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イケメンDK卵を買う

「え!? 翼君って一人暮らしなの?」 「急に、親が海外転勤決まってさ。」 「いいなー、オレんとこなんか姉弟多いから誰もいない事が羨ましい!」 「そーかー? 家事は面倒だぞ」 「あー、それはそうだな。」 「・・・」 スーパーのカートを男子高校生が囲んで押してる姿が珍しいのか・・・ 傍を通る奥様方の視線が若干刺さってるのは気のせい・・・ではないか 自分だってこんなイケメン3人がスーパーにいたら見る!何なら、献立何なのかカゴの中も気になってしまうな。 しかし、相馬は牛乳持っててもイケメンだな。 その時 タイムセールを知らせる鐘が鳴り響いた 「あ!始まった!! 各自1パックずつ確保するように!!」 「「「!!」」」 「・・・・びっくりした!」 「つ、翼君はいつもあれを経験してるの??」 もみくちゃになったのか、よれよれになった朝比奈と黄瀬を横目に、普段表情の崩れる事の無い相馬にも疲労感が見える。 「んー、今日は、なんか人が多かった??」 「「「・・・・」」」 かごの中には、人数分のお一人様1パックの卵 ちょっと、一人で消費するには多いけど今日はこれで3人に夕飯でも作ろう! オムライスか天津飯とか・・・ 卵に思いを馳せていたら黄瀬と朝比奈がお菓子コーナーで止まった。 「なー、翼おやつ買ってもいい?」 「あ!僕も!! こういうとこ初めてきたか見たいかも!」 「・・・お前ら、子供か?」 「別にいいじゃん!そんなこと言うと相馬にはあげないよ!」 「一人一個な! オレ、あっち見てくるから。相馬は?」 「カート押すよ。」 「サンキュ」 二人で、スーパー内を回ってるとソーセージの焼けるにおいにつられてつい立ち止まってしまった。 「お兄さん達、お一ついかが?」 「いや・・・」 「ありがとうございます」 そのまま二個受け取って、相馬に渡す。 「おいしい!」 にこにこしながら、おばちゃんは焼きあがった他のソーセージも勧めてきた。 あれも、これもと勧められるまま食べてしまった。気が付くと人が集まってきてしまったので、申し訳ないから一つカゴに入れようとしたら、おばちゃんにコッソと耳打ちされた。 「買わなくてもいいわよ。 お客さん呼んでくれてありがとね」 そういわれて、ふと周りを見ると相馬が食べていたソーセージがマダム達のカゴに吸い込まれていた・・・ 結局、朝食のお供にもなるので一袋カゴにいれて其の場を離れた。 おばちゃんが相馬にも何か言ってるようだったけど、聞きとれなかった。 「なんか、ごめん。 考えたら、相馬って普段スーパーとか使わないよな」 「・・・。」 「朝比奈とか、黄瀬もなんだかんだでお坊ちゃんなんだよな・・・。誘って悪かったな。」 「・・・そんな事はない。結構、楽しんでるから安心しろ。」 ぐはっ!! な、なんでここでそのスマイルが・・・ あ!後ろでマダムが・・・流れ弾ならぬ、流スマイルの余波か!!! けど、相馬が楽しいと思ってるならいいか。 朝比奈達とも合流し、スーパーを後にした。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ マダムA「あー、あの子達かっこよかったわ~」 マダムB「ホント、私たっらつい卵のパック渡しちゃったわよ!」 マダムC「私も、ついパック渡すついでに手触っちゃったわ~!!」 試食のおばちゃん「ホント、いつも来てる子も可愛いけど、今日のお友達は凄かったわ」 後ろからカート押してついて来てて、まるで新婚さんみたいだったから、ついイケメンの子に耳打ちしちゃったけど・・・、長年いろんなお客さんを見て来たおばちゃんの目にはそう見えたのだから仕方ない。 おばちゃんの戯言と思って許してね。今度来たら、とっておきの試食だしてあげるから!! その日のソーセージの売り上げはこの月一番だった。

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