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第45話「ユキの暴走」

欲しくて欲しくて仕方なくて、初めて特別になりたいんだと気が付いた。 周りと同じ視線で見ないで、自分だけをずっと見ていて欲しい。 肌の温度も、何気ない吐息も、笑った口元も、何もかも自分のものにしたい。 「ハルが俺のこと嫌いになる日が来たら、俺、もう生きてたくないッ消えたいッ死にたいッ、怖いんだよ、ずっと、怖いんだよお、、!!」 胸につかえていたものが、やっと吐き出されていった。 「ぅぁあ、、うぁああ!!あああ!!」 智幸は晴也の身体を抱きしめ、縋りながら大声で泣き始めた。 「嫌だあ、フラれたくないぃ、あああ、ぅわぁあ、嫌だあ!!」 あまりにも情けなくて、あまりにも臆病なその姿に晴也は「やっと理由が分かった」と納得しながらトン、トン、と背中を撫でる。 「俺のなのに!!俺のじゃなくなるのは嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!!」 「暴れるな、こら」 駄々をこねて暴れる身体を抱き締め返して、また背中を叩く。 告白もせず、絶妙な距離感でずっと甘えて来ていた理由がこれか、と少し拍子抜けもしていた。 けれど当たり前だとも思った。 これだけそばにいたんだ。 付き合って、別れる、と言うありきたりな結果が彼にとって何よりも恐ろしい事はこの状態を見ていれば良く分かった。 当たり前にそばにいたものが、それも「牛尾晴也」が自分の世界から消えるかもしれないと言うリスクを、智幸は頭のどこかでずっと考えて来たのだ。 「フラれたくない、ハル、嫌だよお、ハル」 ゲホッ、と嗚咽を巻き込みながらまだ泣いている。 「ユキ、でもそうやってずっと逃げるなら、俺は他の女の子と付き合って結婚して子供作るよ?いいの?」 「それも嫌だあ、やめて、何でそう言うこと言うの、1人にしないって言ったのに、ハルう!!」 容赦なく力が込められる腕に骨が折られそうだ。 「ユキ」 「うるさい呼ぶな!!ううう、ハル、ハル!!嫌だよ、嫌だ」 わんわんと泣き喚く幼馴染み。 晴也は話を聞こうとしない智幸を追い詰めるのはやめ、一旦落ち着くまで待とうと決めた。 「やだ、、、嫌だ、ハル、、うう、う」 Tシャツの肩部分が明らかにべちゃべちゃに濡れている。 涙も鼻水も染み込ませているな、と呆れながら晴也は視界の左側にある窓を眺めた。 (この泣き声、近所に響いてそうだなあ) トン、トン、トン、と背中を叩き、智幸の息が整って来ているのを確認する。 「ハル、嫌だ、、ハル」 泣き声は段々と収まって来ていた。 けれど、話を聞かないモードに入っている智幸は晴也から離れようとしない。 「、、ユキ」 「嫌だ、嫌だ、ハルは俺のだ、嫌だ、1人にしないで、ハル」 こんなに臆病に育てたのは自分のせいもある。 そんな気すらした。 智幸の両親は愛情のある人間だが、どうしても父親の職業が邪魔して彼を構いきれなかった部分が大きい。 冬理や哲朗も極力智幸に愛情を向けたが、結局1番可愛いのは自分の子供だ。 そんな中で、誰よりも智幸を構い、時間をかけ、愛していたのは間違いなく晴也だった。 (駄々っ子にしてしまった、、) 後悔は少しある。 けれど、あの頃の必死な智幸と必死な自分にはこの関係になる以外の選択肢などなかった。 「ユキ、お願いだから落ち着いて。話し聞いて」 「嫌だ!!嫌だ、ハルといる、嫌だ、う、うう、、嫌だ、いてくれなきゃ嫌だ、嫌だ」 「ユキ、、」 晴也を抱きしめる腕の力は弱まらない。 逆にキツくされている気がする。 ガシャン!と潰されて壊されそうだ。 (仕方ないか) はあ、と重く息を吐いた。 「ユキ、膝枕は?撫でてたら落ち着く?」 「嫌だ、しない、ハルといる、離れない」 (これでもダメか) 智幸は体温が高いのか、抱き締められている晴也は背中と腹に汗をかいている。 「んー、、」 「嫌だ、ハル、ハル、ハル」 「じゃあ、」 すり、と首筋に埋まっている頭に自分の頬を擦り寄せて、晴也は優しく彼の背中を撫でた。 「おっぱい吸う?」 「っ、、、」 ピク、と智幸の身体が揺れた。 「そしたら落ち着ける?」 