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第46話「ハルとユキの告白」

「ごめん、、話し、する」 ちゅぱっとそこから口を離し、満足した智幸は捲り上げていた晴也のTシャツの裾を戻し、整えてから彼の脚の間から上を見上げてそう言った。 「もう大丈夫?」 晴也はこちらを見上げる智幸を見つめて、無理していないかと頭を撫でた。 やはりどこかしょんぼりしてはいる。 けれど、落ち着いて話しを聞ける状態には戻ったようだった。 「うん」 ぎゅう、と晴也の腰に抱きついて頷いた。 「、、フラれるフラれるって言うけど、まず俺、ユキのじゃないからね。付き合ってないし」 「分かってる、、」 「ユキはさ、、他の女の子に手を出しつつ俺にも手を出すってことなの?これから先も」 今まで散々してきた逃げ方に、晴也はもう飽き飽きしている。 「違う」 「じゃあその辺どうしたいの」 「さっきも言ったけど、ハルのおっぱい吸えるなら他の奴はいらない」 「ずっとそう言うことしてるだけなら、俺は俺で家族作りたいよ。都合良く、ユキが好きなときに身体渡す人間になんかなりたくない」 「違う、そうじゃなくて、、そう言うのじゃなくなりたい」 「どう言うこと?」 膝に乗った頭を撫でると、取り乱さずに一生懸命に智幸は晴也とのこれからを考え始めた。 「、、、」 「ハル、が、1人になるって言うのは、、俺が、ハルから逃げてるってことだと思う。だから、逃げないで、ハルといたい、、ハルと、いる」 「うん」 「でも、俺、、ハルがいつも言うみたいに、馬鹿だから、、ハルにフラれるかもしれないし、ハルは俺を嫌いになるかもしれない」 「うん」 「それは、怖い」 小さな心がずっと震えている。 「ユキが俺のことフるかもしれないよ?」 「そんなことしない!!ハルといたいんだよ、俺」 「何でその逆は考えられないの?」 晴也はキョトンとしていた。 「、、、ハルは完璧だから」 その声はいっそう寂しそうだった。 晴也からしてみれば、自分を突き放すような台詞にも聞こえた。 「ハルは俺と違う。俺は馬鹿だから、飽きられるかもしれないし、呆れられるだろうし、でも、ハルはそんなことない。頭良いし、綺麗だし、人と仲良くできる。嫌いになれない」 「んー、、」 そうか、その辺を伝えたことはなかった。 智幸が圧倒的に足りないところが多く、昔から与えてばかりいた晴也は彼自身への自分のこだわりを伝えた事はなかったと思い出す。 彼なりに感じてきた晴也へのコンプレックスがこんなに邪魔になるとも思っていなかった。 自分に対しては常に食い気味だと思っていたからだ。 「あのさあ、ユキ」 「うん、、」 冷房を効かせているリビングでも、先程騒いだせいもあってか少しだけ智幸の頭皮が汗ばんでいる。 頭に引っ付いた髪を指で解きほぐしながら、晴也は彼を見下ろして微笑んだ。 「ユキは、こんな俺を完璧って言ってくれるけど、多分、他の人からしたらそうじゃないんだよ。それに、」 智幸は晴也を見上げる。 どこまでも優しい笑みが見えた。 「俺は、世界で1番馬鹿なユキがいいんだよ」 「っ、、、」 心底嬉しそうな驚いた顔の智幸を見て、晴也はふふ、と笑う。 「ユキ以外のそんな馬鹿な人ならいらないよ。ユキがもし俺を選んでくれたら、俺だって怖いけど、それでもユキの1番近くにいたいよ」 穏やかに笑う晴也の目から、ぽた、と一粒涙が落ちて智幸の頬に当たった。 「何で泣くの、、傷付けた?」 「ううん。お互い怖いよなあって。俺だって、ユキがいないのなんか考えられないよ」 晴也は智幸を捨てる覚悟は出来ていた。 けれど、もし望めるのなら、この何よりも馬鹿で弱虫な男とずっと一緒にいたい。 彼の特別になって、誰よりも近くで、もう一度一緒に笑う権利が欲しい。 晴也自身が抱える本当の願いはそれ以外にはなかった。 「ユキにフラれるの、怖いよ」 「フラないよ、ハルといたいんだよ。ハルしかいないんだよ、」 智幸の両手が伸びてくる。 彼を見下ろす晴也の頬に触れて、包み込んだ。 智幸は膝立ちをして晴也を見上げ、コツン、と額を合わせてまじまじと緑色の目を見つめた。 「綺麗な目、、俺の好きな色、、」 「ユキ、、」 「ハル、俺にフラれるの怖いんだ、、俺も怖い。でも、ハルが他の奴に取られるの、もう見たくない」 「うん」 「ハルがいてくれるなら俺何でもするよ。何でもできるよ」 「うん」 ぱたぱたと智幸の頬に落ちてくる涙は、智幸の涙と混ざって彼の頬をつたい、顎をなぞって鎖骨やTシャツの上に落ちていく。 「、、ハルが好きだ」 その言葉は、本当にやっと聞こえた。 「好きで、好きで、死にそうだよ。ハルと両想いがいいよ、ずっと一緒にいたいよ。俺のことフラないって約束して。ハルの為なら何でもするから。ハルの為に生きるから、人生なんかいらないから、俺のものになって」 長く、情けない告白だった。 「ハル、愛してる」 晴也の表情が崩れて、歪んで、止まらない程泣いている。 けれどそれは傷付いたからではないのだと智幸は理解できていた。 (やっと言えた、、やっと、) 智幸自身、何年と続いた自分の不安を晴也も感じていると知って酷く安堵している。 やっと晴也を求めて良いと分かって、彼の頬を包んでいる手は震えっぱなしだった。 「俺と、結婚して下さい」 そして緊張のあまり、何もかもすっ飛ばしてそう言ってしまった。 「ふふ、、付き合うのが先だよ、馬鹿だなあ」 晴也も力の入らない手で智幸の頬を包んだ。 「俺と付き合って、ユキ」 彼からの告白に、智幸は本当に死んでしまいそうだった。 嬉しくて、嬉しさで苦しくて、何より幸せを感じていた。 それがこんなにも大きいと息さえ出来なくなるのだと思った。 「ッ、、うん、うんっ、彼氏になるよ、だからハルも俺の彼氏になって」 「うん」 どちらともなく口付けると、不思議と「フラれる」なんて言う不安は消えていった。 ただ、離れたくなくてしばらくの間ずっとキスをしていた。

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