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第46話 「お別れ」

 真っ暗。  何も、見えない。  本当に、死んだんだな。  ごめん。ごめんな、クラッド。せっかくお前が生かしてくれたのに。  結局、俺はまた死んじゃった。  ふと、何かの気配を感じた。  知ってる。ずっと一緒にいたんだから、分かる。  クラッド。お前、そこにいるのか。  俺が気付くと、目の前にクラッドが現れた。  俺のこと、怒ってるか。お前の願いを俺は叶えられなかった。  クラッドが、ゆっくりと横に首を振った。  そして、優しい笑みを浮かべてる。  俺を、許してくれるのか。勇者への想いを捨てきれなかった俺を。  クラッドの口が動く。だけど声は聞こえない。  でも、少しだけ分かった。  大丈夫、と。  何が大丈夫なんだ。  確かに神剣は魔王城にある。リドもいる。でも、誰も争わない世界にはならなかった。  神剣の加護で人々から魔物は守られるかもしれない。でも、人間はきっと争うことをやめない。世界は、平等にはならなかった。  エルの言う通り、そんな世界は最初から無理だったんだ。  また、クラッドの口が動く。今度はしっかり読み取った。  世界は変わった。魔物と人間、異なる種族である者同士が手を結べる時がくる。それを、証明してくれた。  俺とエルが、そうだと言うのか。  そうだ。我には出来なかったこと。それに、あの勇者が各地で言葉にしていた。魔物は敵ではないと。話し合えば分かり合える、と。  これはお前と出会えたから、勇者の認識が変わったんだ。間違いなく、お前のおかげだ。  アイツ。エルが、そんなことを言ってたのか。  なんだよ、本当に。なんでお前はそうなんだよ。どうして、そこまでしてくれるんだ。そんなこと口にして、みんなから反感買ったらどうする。勇者って立場が危うくなるんだぞ  ああ、もう。勝ち目がないよ。もう、完敗だ。  もう、この世界に勇者も魔王も必要ない。だからお前も、在るべき場所に帰るといい。お前を待ってる人の元に。  え。何言ってるんだ。俺はもう死んだんだ。どこに帰れって言うんだ。天国か、地獄か?  それに、待ってる人ってなんだよ。  魔王だった俺は、やっぱり地獄に行くのかな。  もし生まれ変われるのなら、今度は何になるのかな。  そんなことを思っていると、クラッドが俺の肩を押した。  倒れる。  クラッドが、遠ざかっていく。  待って。待って、クラッド。俺、まだお前と話したいこと沢山あるんだ。  クラッド。クラッド、地獄でも天国でもいい。一緒に行こうよ。  なぁ、俺を1人にしないでくれ。 「ありがとう、イオリ」

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