67 / 208

問題・・・解決?

案の定、今日の授業は集中出来なかった・・・。さっきの授業のノートも相馬は貸してくれた。 「・・・ごめん。すぐ写して返すから。」 「・・・構わないが、何かあったのか?」 何か・・・何かと言われると・・・何と言い難い・・・。相馬の態度が気になる・・・というか・・・。なんというか・・・。 「・・・自分の問題かな?」 微妙な空気が流れた。いや、だって・・・なんて言えと?? 自分の立場で、そんな事言えないし・・・。 「・・・そうか。話なら聞くから・・・。」 「・・・うん。」 相馬に聞けば良いんだろうけど・・・。聞いて、オレはどうするんだ? いちいち、相手の態度に一喜一憂して・・・。 はぁ・・・ 「どうかした?」 「あ・・・いや・・・。」 コーヒーを手渡される。PCの前の指定席に部長が座った。 その隣に田貫も座った。相馬にノートを借り、カメラを受け取りに部室に寄ったのだが・・・。ノートを写す気にもなれず、部長に手渡されたコーヒーに口を口を付けた。珍しく、田貫が話しかけて来た。 「足の具合はもうすっかり良さそうだね。」 「あ・・・それは、もう。」 「いやー、あの時の青桐君凄かったね!! はい、あの時の写真どうぞ!」 そう言って手渡された写真は、携帯に送られてきた写真だった。 ぐッ!! は、鼻からコーヒー出るかと思った。 「これ・・・。」 「僕が取ったんだよ~。良い出来でしょ!しかし、あの王子もやる事が派手だよね・・・・!」 「お、王子?」 「!! やば・・・」 「田貫君・・・。」 田貫が、青ざめた顔で部長の方を見る。王子って・・・相馬の事か!・・・そういえば、なんかそんな二つ名があった様な・・・。 ゲーム中、青の王子、赤の姫であの二人が呼ばれていたけど・・・。 あれ?? 誰も今はそんな通り名で呼んで無いよな?? 「佐々木君!僕が言った事は忘れて欲しい!!」 「え??何でですか? 青の王子に赤の姫ですよね??」 「ひぃ!!!!!!!!」 田貫と部長の顔色が、色を無くした。 「え?! なんで、そんな・・・」 「前に、その名で読んだ取り巻きたちは・・・皆・・・・」 「ええ??!」 田貫が言いにくそうに、口を開くと、続きを部長が話してくれた。 「いい?この事は絶対、僕達から聞いたって言わないでよ!?」 部長の真剣な表情に気圧され激しく頷くと、話始めてくれた。 中等部に入るなり、青桐相馬に心酔する者が王子と呼び。その外見と対応の冷徹さから、青の王子。朝比奈ハルの外見の愛らしさに姫と呼び。その見た目と青桐と一緒に居る事から、赤の姫と・・・。ただ、それだけであれば本人達も静観していたのだが、その派閥同士が優劣をつけようと争いだし、また本人達にもその事を強要する様になった。そんな中、王子派の派閥が朝比奈を物理的に従えさせようとした事が青桐の逆鱗に触れた。その後、両派閥を仕切っていた者達を学園で見たものは居なかった・・・。 「・・・なるほど。けど、王子ってなんか似合う。」 「・・・まぁ、陰では未だにそう思ってる生徒も居るんだけどね。」 そう言いながら、田貫がコーヒーのお替りをくれた。 「まぁ、朝日奈が姫って呼ばれるのも、青桐が決まった相手が居なかったせいも有るんだけどな。」 新しいコーヒーに口を付けながら部長が言った。 その内容に、翼の心が跳ねた。 「え? それって・・・。」 「青桐の父親が、子供たちには自由に恋愛をして欲しいとかで、許嫁とか政略結婚はさせないって話らしいよ。」 「だから、幼馴染の朝比奈がいつも側にいるから、そうなんじゃ無いかってなったんですよね。」 「そうそう。まぁ、虫除けにお互い利用してる感じだったけどねぇ・・・。って、佐々木君どうかした??」 「え?」 「いや、なんか嬉しそうな顔してるけど・・・?」 思わず、顔に手を当てる。無意識ににやけてしまっていたらしい。 許嫁は居ない。その事に嬉しくなった。 「なんだぁ~?? 佐々木君、王子がフリーなのが嬉しのかぁ~。」 田貫に腕を突っつかれる。 「ちょ! そんなんじゃ・・・。」 無自覚なのか、熟したトマトの様に赤くなってるのに、一生懸命否定を首を左右に振るその姿を見て、余程鈍感な人以外は気が付くだろう。 「「・・・。」」((その顔で・・・それは無理あるって)) 二人は無言で、手元のコーヒーを飲んだ。 「ってか・・・、王子のあの顔みてれば・・・ごほっ!!」 田貫が言いかけた所を、部長の肘が横腹にクリティカルヒット!! 「!!? だ、大丈夫ですか!?」 「だ、だいじょぶ・・・。」 涙目で、横腹を押さえながら部長を見る。 (死にたいのか?) (す、すません!! 止めて頂いて、ありがとうございます。) 二人が、アイコンタクトを取る。 そして、思い出したように部長が手帳を出した。 「あ、そういえばサッカーと弓道の大会が夏休みにあるんだけど、佐々木君は予定開いてるかな?」 「え?! そうなんですか!! 」 「そーだよー。 サッカーは順調に勝ち進んでるみたいだし、弓道の方は個人で今年も青桐出るだろうし・・・」 「ただ、期末で補講とかなる様だったら撮影は許可できないから!」 「!!」 思わず、カバンを抱きしめてしまう。 この部長は一体どこまで解ってるんだろう?? 部室にも本当は寄らないで帰ろうと思っていたのだが、教室を出た所で部長に出くわし今に至るわけだが・・・。今日一日モヤモヤしていた気持ちは晴れ。夏休み中も、相馬に会える口実が出来た。 

ともだちにシェアしよう!