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好きなのに①
その夜は、部屋に戻ることなく九条の部屋で夜を明かしてしまった。
目を覚ました悠斗は、全身がだるく頭も冴えない状態で、ここがどこなのかすぐには判断つかなかった。
「おはよう」
「!」
九条の声に無意識に身体が反応してしまう。
九条は既に練習着に着替えていた。
悠斗は自分がいつ寝てしまったのか思い起こそうとするが、頭痛がして昨夜の出来事が思い出せない。
「先生、俺昨日…?」
「昨日は無理をさせたな。動けるか?」
「…はい…」
昨夜、この部屋に来て九条に抱かれたことは覚えてる。
それから…九条が怒り、腕を縛られ…恐怖に身が縮んだ。その恐怖は覚えているが、その後の記憶が飛んでいる。
はっと気づき、時計を確認すると7時を過ぎていた。
もうみんな朝食に向かう時間だ。
この時間に俺が部屋にいないと、ハルはまた置いていかれたと怒るだろう…
「俺、もう行きます」
悠斗は乱れた寝間着を整えて部屋を出ようとした。
「あぁ、ちょっと待て」
九条は悠斗がすれ違う瞬間に腕を引き、腰を屈めてその唇にキスをした。
「ん、っ…」
何度しても慣れない、舌と舌を絡ませる九条のキスに悠斗は目を瞑って耐えた。
「しばらくお預けになるからな」
「…しばらく…?この合宿が終わればもう…こんなこと…」
「私がそう言ったか?」
九条の射抜くような視線に悠斗は息を飲んだ。
「忠実なイヌは主人が呼べば来る、そうだな?」
「そんな…いつまでこんなこと…!」
「いつまででも」
「…ッ…」
悠斗は九条を睨みつけるが、やはりこの問答に勝ち目がないことはわかっている。
「…ハルに…何も言わないでくれますよね…?」
「あぁ、約束は守る」
「…もう行きます」
悠斗はこれ以上問答することを諦め、九条の部屋を出て行った。
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