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第7話 【人喰い龍討伐クエスト1】

 大きな通りを進んでいくと、酒場の看板を見つけた。クエストの受付も兼ねてるからか結構大きな店だ。 「ねぇ、伊織。クエストの掲示板、なんで酒場なのかな」 「子供が入らないように、じゃないのか。クエストを受けられるのに年齢制限があるのかもしれない」 「なるほど。納得した」  そうなると、余計に魔王の姿じゃなくて良かったかもな。あのままだと完全に子供にしか見えないし。  とはいえ魔物だと人間みたいに見た目で年齢が分からないから関係ないのかもしれないけど。  酒場のドアを開けて中に入ると、様々な種族の人達で賑わっていた。  これは壮観だな。数人で集まってる人達は恐らくパーティを組んでるんだろうな。大きなボードの前で皆があれこれ話してる。 「クエストって勝手に受けても大丈夫かな……もうこの世界のシステムなんて分からないからどうしたらいいのか」 「うーん。みんなあの掲示板から紙を剥がしてるみたいだけど」 「仕方ない。誰かに聞くか」  初心者丸出しで舐められそうだけど仕方ない。旅の恥はかき捨てだ。  俺は掲示板から紙を剥がしてる人達に話を聞いた。  この掲示板に貼られてる依頼書は誰でも自由に取って大丈夫らしい。その依頼書に依頼人や報酬のことも全て書かれているから、この紙を持って依頼人に会いに行けばいいそうだ。  特に資格とかそういうのは必要ないみたいで助かった。これなら俺らでも簡単に出来そうだ。 「じゃあ、報酬が良さそうなやつ選ぼうぜ。蓮、何か良いのあったら教えてくれ」 「うん。でも報酬高いのは危険生物を倒して得られる素材を持ってくること、みたいなのだね」 「モンスター退治は今でもなくなってないんだな。まぁこればかりは仕方ないか……野放しにして人間にも魔物にも危険が及ぶのであれば対処しないとな」 「じゃあ、これにする? 人喰い龍の角を取ってくるやつ。報酬は一千万メイト」 「メイト……この国の通貨か。他のやつの報酬を見た感じ、それが一番の高額っぽいな」 「日本円でいくらくらい?」 「えー……まだこの国の物価がどんなものかも分からないから何とも言えないけど……そのまま一千万円って思っておけばいいんじゃないか?」 「ヤバいね、それ」  蓮が軽く引いてる。確かに最初に受けるクエストがSSランクのものだからな。  普通のゲームなら最低ランクから始めるだろうけど、俺達はある意味で強くてニューゲーム状態だ。そんな回りくどいことする必要は無い。  俺がその依頼書を剥がすと、周りがザワついたけど気にしない。 「えーっと、依頼人は……この街の領主か。舐められないように少しだけ魔力調節するか……」 「さすがゲームやり慣れてるだけあるね、伊織は」 「やっぱ効率良くいかないとな。敵の動きが分からない以上ノンビリもしていられないし」 「そうだね。そういえば、報酬にお金以外にも何かあったよね」 「あー、ミズドの宝玉って書いてあったな。何に使えるのか聞いてみるか」  もし装備の鍛錬に使えるなら、蓮の武器作りに役立つかもしれない。SSランクの報酬なんだから、相当良いやつだと思うし。  俺達は依頼書の裏に書かれた地図を頼りに領主の屋敷に向かった。  街の中心にある大きな屋敷。分かりやすい金持ちの家だな。道中、領主の話も聞いてみたけど悪い人ではないみたいだ。ありがちな悪い領主とかならどうしようかと思ったけど、大丈夫かな。  屋敷に着き、使用人に話をして応接室に通された。  可愛いメイドさんにお茶を出され、少し待ってると恰幅のいい男の人が部屋に入ってきた。この人がこの街の領主、ドドーリーさん。皺だらけの顔で優しく微笑みかけてくれた。 「初めまして、ドドーリー・クランガンです。お二人が今回の依頼をお受けしてくださるのですか?」 「はい。俺は……イオリ。こっちがレンです。この人喰い龍っていうのは?」 「実は、数日前から人里に降りて襲ってくるようになりまして……最初は王都の騎士団が討伐隊を派遣してくれたんですが、誰も帰ってこず……」  そんなにヤバい龍なのか。昔はそんなやついなかったぞ。  もしかしたら例の奴のせいかもしれないな。 「あの、ドドーリーさんは魔王の噂をご存知ですか?」 「魔王……? 隣の大陸に現れた魔物のことでしょうか」 「その話、詳しく教えていただいても?」 「ええ。私も噂を聞いた程度なのですが、ひと月前に現れたその魔物は南のモードノッズ大陸を占拠しているとか……その者のせいで今は南行きの船は全て欠航。誰も立ち入らないことから暗黒大陸と呼ぶ者もいるそうです」  なるほど。間違いなく転生者はそこにいるんだろうな。  モードノッズ大陸は昔からあった。このアイゼンヴァッハには6つの大陸があって、その中で1番面積の小さな大陸だったはず。  当時はほぼ未開拓で人口も少なかった。今でもそんなに変わらないのであれば、乗っとるのに1番楽な場所だったんだろうな。 「……そうですか、ありがとうございます。すみません、関係ない話をして」 「いえ、大丈夫ですよ。それで、依頼の方ですが……」 「ええ。俺たち2人で引き受けます。それと、この報酬の宝玉って何ですか?」 「おや、存じませんか? ミズドは大精霊より加護を受けた聖なる宝石です。それで作られた武器はかつて勇者が持っていた神剣に匹敵すると言われているんですよ。まぁ、勇者がいたのは千年以上昔のことなので、もう比べようもないのですが……」 「そうですね。でもそれはとても興味あります。では依頼成立ということで、俺達はもう行きますね」  俺らは立ち上がり、ドドーリーさんに見送られて屋敷を出た。  大精霊なんて昔は人と関わりを持たなかったのにな。これも世界が変わった影響なのだろうか。 「これで蓮の武器もどうにかなりそうだな」 「うん。でも鍛冶師のこと聞き忘れてたね」 「あー、そうだったな。まぁそれは報酬貰った時でいいか」  敵の情報を聞けたのが嬉しくてすっかり忘れてた。  それにしても暗黒大陸か。随分と露骨なネーミングセンスだな。分かりやすくて助かるけど。  それにしても人喰い龍か。殺さずとも多少痛めつければ大人しくなるだろ。 「蓮、手加減してやれよ」 「俺、そういうのも全部ガグンラーズに任せてたんだけど……」 「……勇者怖いな……」

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