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体育祭(3)

前の時もだ・・・。 いざって時に、何も出来ない。転生前も今も・・・。 なんで、こうなんだろ・・・。 あんなに、自主練だってしたのに。 つん つんつん・・・ ・・・・。ちょっと・・・旋毛押すの止めて。 つん! 反射的に顔を上げたら、相馬の顔が・・・ち、近っ!!!!!!!!!!! そ、そうだ!!オレ、もしかしてまだ・・・・・・・・・ ひぃ!! お姫様抱っこサレテマシターーーーーーーーーー!!!! 「お、降りるよ!! 重いだろ?!」 慌てて、降りようとすると、逆に危ないと言われ大人しくする。 「待て、暴れるな・・・。」 そう言って、ゆっくりと椅子に降ろされた。 あれ?いつの間に??  ここ、保健室? 「足、見せてみな。」 そう言われて、気が付いた。 さっき転んだ時に、どうやら膝小僧を怪我していたらしい。 慣れた手つきで、手当をしてされ膝に大きめのガーゼを貼ったあと、足首を掴まれ、左右に動かされた。 え? いたっ!! 「やっぱり・・・。」 今度は、足首に湿布を貼って、テーピングで固定された。 「・・・気が付かなかった・・・。」 転んだ時にどうやら、軽く足を捻っていたらしい。 さっき、一瞬違和感を感じたのはこれだったのかぁ・・・。 「これで、歩けそうか?」 相馬に見上げられる。 ・・・このアングルってレアだな。 自分よりも背の高い相馬を見上げる事はあっても、相馬に見上げられる事は無い。いや・・・スチルで有ったか?? 吸い込まれるような蒼い瞳。スッと通った鼻梁。自分よりも、少し薄めの唇。 其処から覗く、艶やかな紅に、発せられる声…すべてが完璧過ぎる。 翼は、自分に伸びてきている手に気が付かない。 このまま、ずっと見ていたい・・・ そう思った時 『選手の呼び出しを致します!!! 1年1組 青桐相馬 次の競技が始まるので至急グランドまで集合してください』 「あ!! 相馬、行かないと!!」 校内放送が流れたスピーカー思わず、顔が向いた。 伸びていた手が、急に顔を逸らされた事で行き場を失った。 「・・・。そうだな。」はぁ・・・。 「相馬?? どうかしたか?」 「・・・また、運んでやろうか?」 あ、これは揶揄ってますね。ハイ。悪そうな顔になってますよ?相馬さん。 「結構です。相馬のおかげで歩けそうだから、先に行ってて。」 「わかった。」 そう言って、保健室のドアを開けたタイミングで朝比奈が入って来た。 「僕が翼君をちゃんと連れて行くから安心して~。」 二人の中で通じ合うのか、アイコンタクトを交わして相馬はグランドへ走って行った。朝比奈に肩を借りて、グランドへ戻ると新聞部の部長が見た事も無い笑顔で出迎えてくれた。 「ぐふふ。佐々木く~ん。ホント、君は良い仕事してくれるねぇ~。うふふふ。あ、今からの競技の写真は、田貫君にお願いしてあるから、ゆっくり応援してあげなね~。」 言うだけ言って、部長は自分の持ち場へ戻って行った。 そっか、相馬の個人戦は田貫先輩が写真撮ってくれるのか・・・。 近くで見たかったなぁ・・・。 「ゴール横に連れて行こうか?」 「良いのか?」 「もちろん。 僕も見たいしね~。」 朝比奈に肩を借りてそのままゴール横側まで移動する。 体育祭最後の種目は学年対抗リレー。中等部、高等部の1年から3年の全クラスから一人ずつ陸上部以外の選手が選ばれ、相馬は全学年のアンカーだった。 同じ様に、3組のアンカーは黄瀬だった。  このまま、黄瀬が一位だと、優勝は3組。相馬が勝てば、1組が優勝。 今、バトンは中等部のアンカーが高等部へと渡された。 徐々に、生徒達の応援も白熱してくる。 いよいよ、相馬がコースに出る。 「ねぇ、翼君。 さっきのお題はなんだったの?」 「え?」 一緒にコースを見ていた朝比奈が耳打ちしてきた。 何を聞かれたのか、一瞬理解が追い付かなかった。その時、相馬と目が合った気がして、顔が赤くなってしまった。 その隣で、若干顔色の悪くなったのが一人・・・。 ただ、それに気が付く前に先に黄瀬にバトンが渡った!! 一気に会場の応援が大きくなった。 相馬にバトンが渡ったのだ。少し黄瀬が先行してそのまま逃げ切るか・・・ コーナーで、追いついた! 「相馬! 頑張れ!!!!」 思わず、そう声を出していた。直前で、二人並んだ。先にゴールテープを切るのはどっち・・・ 翼の目の前のゴールテープを余裕の顔で切ったのは、相馬だった。 その瞬間に歓声が起こった!! 「相馬!凄い!! 黄瀬も凄かったよ!!」 「相馬、お疲れ~。 あーあ、リョウ負けちゃったか~。」 朝比奈と一緒に、ゴールした二人の元に駆け寄って行った。 相馬がこっちに気が付くと、手を振ってくれた。 「言っただろ? 次は、勝つって。」 そう言って、向けられた顔に今日一番の歓声が上がった。 その声に紛れて、シャッター音は掻き消されていた・・・。

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