5 / 20

その想いと引き換えに⑤*

「…っ…せんせ、離してっ…もう…ッ」 悠斗は自身の限界を感じ、九条の肩を掴んで遠ざけようとした。 それでも行為は加速し、九条は最後まで悠斗を追い込んだ。 「このままイけ。命令だ」 「…やっ…!あ、あ、…ッッ!」 悠斗は九条の手によって絶頂した。 放たれた華液は九条の手を汚し、床を汚した。 「舐めとれ」 「…ん…っ」 九条は手を悠斗の口に押しあてた。 悠斗の頭を掴み、後ろに逃れられないように抑えられた。 「…ふ、ぁ…」 悠斗は舌を出して九条の手の甲に付いた自らの華液を舐めとった。 「床のものも、全部だ」 「…!?」 「自分で汚したものは自分で綺麗にしろ」 「そん、な…」 「青葉に見てもらおうか?青葉のユニフォームで自慰をして、お前が放った精液を」 「…っ…」 悠斗は拒否権がないことを思い知らされ、椅子から降りて腰を屈めた。 手でその華液をすくいとろうとすると、九条に制止された。 「舐めとれと言ったんだ。聞こえなかったか?」 「…ッッ」 悠斗は屈辱から唇を噛み締めたが、反論はできなかった。 今九条の機嫌を損ねれば悠斗の最大の秘密がハルに露呈される。 悠斗は観念して、膝をついて犬のような格好で床についた華液を舐めとった。 「いい格好だな、そのまま誓え。君は今から私の忠誠なイヌになると」 「…!?」 「青葉に君の姿を見てもらいたいなら別だがね。君が青葉をどんな目で見ていたのか、ナニをしていたのか…」 「…お願いですから…その写真を消してください…!」 「消しはしない。が、君の態度次第でこれを露見するのは控えてやる。君が私のイヌになると言うのなら」 「そんな…こと…っ」 「今決めろ、あと10秒だ」 九条はスマホの画面を悠斗に見せつけた。 そこにはサッカー部のグループラインの画面があった。 「やめ、なに、を」 「10…9…8…7…」 画面は画像の投稿画面に移り、先ほどの写真が選択される。 「6…5…4…」 「〜〜〜ッッ!!」 ゆっくりと投稿ボタンに指が近づいていく。 「3…2…」 「やめてください!なんでもします!!イヌでも…なんでも…なります、から…ッ!」 悠斗は恐怖から涙が溢れた。 ハルを失う恐怖。 ハルに軽蔑される、ハルが遠ざかる。 その姿が脳裏に浮かび必死に九条に懇願した。 「お願い…やめて…ください…っ」 九条の脅しに屈して悠斗はその条件を飲んだ。 「いい子だ。明日の夜、私の部屋に来なさい」 そうしてやっと悪夢は終わった。 部屋にそっと戻ると部屋のメンバーはぐっすり寝ていて、怪しまれずに戻ることができた。 隣を見るとハルはまだよく寝ている。 ハルの寝顔を見ながら、悠斗は自分の過ちを悔いた。 ハルに口づけをしてしまったこと。 ハルのユニフォームで自慰をしてしまったこと。 その結果…最悪の事態を招いてしまった。自業自得だ。 俺はどんな顔してハルに接すればいいんだろう いままでどおり親友として接し続けられるだろうか この関係が崩れるくらいなら、この気持ちを仕舞い込んでいたほうがいい 九条先生さえ秘密を隠し通してくれれば、俺はハルを失わずに済む そのためなら-----なんだって犠牲にする。

ともだちにシェアしよう!