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第19話「ハルとユキの歪」

雨で冷え切った身体を引きずって、2人は晴也の家にたどり着いた。 一度智幸の家に戻り、鍵をかけてから傘をささずに歩いてきたのだ。 「どうしたの2人とも!!」 冬理の声に帰ってきていた哲朗も玄関に出てきて、急いでバスタオルで2人を包むと風呂に押し入れた。 「怪我のことは後で聞くからね?!!」 冬理の怒った声はこの頃良く聞いていた。 認識していなかったが、晴也は晴也で智幸が自分といない事に違和感を感じて、この頃は良く問題を起こして怒られていたのだ。 脱衣所で無言のまま服を脱ぎ、2人して浴室に入ると熱めのお湯を浴びた。 智幸の顔はそれなりに腫れていて、唇は切れている。晴也の手も腫れていたが、流石にもう血は止まっていた。 「、、後ろ向け。背中」 智幸の背は、やっと晴也を追い抜いていた。 小学校5年生で一度追いつかれていたのだ。 ザーっとお湯の出るシャワーを握り、晴也がそう命令すると智幸は後ろを向く。 「、、、」 晴也は筋肉のついてきたその背中に触れながらお湯をかけ、肌が温まるまで待った。 「こっち向け」 いいだろうと言う頃に声を掛けると、智幸は俯いて黙ったままこちらに向き直った。 「、、、」 「、、、」 2人とも、勃起していた。 そそり立った性器が、擦りそうな距離で目の前にある。 同じくらいの身長の2人は腰の位置も近くて、あと半歩でも前に出れば亀頭同士が触れ合いそうだった。 「、、は、る」 「、、、」 見つめあったのは5秒もなかったように思う。 智幸が壁に晴也の背中を押しつけ、そのまま勢いに任せて口付けた。 「ンッ!」 何とかシャワーを落とさずに抱えると、智幸の腹にお湯が当たって肌をすべり、ビタビタとうるさく音を立てて床に落ちていく。 その音に掻き消されるだろうと、2人は夢中でキスをした。 「んっ、んんっ」 ぴくん、ぴくん、と晴也の腰が跳ねるたび、智幸のそれと彼のそれは擦れた。 初めて人の肌と触れ合う気持ちの良さにも押され、智幸は2人分の性器を掴むとゆっくりと上下に扱き始めてしまう。 「ぷぁっ、ゆ、ユキっ」 「ん、、ハル、ハル」 止めようとする晴也と違い、智幸は緩く突き上げるように腰を揺らしている。 「はんっ、ンッ」 「ハル、はあ、、はあっ、、ハル」 何度もしつこくキスをされた。 気持ちの良さに飲み込まれ、晴也も智幸に応えるように口内に侵入した舌に自分の舌を絡める。 ぐちゅぐちゅと嫌な音が耳障りだった。 「ハル、ハル、ハル」 (うるさい) 晴也もシャワーを持っていない右手を智幸が握り込んでいるそこに這わせ、彼のリズムに合わせて同じように互いのものを扱いた。 友達とこんな事、と言う背徳感と、考えてみれば友達でも何でもないと言う意地で頭はパンパンになっている。 「ハル」 「ん、んっふ、、んっ」 「ハル、ハル」 ガツガツと歯を当ててキスをしながら、2人はそのとき同時に射精をした。 お互いの口を塞いで声を漏らさないようにしながら、浴室での秘事は終わる。 「ハル、、はあっ、」 「ユキ、、はあ、、はあ、」 浴室から出れば元に戻らなければならない、と2人は何となく理解していた。 勢い任せの行動にすぐに恥ずかしさが込み上げてきて、それでもお互い後悔はまったくない。 ただ晴也も智幸も、ここから先の行為を男同士だとどうやるのかまでは知らず、下手に温まってしまった身体にもう一度シャワーをかけてまた黙り込んでいた。 そしてその日以降、2人が一緒に風呂に入る事はなくなり、互いにこの日の事を口にする事はなかった。 今日までは。 「加那のときみたいに俺から奪ったら、何かあるとでも思った?」 晴也は無表情に智幸を見下ろしている。 