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体育祭(1)

た・楽しい!!!!!!!!!!!!!! 体育祭がこんなに楽しとは思わなかった。このきらめき学園は中等部と高等部があるが、普段は校舎が分かれている為一般生徒の交流はほぼ無い。部活や委員会等で、稀に交流が有る位。その為、体育祭は中等部生徒達からしたら、初めて高等部の先輩達を見る機会になるのだ。なので、高等部がただ入場しただけでも凄い歓声があがる。競技は、クラス対抗で1組~3組で争う。    そんな中でも特に、青桐相馬、朝比奈ハルは格段に凄かった。部活での繋がりなのか、黄瀬も負けてはいなかった。生徒会応援合戦の時は、失神者が数名出る位の盛り上がりを見せた。  生徒会応援合戦は、中等部、高等部の生徒会メンバーが交互にそして最後は両生徒会合同で演舞を魅せてくれる。毎年この生徒会の写真は新聞部の3年・2年が担当するのだが、入部したてのオレが今回相馬の担当になった。 部内で揉めたんじゃないのかと心配にもなったが、生徒会からの要望と相馬本人の意向らしいので、今日は自分の競技以外は相馬に付いて回っていた。 「相馬!! こっち目線!!」 「・・・翼・・・。 撮り過ぎ」 演舞が終わって、生徒会控室で今まで着ていた白い学ラン脱ごうとしていた所を写真に収めようとしていたら、ご本人様よりご意見が・・・笑 タオルを手渡す。朝からずっと付いていたから、なんかマネージャーみたい。脱いだ学ランを受け取り、次の競技予定を確認する。今は、中等部のクラス対抗リレーが行われている。 「あ、ここに居た!」 そう言って、顔を出したのは朝比奈だった。 それに続いて、黄瀬も顔を出した。 「オレも居るよん。」 お昼を一緒に食べようと探してくれたらしい。控え室から、中庭へ移動し 昼食を食べる事になったのだが・・・。ここでも、この三人の人気っぷりを目の当たりにした。中庭に着くまでの間、何人もの中等部の生徒がご自慢のシェフが作った弁当やら、ドリンク。中には、盗撮してくるものもいた。高等部の生徒はそういった類をした生徒の末路を知って居る為、遠巻きで見ているだけだった。  だが、今年は少し様子が違った。  「やっぱ、三人って人気あるんだな~。」 中庭の屋根の有るベンチでお弁当を広げる。 相馬、朝比奈のお弁当は弁当というよりはお重???さすが、お坊ちゃま達。 と言っても、黄瀬のも十分立派な弁当だった。 翼は自分の手作りの弁当だが、前日から仕込んだから揚げの出来は最高。定番のおにぎりと肉巻き握りの味付けもバッチリ。 うん、我ながら良い出来!!しかし、この三人は凄いな・・・。中庭に行くまでの間が人だかりで、一歩歩けば、モーゼの様に道が出来る。だが、それに付いてくる者はいなかった。今も、このベンチの半径5メートル以内には誰も近寄ってこなかった。 「けどさー、相馬。下級生にあの態度は無いんじゃないか??」 奇麗な箸使いで、出汁巻きを食べていた手が一瞬止まるが、相馬はそのまま食べ進めていった。 「・・・。」 さっき、相馬は下級生を叱ったのだ。その後は、見事なまでに無視。 翼が近くに居たのにも関わらず、押しよけて相馬に声を掛けて来た下級生に一瞥し「分を弁えろ」とだけ言って、翼の手を取ってその場を後にしたのだった。その後を、朝比奈と黄瀬も何も言わずについて来ていた。だから、翼は二人の表情には気が付かなかった。その顔を向けられた生徒は、近くに居た生徒に連れられて行ったのも知らない。その後は、下級生達も遠巻きに見るだけで、近寄ってくる事は無かった。 まぁ、押された時はびっくりしてよろけてコケてしまったが、別にあれくらいの事でケガをする訳でも無いので相馬の態度がキツく感じてしまったのだ。 下級生なんだし優しくしてあげればいいのに。そんな安易な考えで、言ってしまった。 それを相馬は反論もせず、聞いている。 ただ、顔には不機嫌を張り付けた居た。先に冷えた笑いと共に、口を開いたのは朝比奈だった。 「あはは。 翼君は優しいね。けど、僕でもあんな風にされたら、同じ事言ってたよ。」 そういって、ベンチの下の翼の膝の方を一瞥した。 うっすらと転んで出来た擦り傷。そんな程度の傷、翼は何とも思っていなかったが、ここに居る三人は違ったのだ。 なんとなく、自分の膝の擦り傷を三人は心配してくれてるのは解ったが、これくらいすぐ治るのになぁ・・・と。けれど、心配してくれてる事は素直に嬉しいから・・・ 「まぁ、オレの為に怒ってくれたのは嬉しいかったよ。」 そういって、から揚げを相馬の弁当と呼ぶには豪華なそれの所に置いた。 朝比奈にも同じように置いたら。黄瀬がこっちをみたので、結局三人にから揚げをおすそ分け。 黄瀬が嬉しそうに八重歯を覗かせて「うまーい!」って言った事で、その場の空気が和らいだのは良かったかも知れない。 天気は快晴。日差しは強いが、吹く風は心地が良い。中庭での昼食は少々の気まずさはあったけど、十分楽しかった。 ・・・・・・・・・・・・・・ 「え? 中庭に彼らは行ったのかい?」 「その様です。」 「で、その生徒は?」 「はい。中等部の方には連絡済みですので、来週中には手続きが済むと思います。」 毎年、中等部に入学したての子達が、図らずとも何人かの生徒は問題を起こしてしまうのだ。それを避ける為に、人気の有る生徒は隔離された場所での昼食を取る事が通例となってい居た。あの二人に至っては、中等部入学時から一般生徒の立ち入らない室内で昼食を取っていたのだが、それを今年は、共有エリアの中庭で取ったのだ。 きっと、今年外部入学してきた彼の為だろう。 入学式の時の印象は、普通の冴えなそうな普通の男子高校生。 唯一目を引くと言えば、あのエメラルドの瞳だろうか?  それでも、何故彼が其処まで興味を持つのかわからない。何度か、生徒会室で勉強を教わっている姿を見かけたが・・・、それでも私の中の印象は変らなかった。ただ、彼らの扱いは少しずつ変わっている様に思えた。 特に、青の王子と密かに呼ばれている彼の執着には少し驚いた。この学園の殆どは彼の家業に何かしら関りを持っている。故に、彼へ反抗するものは家そのものの存在が危ぶまれる事になる。実際、中等部に入部した当初は色々と善からぬ事を企てた先輩、先生方は語るのも悍ましい末路を辿ったと聞いている・・・。 ふむ・・・ 少し、彼に私も興味が沸いて来た・・・。 きっと、彼の周りには面白い事が起こるのだろ。 ふふふ・・・ 差し込まれた陽の光に、透き通る銀色の髪をした彼はまるで猫の様にその金色の目を細めながら、窓の外に見えるベンチを眺めた。

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