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一族 (2)

八月朔日の家に通う様になり、リオを前当主に紹介された時は自分の人生は祖父が決めるモノだと、漠然と思っていた。 だから、なんとも思わなかった。 許嫁と祖父が認めれば、そうなんだろうと・・・。 だが、姉が成人を迎えた時に父が自分の子供達には自分で将来の相手を選ばせると、一族の前で宣言したのだ。その事に、祖父も同意をした。 そこから、自分の中でのリオに対する感情を考え距離を置いたのだが・・・ 「暑苦しい。離れろ。」 「えー、やだ♪ そーま君と会えるの久しぶりなんだもん、いいじゃーん」 「そーだそーだ! リオがかわいそーだろ! ・・・いたっ!!」 「・・・。恭二。」 恭一に耳を引っ張られ、黙らされる恭二。 この二人は、リオのお目付け役兼護衛の役目として、常にリオと行動を共にしている。 それも、幼い頃相馬の許嫁候補と勝手な判断をした不届き者に誘拐される様な事が多発した事から、分家の一つから選ばれリオと共に育てられたのだった。 リオにとっては、二人は兄の様な存在だった。 彼らの家は、分家と言っても八月朔日家の方の末に位置し 護衛業など生業にし、その中でもこの二人はリオと歳が近い事もアリ、八月朔日家に住み込みでリオが幼い頃から側にいた。 相馬とも、付き合いは長い。その所為か、恭二は友人の様な話し方で接してくるが、恭一はある日を境に青桐家時期当主候補として相馬を扱う様になった。 腕にリオが巻き付いたまま、会場へに着くと 今日の主役の二人が出迎えてくれた。 「相馬様、本日は私達の為にこの様な式にご出席頂きありがとうございます。」 手が差し出された 彼等とは、直接の面識は無い。けれど、彼の研究している分野には興味が合った。今後の時代を大きく変えるモノとなる。 「この度は、ご結婚おめでとうございます。」 差し出された手を握り返した。 「論文、研究データー見させて頂きました。臨床実験まで早く持っていける事を、楽しみにしています。」 テンプレ通りのお祝いを伝え、祖父からの祝いの品としてこの二人の研究費を支援する事を決定したと伝え、会場内へ入っていった。 リオと二人も、主役の二人にお祝いを告げ会場内へと相馬について入っていった。 一度離れたと思った、リオがまた腕にまとわりつき、意外そうな顔でつぶやいた・・・ 「そーま君のおじいさん、あの人達にお金出す事にしたんだ・・・。」 「・・・。」 一族へのお披露目を兼ねての、この式は堅苦しいモノでしか無かった。 場内に入るや、我先にと挨拶をしようとする人だかりが出来た。 中には懲りない輩は、自分の娘や息子を使って取り入ろうと・・・ 「うわぁ~。みんな、そーま君に取り入ろうと必死~。」 相馬の腕にまたリオがまとわりつく。それと同時に群がっていた輩は退いて行った。 まぁ、この会場内で八月朔日家よりの上位家は数家。 陰で、リオの事の陰口を言う者はいても、表立って対決しようとするものは居なかった。おかげで、他が近寄っては来なくなってきた・・・。 ホント、こいつら・・・。ここにいる人間は、自分の事など見てないのだろう・・・。自分の後ろに見える、青桐家の金と地位、権力その恩恵に少しでも肖ろうと群がっている蟻だな。 今日の主役の彼らの事を心から祝っているものなんてこの一族の中に居るのだろうか? 祖父が研究費用を援助すると決まった時から、彼らの周りが変わった。それは、彼にとって良かったのだろうか?? はぁ・・・、きっとあいつならこんな式でも祝ってあげれるんだろう。

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