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部長と田貫

「部長~。佐々木君の撮ってきた写真がまた売り上げトップですよ~」 「おぉ!! 素晴らしい!!」 暗幕が常に閉められているちょっと薄暗い部屋でいつもの様になにやら、悪い顔で話している二人。 「構図とかも、拘っていて、黄瀬君と朝比奈君の2ショット写真とか、在校生だけでなく、他校生にも人気らしいですよ。」 「我が部発行の季刊誌も、今年はかなりの売り上げを期待できそうだな。」 「ですね!! これなら、先行投資で佐々木君には一眼を渡してもいいんじゃないですか?」 「そうだな。それもいいかも知れないな。だが、それならば彼の写真ももう少し欲しい所だな・・・」 「あぁ・・・。青桐君の写真ですよねぇ。」 二人で思わず空を見上げ、同じ人物を浮かべる。 やはり、在校生、他校生からも一番人気なのは、青桐相馬。彼なのである。 そんな彼の写真を、佐々木翼は他の二人に比べると撮ってくる枚数が極端に少ないのだ。 「最初の時に、見せてもらった写真は普段の彼からは想像できない様な表情だったから、きっと佐々木君が撮ればいい写真が撮れるとは思うのだが・・・。 彼自身が、撮るのを忘れてしまうらしいからなぁ・・・。」 「あぁ・・・。ですね。先日、朝練の時もあんなに至近距離にいたくせに途中からシャッター切ってませんでしたしね。」 遠くから撮ったにしては、やたらと高画質な写真を手にトリミングされる前の構図を思い出していた。 まるで恋する乙女の様に、一人の人に夢中になっている姿を・・・ 「まぁ、彼が居るおかげで我々も写真を撮らせて貰えてますし、佐々木君が望んだら良い機材を渡すことにしましょう!」 「そうだな・・・。ところで、トリミングした例の写真はもう渡したのかい?」 「はい! 先ほど、弓道場で見かけたので渡してきました!!」 本当、佐々木君はいい写真を撮らせてくれる。 まぁ、条件付きだけど・・・。

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