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天然故に・・・
モヤモヤしたのが晴れた所為か、あの後部室でノートを全部、映し終える事が出来た。夏が近づいてる所為か、まだ日が落ち切っていなかった。
日が落ちると矢が見えなくなるので、冬の間は早めに部活が終わってしまうが今日は、まだ弓道場から矢を射る音が聞こえて来た。
規則正しく射られる矢の音。道場を覗くと、真剣な顔で的を見つめる相馬。
空を切る音が心地いい。
「・・・入っていいよ。」
「ごめん。邪魔した?」
入り口から、顔を出すと相馬がこっちを向いた。
「いや、もう止めるところだったから・・・。どうかした?」
中に入る様に促され、中に入ると。相馬に顔を覗きこまれた。
「な、なにが?!」
いきなりのドアップに照れてしまいながらも、一歩後ろに思わず下がってしまった。入り口の段差に、踵から滑って後ろに倒れそうになった。
「!!」
「うわっ!!」倒れる!!
そう思い、次に来る固い衝撃に目を瞑るが・・・
一向に、来ると思った衝撃は来なかった。その代わりに、そこそこ固いが安心感のある衝撃が・・・その正体が、相馬の胸板と言うことに、急な事過ぎて、気が付くまで少し時間が掛かった。
「・・・っえ!?」
「翼、大丈夫か??」
相馬の腕にの中にすっぽりと納まった状態で、顔を覗きこまれる。
え??? なんだこれ??どういう状態ですか??
「足、まだ痛むのか?」
「え? あ、ううん。大丈夫・・・」
顔があげれません。思わず、下を向いてしまう。
「・・・翼?」
「あ、あの・・・離して欲しい・・で・・す・・。」
「・・・嫌だ。」
「ええ!?」
いやいや、そこは離そうよ!?もうね、心臓が痛い位バクバクしてる訳ですよ??そこの所、わかって頂けませんかね? こんなハイスペックなイケメン様に抱き留められてるオレ!こんなの誰かに見られたら、オレ刺されるんじゃ・・・って、あれ??他の部員さん達がいない事に今更だが気が付いた。
「あれ?他の部員は??」
「さっき帰った」
そっか。とりあえず刺される心配は無くなった・・・って!!!相馬、離し・・・・
「うわっ!!」
ドン
見上げると相馬の顔が、思った以上に近くにあった事に驚いて思わず突き飛ばしてしまった。び、びっくりした・・・。
相馬って、結構距離近いんだよなぁ・・・。顔面が強すぎて心臓が持たないっての!
「あ、ゴメン。 ちょっと驚いて・・・。」
「・・・、翼って、結構オレの顔にびっくりしてるよな? オレの顔ってそんなに逃げたくなる位、驚く顔?」
「え?? いや・・・、そんな事は無いけど。」
「なら、なんでいつも翼は逃げるのかな?」
確かに、相馬のイケメンすぎる顔に慣れなくて、見つめるとどうしたらいいのかわからなくなるし、居た堪れないから避けちゃうけど、相馬にしたら結構傷付くよな・・・。
「ご、ゴメン!! オレ失礼な奴だったな!!相馬が余りにも格好良いから、慣れなくて、つい・・・」
って!! オレ何言ってんの!?馬鹿なのオレ?!!は、恥ずかしい!!
まさか面と向かって格好良いから慣れないなんて言われるとは思っていなかった相馬も、面食らった顔になった。
「・・・そしたら、早く慣れろ・・・」
オデコを突っつかれる
「お、おう!!」
「着替えてくるけど・・・」
「下駄箱で待ってます!!」
前に着替えをガン見してしまった事を思い出し、今日は下駄箱で待つ事にした。
はぁ・・・
一人残った部室で着替えながら、思わずため息が漏れた・・・
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