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体育祭(2)

午後は、ついに自主練の成果をみせるべく、クラスリレーと障害物走!! 昼食の気まずい空気も、午後の競技が始まったら少し和らいだ。 バンッ!! 「「次、頑張っろ!!」」 朝比奈と黄瀬に、背中に喝を入れて自分たちのクラスに戻っていた。 絶対、今の背中に紅葉出来てる!!けど、こういうのも初めてで、なんか嬉しい・・・。 「おう! 頑張る!」 ふと、隣を見上げると、相馬と目が合った。 ん?その手はなんだ!?・・・まさか・・・・。それはちょっと、いや・・・ ホント、無理!!!  「そ、相馬はやるなよ!」 ガシッ!! 降り降ろされそうになった手を思わず掴んでしまった。 いやいや、そんな思いっきり振り上げられたら、紅葉どころじゃないだろ!? 二人の真似をしようと、手を振上げたものの、まさか・・・自分の手を掴まれるとは思っていなかった、相馬は今までで一番レアな顔になった。!! レア顔!!ヤバッ!!! 思わず、二人とも手を掴んだまま見つめあった形で固まってしまったが 先に、正気に戻った相馬が今度は指を絡めて来た。 えッ??!な、何が起きてるんだ!?? まって、顔近い!! 耳元でイケボ!ちょっと待ってください。思考が追いつきません。耳が・・・ 意識しないように、顔から視線を逸らそうとしたら今度は絡められた指の感触が!! 思わず、視線が絡められて指に意識が向いてしまった・・・ それを揶揄う様に、翼の指をなぞって離れた。 「次、頑張ろうな。」 「は、はいぃぃ・・・!!」 コクコクコク 思わす壊れた玩具の様に首振ってしまう。 ひぃ!!!!!!!!! こ、腰が抜けそう・・・。 イケメン怖!!!  けど、昼食の変な空気は今度は奇麗に感じなくなった。 先に進んで行った背中を急いで追いかける。 そんな二人が向かった方向とは反対の物陰から走っていく人物に気づく事は無かった。 クラスリレーの順番がやってきた。 クラスリレーは体育授業の測定順に走る事に。自分の番は10番目。相馬と朝比奈、黄瀬は最終走者。合同練習の時は、勝率は五分五分。リレーはクラスのバトン渡しが、勝敗を決める部分が大きい。 練習の時も、バトンを落としたり、転んだり・・・。 それでも、毎回相馬は巻き返してくれる事も多かった。 最終走者は二周。自分の番で絶対転ばない様にしないと!! 折角、自主練までやったんだから頑張らないと!!! リレーの結果は 一位:朝比奈 二位:相馬 三位:黄瀬  バトン渡しで案の定、うちのクラスはミスが何回か有った。それでも、相馬は朝比奈に追いついて、最終コーナーの直前で一瞬二人が並んだ。その時の歓声は凄かった。黄瀬のクラスは転倒した子が居たから、巻き返すには少し無理があった。それでも、一周以上離れていたのを僅差まで縮めてゴールしてた。 「負けたー!!」 退場門の所で、黄瀬が悔しそうに朝比奈に声を掛けていた。 「まぁ、うちのクラスはノーミスだったしね~」 ふふん♪ちょっと誇らしげに言ってる姿に思わず、笑ってしまいそうになる。 朝比奈はやっぱり、可愛い。相馬や黄瀬は、どちらかと言えば男らしい分類に入るが、朝比奈は元々ジュニアモデルの時は女の子の服も着たりもしていた。 今は、身長も伸び体つきは女性よりはがっしりとしているが、相馬や黄瀬に比べるとやはり華奢なのが目立つ。 普段は、澄ました顔をしている事が多いが、素の表情をすると印象はガラリと変わって、一気に幼く見える。 そんな二人のやり取りを、遠巻きに見てるクラスメイトも何人か居た。だが、次の競技の為に退場門から早く移動する様に促す放送が流れた。その放送に促されるまま、クラス待機席まで人の流れに乗っていこうとしたら、後ろから腕を掴まれた。 振り返ると、相馬だった。 「相馬もお疲れさま! バトンミスがやっぱ響いたな。」 「いや、俺がもう少し早く走れれば・・・」 「そんな事無いって・・・それなら、オレだってもっと早ければ・・・」 自分が悪いと言う相馬に、慌ててそんな事は無いとフォローしてしまう。クラスリレーだし、最後アンカーだったからって勝敗の責任なんて誰にもない。 なのに、相馬は食い下がってきた。 「団体戦なんてそんなもんだろ?」 