざ、お断りだっ!」
ギンッ!! ガッ!! キーン!!
斬撃の音が幾度も響く。お互いに息が乱れ、汗だくだ。だが、けして引かねぇ!!
こいつに勝てないようじゃ、ゴーデスには勝てん!!
大振りになり始めたそいつの足元に転がり、装甲の薄い膝裏の腱を狙いスパッと切り裂いた。
「ぎいぃぃぃやぁ〜〜!!」
絶叫しながらも、血走った目で俺を睨み返す男。だが、左足はもう使えない。這いつくばる男の左に回り込み、その首目がけて剣を振るう。
最後だ!!
「リオ!! 殺すな!! 人質にする!!」
隊長の命令が聞こえ、ギリギリでそいつの頭を殴って失神させるにとどめた。
「リオ!! よくやった!!」
「すげぇ!!」
周囲から仲間の声が聞こえる。そして、どよめく敵兵の声もよく聞こえた。
「貴様ら〜〜!! 死にたくなければ引けぃ!! 死にたい奴は進み出ろ! 俺はいつでも挑戦を受けてやるとゴーデスに伝えろ!! 俺はリオだっ!!」
まだ戦える。次は誰だ。体中の血が沸騰するような高揚感——!!
「ワデム兵よ!! 俺は守備隊長だ。このまま引けば見逃してやる! 引けっ! 引かねば生死に関わらず捕縛する!」
俺が周囲を睨みつけていると、ブロンコ隊長の大音声で、一斉に敵が引き始めた。
隊長の声で、己の無謀さに気がついた。
「ふうっ、はぁっ、はぁ!! 隊長、助かりました」
「俺は何もしていないぞ?」
「あのままではやつを殺していましたし、一斉に攻撃されたら俺は死んでいました」
「はぁ〜! むちゃしやがって!」
「すみません。ちょっと頭に血が上ってしまって……」
戦いに興奮して理性が飛んでいた。返り血を浴びてなお、恐怖は吹き飛び血が滾っていた。
戦を模した祭りもよく行われていたため、体は勝手に反応する。
「——血塗れだぞ。けが人と死者を収容して帰還する。ビリー副隊長を手伝ってくれ」
「はい」
懐に突っ込んであった手拭いで顔を拭き、ビリー副隊長のところに行くと、彼がギョッとして目を見開いた。
「けがをしたのかっ? 大丈夫かっ?!」
「これは俺のじゃない、大丈夫だ」
「そうか……ふぅ。心配させるな」
「心配してくれたのか?」
「当たり前だろう? こっちに来るはずなのにいないし! 聞いたら一騎打ちしてるとか、なんだそれ! むちゃをすんなこれでも俺は上官だぞ?」
「今後は気をつける……ます」
「ふはっ! 敬語はいらないよ! でも、これからは俺に相談しろ。あ、マリアも回収したから安心しろ。
「わかった……ありがとう」
その後、重傷者の搬出に手を貸し、手当ても手伝う。被害はあったが、捕虜になったのは首級だと踏んでいる。だから、周囲の空気も明るい。
「尋問して情報を引き出せると良いんだが」
ぶつぶつ言いながら仕事をこなすビリー副隊長は、なかなかに器用な男だった。
町に帰還すると、待機組からも笑顔で迎えられた。
「リオ、すげぇ格好だぞ。湯を浴びてこい」
ビリー副隊長にいわれ、血と泥に塗れた隊員たちと浴場へ向かった。 浴場では、またしてもジロジロと不躾に全身を舐め回すような視線が突き刺さる。その視線はただの興味本位ではなく、情欲を孕んでいて居心地が悪かった。
それに、どいつもこいつも……俺も、戦闘の興奮でペニスが立ち上がり、その場で盛る連中もいた。
俺はざっと湯を被り流すだけにとどめ、自室へと素早く戻ろうとしたのだが、一人の男に腕を掴まれた。
「なぁ、新人。初の戦闘だっただろう? そのまま眠れるのか? 俺が寝かしつけてやろうか?」
「——結構だ」
「なっ?! よく言うぜ。 勃起したいやらしい色の乳首しやがって、チンポも勃ってやがるじゃねえか。滾って眠れねぇだろう?」
「戦いの後で性的に発散したくなるのはわかるが、俺を巻き込まないでくれ」
「なんだよ? やられるのが好きなんだろう?」
ニヤニヤといやらしい目つきで体を視姦する男にうんざりする。
「俺は、ただ一人のものだ。だから、他の人間とはできない」
それが女でも、男でも……
「——そ、そうか……思ったより一途だったんだな。悪かった」
「わかってくれれば良い」
毒気を抜かれたような顔をした男に背を向けて素早く自室へと入った。本来は二人部屋だが、戦死して補充が来るまでは一人で使えるらしい。
助かった……あいつが言う通り、滾るのは止められん。これじゃ眠れない。
湯上りは乾燥防止に香油を塗る。その香油の瓶を握り、ベッドに倒れ込む。
どうしても興奮状態が続き、勃起が治らない。あいつらはもう感覚が狂っているんだ。あんな、他人もいるところで始めるなんて……
陛下……お許しください。
香油を垂らした手を、滾ったペニスに這わせる。
陛下……あぁ……
クチュッ、クチュッ……グチュッ!グチャッ!
「ああっ……、はっ、はぁ!」
足りない。
最初はゆっくりだったが、徐々に荒っぽくペニスを擦り上げていく。だが、もうこれだけではイけない体になってしまった。
ゆるりとアナルに指を滑り込ませ、ぬぽぬぽと中を刺激する。
『陛下、お情けをください……』
『いいとも、レオ。かわいらしくねだってみせよ』
『俺のいやらしい穴を犯してください……』
「あっ、はっ! んっ、……イイ、ですっ」
一本だけでは足りず、2本目、3本目と中に埋め込む。
もっと、奥にください、陛下っ!!
「あっ!あっ、はぁっ、あっ、く、うっ……」
乱暴に、犯して……!
「あっ、————っ!!……は、はぁ……」
びゅるびゅると吐精し、ゆっくりと落ち着いてくる。だが、中は切なく疼いている。
まだ足りないが、さすがに道具は持ち歩けないし……
飛び散った精液を拭き取り水を飲んで深呼吸をすれば、徐々に疼きも治ってくる。
陛下に知られたら、浅ましいと笑われるだろうか?
あれほど激しく抱かれた夜から、まだ数日しかたっていない。それなのに、もう陛下を求めている。
生き残っても、陛下のお怒りを買って処罰されるだろうな……陛下のお手で死ねたら一番良いのだが。
毛布にくるまり、怒涛の日々の二日目も同じベッドで終わりを迎えた。
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