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第18話 【終幕】

 ――ドサッ  加治の気配が消え、玉座の後ろから何かが倒れる音がした。  警戒しながら見に行くと、そこには一人の青年が倒れていた。 「この人は……?」 「もしかして、こっちの世界の加治か……加治の精神に影響を受けてたみたいだから、アイツがいなくなったことで憑き物が落ちたのかもしれない」 「そっか。でも、どこの人なんだろう……家に帰してあげないと」 「そう、だな。迷惑かもしれないけど、ドドーリーさんに預けよう。顔が広い人だし、きっとすぐに見つかるだろ」  俺達は街に転移して、ドドーリーさんに彼を預けた。  事情を説明したら快く引き受けてくれた。  それから俺達は魔王城に戻り、取り戻した神剣とクラッドの遺骨をあるべき場所に戻してやった。 「これで元通りだな」 「うん。伊織、カッコよかったよ」 「……んなこと、ない。あんなの綺麗事並べただけだよ」  アイツに俺の言葉が響くとは思えない。  俺なんかの言葉で何かが変わるなら、初めからイジメなんて起きないだろう。  アイツも言ってた。自分だけが悪いわけじゃないって。  まぁ確かにアイツだけが悪いんじゃない。俺をいじめてた奴は他にもいた。みんなが見て見ぬふりをしていた。  毎日、どこかで誰かがイジメに遭ってる。ニュースでもイジメで死んだ子が報道されてる。  反省をしない子も沢山いる。  そんな子たちに、さっきみたいな俺の言葉はきっと届かないんだろう。  だからって、何もしないっていう選択肢を俺はもう選びたくない。  誰かがやってるから自分も許されるなんて思ってほしくない。  自分の行いは、自分自身のものだ。誰かのせいになんかできない。  だから俺は、自分の意志で選ぶんだ。  もう、逃げたりしないって。 「俺はこれからも沢山迷うし、立ち止まることもする。でも、もう自分に嘘をつきたくない」 「うん。俺だって沢山迷うし間違えるよ。でも、自分や伊織。大事な人達が一緒に笑い合える選択をしたい」 「蓮……」 「これからも、俺に頼って。俺も、伊織を頼る」 「ああ……これからも、よろしくな」  互いの拳を突き合せると、勇者の墓標に立てかけていた神剣が光り輝いた。  目が開けられない真っ白な光。  その中で、俺達は一つの声を聞いた。 『この世界を救ってくださって、ありがとうございます』

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