これ以上の押し問答もどうなんだと言う、気分になってきたから思わず言ってしまった。 その瞬間、掴まれたままの腕を引き寄せられて。耳元で囁かれた。 「けど、翼は俺の勝ちを期待してただろ?」 へ!? 今、何が?!何が起きてるんだ???  クラスメイトはもう、自分達の待機場へ戻ってるし、朝比奈も黄瀬もいつの間にかいないし。あれ??待って、なんでこんな通路の端っこに?!! ええええ??なんだ! けれど、確かにどこかで、相馬が一位になる事を期待はしていた。 相馬だったら、一位になるもんだと思っていた。 その事を指摘されて、ちょっと恥ずかしかった。 バトンミスをしてしまったのは、翼の前の生徒だった。 その時にすでに、朝比奈のクラスには大きく差をつけられていた。 そして、差の付いたまま自分にバトンが渡されたのだ。今更、自分が頑張ったところで、差が縮む事は無いと思って無意識に手を抜いてしまったのだ。最後、相馬なら何とかしてくれるだろうって・・・。それを、相馬は見抜いて今自分を責めてるんだと翼は思った。きっと、クラスメイトの大半は翼と同じ気持ちだっただろう。明らかに、前半と後半の走者の走りが練習とは違ったのも居た。 「・・・ごめん。そんなつもりは・・・。」 相馬に全部押し付けてた。 「・・・次は勝つぞ。」 軽く頭をポンポンとされて、ちょっとくすぐったい。 今度こそ全力で頑張ろうと翼は決意を新たにした。 次の競技は、障害物走。色々な障害物をクリアして、最後は100Mこ直線を走ってゴールする競技。これなら、ある程度運動が苦手でも、逆転が狙えると思って選んだのだけど・・・・・・ ハードルを飛んで、ネットを潜って、顔がを小麦粉だらけにして飴を探し ランダムに散らばった紙を一枚 そこで、悩んでしまった。 ーーーー 気になる人 とそのままゴールしなさい ------ 気になる人・・・。 気になる・・・どんな意味で!?!!  や、ヤバイ。周りがどんどん目的のモノなり人なりを目指して行ってる・・・ どうしよう・・・ 「翼!!!」 良く通る声が、自分を呼んだ。 あーーーーー、もう! 言い訳は適当に考えよう!!! 「相馬!!」 自分を呼んだ方へと、向かって走って行こうとした時 自分の足に縺れて転んでしまった。 い、痛い・・・。 ぷっ・・・。 それまで、応援や目的物を探す声で騒がしかったグランドに一瞬静寂が訪れた次の瞬間には笑い声に包まれた。 は、恥ずかしい・・・。 このまま地面と同化したい・・・。 中々、起き上がれないで居ると手が差し出された。 「ほら、俺で良いのか?」 差し出した手の主は、笑いを堪えてるのか顔を逸らしつつも翼を起こしてくれた。翼の顔は真っ白だったのが、今度は所々茶色く土がついていた。 軽く、体に着いた土を払って、ゴールに向かって走ろうとした時 ッつ!!え?! 翼の体が浮いた。 ついでとばかり、顔の汚れを相馬の手で拭われる。 「ええ?!」 その瞬間、悲鳴の様な歓声の様な・・・声が上がった。 ちょ!!え?? こ、これは所謂・・・、お姫様抱っこか!!!?! 「っちょ! 相馬、恥ずかしいんだけど!!」 り、理解が追いつかない。なんでこんな事に・・・ パニックになってると、今度は悪戯が成功した様な顔で囁かれる。 ああ、イケメン・・・って!! 「折角だから、劇的だろ?」 ひぃー!! 誰だよ、相馬が無表情とか言った奴!!! もう、尊すぎぎて心臓痛い!!! 恥ずかしすぎる!! ってか、オレこれでも60キロ以上有るのに・・・。 は、速い!ちょっと、怖いんですけど!! 思わず、相馬の上着を掴んでしまう。その仕草に、キュンって音がどこからか聞こえた気がしたのは、気のせい?? 放送部も相馬に便乗して、面白可笑しく実況をしたりするから、抱きかかえられて、最下位でゴールしたにも関わらず歓声がわき沸き上がった。 最下位・・・。まぁ、あの時迷った所為というよりは転んだ所為だな・・・。 「なんか、相馬悪いな・・・。」 掴んでた手に思わず、力が入る。そのまま・・・俯いてしまった。 なんか、申し訳なくて相馬の顔が見れない・・・。 こんなパフォーマンスまでしてくれたのに、最下位とか・・・。

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