あの日と全く同じだ、と晴也は考えていた。 彼は智幸を1人にしなかったけれど、智幸は晴也と違ってその後も彼女を何人も作った。 彼が彼女を作るたびに晴也も彼女を作った。そうしないと不公平だったからだ。 バレないように上手く隠してきたのは、あの日と同じ事が起こると面倒だったからだ。 そして今日、やはり面倒な事になって晴也は苛ついている。 「聞いてる?」 「ッあ、!」 先程からあからさまに勃起している智幸の股間を左足で踏んづけると、智幸は体を震わせて少し前屈みに倒れる。 「奪ったらどうなるの?嬉しいだけ?やったーって思うだけ?虚しくない?」 晴也はいやらしく足を動かし、智幸のそこを刺激して更に大きく硬く膨らませた。 苦しそうに息を吐きながら未だに泣きそうな顔で晴也を見上げる智幸の目は、それでもどこか期待に揺れていた。 「何で嬉しそうなの?」 「は、ハル、」 「何ですか、智幸くん」 「ぅあ"ッ」 グリ、と踵で脚の間を強く押され、智幸は低い声を出した。 晴也が電話をやめて自分を見つめていると言う事実に彼は歓喜している。 邪魔だった友梨とも別れ話になり、智幸の胸は喜びで満ちていた。 「ハル、名前呼んで」 「呼んでますけど、智幸くん」 「そうじゃ、なくてッ、、いつも、み、たいに」 あまりにも器用に足が動き、脚の間を擦られて刺激される。 とうとう智幸は自分の股間に手を伸ばし、急いでベルトを外し、ズボンのジッパーを下ろして広げ、晴也の目の前にテントを張ったボクサーパンツを曝け出してしまった。 「ハル」 「俺、しないからね」 晴也は不機嫌そうにそう言うと、左足もソファの上にあげてしまった。 「ハル、、ハル、名前」 「その前に俺に言うことは?」 バシ!と勢いよく、上げた足を振り下ろした。 「いてッ」 右足は智幸の顔面に当たり、グッと頭を後ろへ押してくる。 「言うことは」 命令ではない。 けれど怒っていると言うのだけは伝わる声色だった。 智幸は苦しくなって、下着からブルン、と勃起した自分のそれを出してやる。 「ん、」 そして顔に押し付けられた晴也の足の裏に、ベロ、と舌を這わせ始めた。 「舐めて良いって言ってないよ」 「んっ、、ハル、なま、」 「ユキ」 「ッ、」 ビクッ、と下半身にそそり立っているそれが、根本に力を込められて揺れる。 名前を呼ばれただけで射精感が込み上げた智幸は、一呼吸置いてから口を開いた。 「ユキ」 その声が、あまりにも彼の中に切なく響く。 やっと呼んでくれた、と智幸のそれは勃起したままビクビク揺れている。 「ハル、ごめんね」 そして謝りながら、ちろ、と出した舌でまた足の裏を舐めた。 「ごめんなさい」 「、、、」 晴也はまだ不服そうにそれを眺めている。 GOが出されない智幸は下着から解放した性器には触らず、晴也の足をべちゃべちゃに舐めるでもなく、ただ小さく舌を出しているだけだ。 「許して下さい、ごめんなさい」 「、、舐めたいの?」 意地悪く聞こえた声に目を開けて晴也を見つめた。 相変わらずの無表情だった。 「舐めたい」 眉間に皺を寄せ、智幸は苦しそうに言うのだ。 全く馬鹿だな、と晴也はあからさまなため息をついて見せる。 「、、いいよ」 「ハル、許してくれた?」 「足だけだよ」 微妙に会話が噛み合わない。 けれど気にする余裕もなく、智幸はたっぷりと唾液を絡ませた舌で晴也の足の裏を舐め、親指から順に口に入れてどろどろにしていく。 「っはあ、、はあ、、」 「んっ、、ユキ、ゆっくり」 「ごめん、ごめん、ハル、ごめんなさい」 ズボンを持ち上げていた手を離し、晴也の足を両手で掴むと、智幸は夢中でそれを舐め上げて性器の先端からダラダラと汁を垂らした。

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