「、、、」 やっと智幸の声が止んだ。 「ユキ、どうしたいの」 かかったな、と晴也は小さく笑った。 あまりにも正直な図体ばかり大きい子供の反応が面白かったのだ。 「、、、」 迷っているようだ。 智幸は鼻水をすすり、目元を晴也のTシャツにグリグリと擦り付けて涙を拭いて考えている。 晴也は答えが出るまで待つ事にした。 優しく背中を撫でて警戒心を解き、自分の落ち着いた呼吸を聞かせるように智幸の耳に口元を寄せている。 「ユキのしたいようにしていいよ。答えが出るまで待つよ」 とびきりに優しい声色に、正直、智幸は心臓が跳ね上がった。 (ハル、のおっぱい、、) ここ2日で散々吸っているけれど、それでも足りない。 触ってみたくて、吸ってみたくて仕方がなかったそれ。 (あ、勃ったな) あまりにも甘美な誘惑に、考えただけで智幸の肉棒は再び勃起し始める。 晴也は下っ腹の辺りに触る違和感が、すぐにそれだと分かった。 「おっぱい、いらない?」 「、、話したくない」 吸いたいけれど話はしたくない。 そんなワガママが聞こえる。 「ユキが話したいって言うから話してたのに?」 「、、、」 今度はゆっくりと頭を撫でる。 嬉しくなった智幸が、きゅっと優しく晴也を抱きしめる腕に力を込めた。 「ユキ」 名前を呼ばれるのさえ嬉しい。 誰よりも多く自分を呼んでくれてきた声だ。 「ユキ。分かった。今日はもういいよ。またゆっくり話そう」 「、、、」 「もうおっぱい吸わせてあげられないけど、頑張れるよね?」 ビクッ、と智幸の身体が反応した。 「おっぱい、、」 「ん?」 「おっぱい、吸いたい」 こちらを向いた智幸は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔をしていた。 「顔拭くよ」 「ん」 ゴシゴシと乱暴に智幸の顔を拭いていく。 好きなアーティストのグッズのTシャツが、涙と鼻水で汚れてしまった。 もうその辺の事を晴也は諦めている。 「じゃあ落ち着いて話し聞いてくれる?」 「、、ん。」 コクン、と頷く図体の大きい子供は、大きな手で少しだけ智幸のTシャツの裾を掴んだ。 「えっちなのはダメだよ。ちゅーちゅーするだけな?真面目な話しするんだから。いい?」 「、、うん」 「本当に分かった?」 「うん」 瞼が腫れた目がこちらを見ている。 晴也はきちんと理解したのかどうか少し様子を伺っていた。 「ユキ、床に座れ。この体勢だと背中痛くなるよ」 無言のまま智幸がソファの下に足を下ろす。 グン、と立ち上がっている股間に一瞬目を奪われたが、晴也は晴也で色々と我慢をして、智幸が床のラグの上に正座するのを見守った。 座り終えた彼の身体を挟むように脚を広げ、両足の間に智幸を入れる。 背もたれから離れて座面のきわに座り直すと、少ししょんぼりしている智幸を見下ろして頭を撫でた。 「いいよ」 「ん、」 自分の涙と鼻水で汚れた晴也のTシャツを捲り上げて左の乳首だけ外気に晒すと、智幸は遠慮がちにそれを口に入れ、入れた瞬間に色んな感情が溢れて必死に吸い付いた。 「ンッ、、」 ちゅう、ちゅう、と出もしない母乳を求めるように乳首を吸われながら、晴也は彼の頭を両腕で抱きしめ、顎を乗せながらフウ、と息をついた。 智幸は、やっと落ち着いたようだった。 「ユキ、、おっぱいずっと吸ってたいだろ?」 「、、、」 話は聞こえているだろうが、精神安定剤のようになっているこの行為を中断したくないのか、智幸はそこから一瞬も口を離さない。 小さくコク、と頷くだけで目を閉じて必死に吸っている。 「何でユキを1人にしないと、俺が1人になるのか分かった?」 コク、とそれも頷きで返された。 智幸の左手腕は晴也の腰を抱き締めている。 「ハル」 「ん、?」 無言になってしまっていた。 5分くらいひたすら優しく乳首を吸う智幸を待っていると、やっとそこから口を離してこちらを見上げてきた。 「もう少ししたらちゃんと話すから、もう少しだけ吸わせて」 「、、、うん、いいよ」 申し訳なさそうな顔に苦笑して、大丈夫だよ、と言うようにトン、トン、と優しく背中を撫でた。

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