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出場種目

スポーツは前も今もそんなに得意では無い・・・。有難い事に部活や委員会の仕事が当日有る生徒は自由出場種目は免除される事になるので、クラスリレーと障害物走に出る事になった。  出るからには、頑張ろう!! 折角だし、陸上部の特別練習に参加するかな・・・。この時期だけ、陸上部が部員確保の意味も込めて1年生相手にグランド練習の参加を許可しているのだ。期間は一ヶ月、外周(約2.5KM)を走るだけだの練習だけど、何もしないよりはマシだよな・・・。 放課後、ジャージに着替えてグランドへ行くと、同じ様に練習に参加してる生徒が数人いた。練習は陸上部のメンバーとペアになってストレッチの後に、走るのだが陸上部は伴走しなければならない。オレのペアは、朝比奈がやってくれる事になった。 「翼君、宜しくね!」 「こちらこそ、宜しくお願いします!」 「けど、練習に参加するなんて偉いね~」 ストレッチしながら、朝比奈が聞いてきた。 「折角だし、走れる方が楽しいからさ」 そう、前の記憶で体育祭やスポーツ関係ではあまり良い思い出は無い。リレーに出れば転んだり、足を挫いたり・・・。マラソン大会では、最後まで完走すること無く時間切れで回収されたり・・・。だから、今回は頑張ってみたいのだ。ゲームの世界だからなのか、自分が練習すればしただけの成果が実感できるから、つい頑張りたくなってしまうのだ。前の時も、やればやっただけ自分の力になっていたのかも知れないけれど、その事に気づけないでオレは死んでしまったんだと思う。それに、そんな事を思わないで今まで生きていた。 「翼君!ストレッチの時は呼吸意識して! 今、ぼーっとしてたでしょ!」 「あ、ごめん!!」 「ほら、外、走りに行くよ~」 そういって、差し出された手を掴んで立ち上がり、スニーカーの紐を結びなおした。周りもストレッチが終わったペアが何組か居て、その後を付いていく様にオレも走りだそうとした。 「あ、翼君。彼らに着いて行っちゃだめだよ!」 「え? なんで??」 「彼らは、翼君よりもタイムが早いから、あれに着いて行くと2周でも持たなくなるよ。だから、翼君は僕に合わせて走ればいいからね」 「おお・・・そうなんだ。 ハルに合わせればいいんだね」 「そう、それが陸上部の練習でもあるしね。今日は楽しく走ろうね!」 「はい!」 心強い~。初心者ランナーにありがちな、周りのペースに吞まれ自分のペースが狂って最後にはスタミナ切れ。そんな事にならない様にサポートしてあげるのが陸上部員の練習で、普段の自分のペースよりも確実に遅い速度で走りつつ、ペアになった生徒のギリギリのラインでペースアップできるようにする事がこの一ヶ月の課題だそうだ。これが上手くいかないと、折角参加してくれた生徒はキツくて練習に来なくなるし、毎年成功した生徒は数名が陸上部にそのまま入部したりする。また、これがきっかけで仲良くなる生徒も何人か毎年出るらしい・・・。なので、大体は3年か2年の先輩と組むのだけど、特別にオレにはハルが付いてくれる事になった。 「ハルは、部活に参加出来ない時ってどうしてるんだ?」 「僕? ジムかなぁ・・・。」 「ジム?」 「なかなか、部活に参加できないからさ。時間があれば走りに行ってるんだ」 そりゃそうか・・・週一の部活で記録なんて保持できないか・・・。高校に入って朝比奈の芸能活動もこれでもセーブしているらしいけど。 「あ、そうだ!翼君も、一緒にどう?」 「へ?」 「相馬のトコのジムだし、確か翼君家の近所にあったはず~」 朝比奈は閃いた!って顔で、言ってきたが・・・オレはそんな真剣に運動がしたい訳じゃないんだけどなぁ・・・。けど、相馬のジムって事は相馬に会えるかも知れない事に、ちょっと期待しちゃうけど。 しかし、朝比奈も相馬もやっぱお金持ちだよなぁ・・・。なんだかんだで黄瀬も親が会社経営している社長令息だし・・・。この学園自体、お金持ちの学校でオレの家も前に比べるとかなりのお金持ちにはなっているが、この学園で言ったら下の方の分類になる。その中でも、相馬の家は財界、政界にもコネクションがある元財閥。相馬は姉弟が居るにも関わらず、そこの次期後継者と囁かれてる。まぁ、エンディングではそのまま後継ぎになってたけど・・・。朝比奈も朝比奈で、父親は有名なデザイナーで母親は芸能事務所の社長だしなぁ・・・。 「相馬に伝えとくね~。」 「え?! いや、オレそこまで運動は・・・」 「うん、体験チケットにしてもうから、体育祭までとか気分転換に使えばいいと思うよ。」 「そっか、それなら行きたいかな。」 「時間が合ったら一緒に行けるとイイネ」 そんな話をしながら、いつの間にか途中で歩く事も無く、外周を走り終える事が出来た。 これなら、ジムでも練習したら当日もっと走れるようになってるかも知れないなぁ・・・。

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