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主人とイヌ①

「おはよ!ユウト起こしてよ〜!朝メシ出遅れちゃったじゃん」 「あぁ、ごめん」 食堂で悠斗は先に朝食を済ませてしまったところに、ハルが寝グセ頭のまま降りてきた。 「俺先に部屋戻ってるから」 普通の顔をしていられるか不安で、ハルと目を合わせることができなかった。 胸がきゅうと苦しくなる。 その日はチームがハルと別れたため、サッカーをしている間は何も考えずにいられた。 昼食も、夕飯も、風呂も、いつも隣に来ようとしてくれるハルを避けて、忙しそうにしてみせてハルと一緒の時間を作らなかった。 「なぁ、なぁユウトってば!」 痺れを切らしたハルは風呂上がりに悠斗を追いかけてきた。 「なんか怒ってる?オレ、ユウトになんかした?」 「…いや…」 エレベーターを待つ間、逃げ場を失った悠斗はハルと向き合うしかなかった。 「じゃあなんで避けんの…?」 「避けてなんか…」 ハルは悠斗の寝間着の裾をきゅっと掴んだ。 「今日オレ、つまんなかった。ユウトが隣にいなかったから」 「…ごめん」 「なんか怒ってんなら言ってよ」 「ハルは何も悪くない。俺がちょっと疲れてただけだよ。今日はごめん」 「ん…今日隣で寝ていーの?」 「…うん」 そう答えると、しょげていたハルの顔に笑顔が戻った。 「じゃあさ!大富豪やろ!トランプあったけど昨日できなかったからさ!…あ、ユウト疲れてるなら早く寝たほうがいい?」 部屋に向かうエレベーターに乗り込もうとすると、降りてきたエレベーターには九条先生がいた。 「…!!」 悠斗は身を引き、ハルから距離を置こうとしたがハルは悠斗の寝間着の裾を掴んだまま離さなかった。 「仲がいいな。明日もあるからはやく寝ろよ」 「はい!おやすみなさい九条先生」 ハルはなんの警戒もなく九条に挨拶をした。 「おやすみ」 すれ違い際に、トンと悠斗の肩に九条の手が触れた。 その一瞬の感触だけで伝わる抑圧。 -----今夜、わかっているな? 昨日の悪夢はまだ続いていた。

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