48 / 80

第48話 「夢の中で見た再会」

 その後、見舞いに来てくれた両親と再会して、またぐっちゃぐちゃになるまで泣きじゃくった。  蓮は学校帰りに丁度寄ったところだったらしく、詳しいことはまた後日と言って帰っていた。  両親は帰り際の蓮に物凄くお礼を言ってた。まぁ息子の命の恩人だからな。  それから俺は、精密検査を受けた。特に問題はなかったけど、1ヶ月も寝たきりだったこともあり暫くは入院生活だ。  正直、その必要がないくらい俺の体は元気そのものだった。多分、寝てる間はずっと俺の中に、クラッドがいたからだと思う。魔王の生命力が俺を守ってくれていたんだ。  本当に、何度感謝しても足りないくらいなのに。  もう、何も言えないんだな。  俺を線路に突き落としたイジメっ子たちは、退学になったらしい。  俺のイジメはみんなが見て見ぬふりをしていたけど、さすがに殺人未遂となってはスルーできない。  あの場に目撃者は大勢いたし、俺を助けてくれた蓮も彼らがやったことを告げてくれたそうだ。  蓮は、いじめられていたのが俺だって知らなかったらしく、気付かなくてゴメンって言ってくれた。  馬鹿だよな。そんなの、アイツのせいじゃないのに。  両親も、蓮と同じように気付かなくてゴメンと謝った。  俺が悪いのに、なんで謝るんだよ。俺は、学校でのことを話した。両親は泣きながら全部聞いてくれて、抱きしめてくれた。 ーーー  そして、その日の夜。俺は、夢を見た。  見覚えのある場所と、よく知る2人。  魔王城で、玉座の前で横たわるクラッドとエルの姿があった。  中身の俺が抜けたからなのか、クラッドの姿も元に戻っていた。 「……我が王、クラッド」  リドの声だ。  リドはそっとクラッドの頬を撫で、涙を流してる。  ゴメン。ゴメンな、リド。俺のせいで。 「……クラッド。お疲れ様でした」 「……リ、ド」  クラッドの口が動いた。そうか、俺と入れ替わったから、クラッドの意識が戻ったんだ。  でも、もう。 「我々の小さな王様は成し遂げてくれましたよ。この世界を、変えてくれました」 「……ああ。お前にも、苦労をかけたな……」 「いいえ。最後にこうして、貴方が帰ってきてくれたのですから、十分ですよ」 「そうか……世界はきっと、今より良くなる。魔王と、勇者が、その種を撒いてくれた……いつかきっと、芽吹いて、くれる……」 「ええ……だからもう、貴方も魔王である必要はありません、クラッド」 「そう、だな……お前を、天に戻してやりたかったが……もう、我には……」 「いいんです。貴方のそばにいられれば、他に何もいりません」 「そう、か……愛してる、リド」 「私もです、クラッド。愛しています……」  意識が、遠ざかる。  そうか。クラッドが世界を支配したいと願ったのは、リドのためでもあったんだな。  隔たりがなくなれば、天使と悪魔が想い合うことも出来たかもしれない。 そう、願ったんだ。  でも、よかった。  最後に2人が、一緒にいられて。  良かった。本当に、良かった。  ありがとう、リド。  ありがとう、クラッド。

ともだちにシェアしよう!