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第15話 国王は側室を手放せない ギディオン視点

 俺はギディオン・スペクター……だった。王の庶子で騎士として育った一人だ。あの戦で功を立てたのは、国のためではなく仲間を守りたい一心で行動しただけだったのだが。  バカな男が王だったせいで、俺以外にも大勢の庶子が己の意思に関係なく戦場に駆り出され死んでいった。残ったのは俺と直系のマナセ王子だけだった。だが、彼は幼く、傀儡にしたい臣下の下心に気がついて俺がかりそめの王となると覚悟を決めたのだった。  だから、王都へ帰還後、ダディザンの王子が人身御供としてフィディーリアへ贈られていたと知り驚愕した。聞けば食糧支援がなければ餓死者が大勢出ると言う。その引き換えに先王の慰み者になる予定だったという。そういう大事な話は早くしろ! と腹立たしく思った。  まったく、あの男はクズだ。死んでよかったと心から思う。 「陛下、どうなさいますか? 後宮に入っておりますが」 「——なぜ後宮に入れた?」 「先王陛下が逝去後、後宮はすぐに解体し、新王への捧げ物として入宮させましたが? それと、あと二人側室を入宮させております」  後宮の担当者にとってはそれが当然だったのだろう。だが、王子が後宮に入るなど屈辱だろう。お気の毒に。今は仕方ないが、周辺を整えたら出して差し上げよう。 「勝手なマネを……では、殿下にお目通りの知らせをだせ」 「陛下。差し出がましいことですが、陛下はこの国で最も尊い方であらせられます。臣下や寵妃に気遣いは不要です」 「——わかった。だが、先ぶれぐらいはしろ」 「御意」  お気の毒な王子を保護し、ダディザンが落ち着いたら帰国させてやろう。そう思っていた。  だが。だが—— 「そなたがダディザンのレオシュ殿下か?」  その人は、長く伸ばした金色の髪を編み上げ、浅黒い肌は艶やかで、サファイアの瞳……凛とした立ち姿は輝かんばかりのオーラを放っていた。  俺よりも背が高く、ダディザンの野性味溢れる正装はレオシュ殿下の立派に張り出した胸元を宝珠のネックレスが飾り、スリットの入った上着から覗く太ももは、たくましい筋肉がつきむっちりと肉感的で、むしゃぶりつきたくなった。  真に王族として育ってきた方は、かくも威厳を放つのか。  クズのような王族しか見たことがなかった俺は、後宮に押し込められてもなお、尊厳を失っていない王子にひと目で心を奪われた。  王である限り、この人は俺のものなのだ。いや、そんな鬼畜な所業は許されない。    だから、精一杯の見栄を張り、王族のように振舞う。俺が支援について検討し、帰国できるように手はずをするというと、自国の民を憂いて取り乱し平伏し縋ってきた。それほど深刻なのだ、と震える背中を見て思い知った。  現在、権力のある俺の支援者は少ない。騎士たちは支持してくれるが、王宮内は隙を見て俺を操ろうとする者がひしめいている。  そんな苦しい状況で、美しいこの人を俺のものにしても許されるのではないか? ほんの少しの癒しを求めても許されるのではないか? 「そなたの崇高な自己犠牲に敬意を払おう。さぁ、立つんだ。支援は約束しよう」 「陛下っ!! ありがとうございます!!」  俺を貫くまっすぐな瞳。愛されて育ったとわかる、まっすぐな心。俺の、俺だけの、寵妃——  面会をした日から、俺は私、になった。あの人を侍らせるに足るふさわしい王になろう。王としての口調、振る舞い、政務も積極的に学び決裁をした。  その間に、嫌々ながら二人の妃と義務を果たした。人前で行為を行うなど最低だ。後宮は俺の代で終わらせてみせると決意を強くした夜だった。彼女たちの将来もしっかり守ってやらねばならぬし、今は信頼できる側近を増やすのが急務だ。  苦痛も多かったが、騎士の友愛を知る私は男が男を受け入れる際の手順をよく知っている。きちんと準備をしなければ痛い思いをさせてしまう。だから、商人を呼んで様々な淫具を見聞することにした。 「陛下は、寵妃様にご熱心であられられるのですね。お妃様が知ればきっとお喜びになるでしょう」 「どうかな。彼はこれらを見て驚くかも知れないな」 「一般の貴族でも、これほど丹念に準備をする夫はおりませんよ?」 「そうか。愛があれば当然かと思うがな」 「お幸せな寵妃様です」  それはどうかな……雄々しい野生の獣を檻に閉じ込めているのに。  まずは細いものから慣らしてやろうと、大理石で作られた細い棒状の淫具を手にとった。先端は細く、下に行くほど太さを増す。とはいえ人差し指程度なので、初心者向きだろう。香油も最高の物を選択する。  徐々に太さを変えて、痛みがないようにしてやりたい。だが、俺の陰茎に近い物は与えない。それに、動かして開発することは禁じた。あくまでも痛みがないように拡張するのみ。  私を飲み込む時はきっと苦しいだろう。だが、その顔を見る事が出来るのは私だけ。快楽を教えるのも、私だけ——  昏い悦びを覚え、知らず笑みが浮かんでいるのに気がついた。ふとテーブルを見れば、選んだ淫具は初心者向けのものから上級者向けまで多岐に及んでいて、順に贈る楽しみができたとほくそ笑んだ。  立会人には最低限だけ見せ、その後は存分に愛するのだ。全身をくまなく愛でよう。あの布の下に隠れた胸を思うさま味わいたい。胸の飾りはどんな色をしているだろう。私の愛撫で、彼がどう変化するのか。  女との経験もないと聞いた陰茎は? 女の中の代わりに私がたっぷりとしゃぶり愛してやろう。    そして、男を知らぬ蕾に、私が子種を注ぐのだ——  

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