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主人の呼び出し①*

side.悠斗 合宿が終わり、帰りのバスも、帰り道も、ハルと悠斗は言葉を交わさなかった。 ハルの顔を時々盗み見ると今にも泣きそうな顔をしていて、それでも、悠斗からハルに話しかけることはなかった。 ハルと仲直りできたって、親友としてだけだ。 それ以上距離が縮まることはない。 そんなことわかってたはずなのに。 合宿に行くまでは、それで満足してたのに。 これ以上なんて求めなかったのに。 翌日も、翌々日も、練習はあったがハルと悠斗は挨拶も交わさなかった。 周りから見ても分かるほど2人はお互いに距離を取っていた。 「滝瀬」 短く呼んだ声は、九条のものだった。 「明日は土曜の午前練習だ。午後は空いているな?」 "忠実なイヌは主人が呼べば来る…そうだな?" 九条の視線は言外にそう物語っていた。 「…はい」 ハルとケンカして話もできない状態でも、ハルへの想いは変わらない。 俺はハルを好きでいられるだけで十分だ。 俺の気持ちがハルに知れたら、それすら叶わなくなってしまう。 もう悠斗の心には、九条のイヌでいることがハルを好きである証だと、捻じ曲がった倫理観が植えつけられていた。 土曜の練習後、呼び出されたのは学校の職員用地下駐車場のトイレだった。 その個室に合図があるまで入っていろと指示された。 薄暗い誰も使わないトイレで、悠斗は一人でただ九条を待っていた。 今の悠斗に1人の時間は酷だ。余計なことばかり考えてしまう。 今日だって、ハルと話せなくてもハルばかり見ていた。ハルのことばかり考えていた。 どうすれば、ハルと元のように戻れるだろう。戻ったところで、自分の理性は保つのか?ずっとこのままハルを見ているだけのほうがいいんじゃないか? ぐるぐるとそんなことを考えては、あの日の自分の態度を悔やんで溜息をつくばかりだった。 コンコンコンッ 3回ノックの音がした。「はい」と返事をすると、「私だ、開けろ」と九条の声がした。 悠斗がトイレの戸を開けると、スーツ姿の九条がいた。 「さて、私の家までは少々時間がかかる。下準備をしておこう」 「…?」 「後ろを向いて手をついていろ。声を上げるなよ」 悠斗は嫌な予感がしたが、九条の命令どおり九条に背を向けてトイレのタンクに手を置いた。 ズボンと下着が膝まで降ろされた。 「…ッ」 「濡らせ」 後ろから九条の手が出され、悠斗の口にその指が入ってきた。 「ふぁ、ん、…っ」 悠斗はその指を舐めて濡らした。 十分に指が濡れると、それは悠斗の蕾を撫で、その中へ入り込んだ。 「…っ…う、…ッ」 悠斗は声を押し殺して我慢した。 九条の中指が悠斗の中をくちくちと小さく音を立てて慣らしていく。 「先生…こんなとこで…っ…嫌です…!」 「心配するな、これを挿れるだけだ」 「…!それ…や…っ」 目の前に出されたのは、小型のローターが二つ。 合宿最後の日に悠斗の欲に固定されたものだ。 悠斗はその夜のことをあまり憶えていないが、その時の恐怖と快楽は身体が憶えていた。 「…っあ、っ…うぅっ…」 ローターの一つは悠斗の蕾に挿入された。 挿入されたローターは九条の指によって奥へと促される。 まだ振動はオフになっているため、悠斗は耐えることができた。 もう一つのローターは悠斗の欲に固定された。 「先生…やだ…っ…これ、嫌…っ」 悠斗は訴えるが、九条は唇を歪めるばかりで聞く耳を持たない。 そのまま下着とズボンを履かされ、ローターは隠されてしまった。 「さぁ、車に乗れ。私の家に招待しよう」 地下駐車場のトイレの個室から九条は先に出て行ってしまった。 残された悠斗は、下半身に違和感を感じながらなんとかそこを出た。 「…っ…ん、う…」 壁を伝いながら少しずつ歩く状態で、九条の車までの距離がひどく長く感じられた。 歩くごとにその存在を主張してくるローター。 九条の車まであと少しというところで、蕾のローターが振動を始めた。 「…ひっ…あ、〜〜ッッ!!」 悠斗はその場にしゃがみ込んでしまった。 腰が震え、足に力が入らない。 「来い、滝瀬」 九条に手を差し伸べられ、その手を引いてもらってようやく立ち上がれた。 そのまま九条に手を引かれ、車の助手席に座らされた。 「うぁ、あ…っ」 座ると蕾のローターは更にその存在を主張した。 九条が運転席に座り、助手席のシートベルトを締めると車は出発した。

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