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八月朔日 莉緒 (4)(青桐相馬 視点)
朝に澄んだ空気の中
空を切る音が心地よく響く
ふぅ・・・
やっぱり、この道場の独特の空気感は心が落ち着く。
自分と唯一向き合える場。
「・・・少しは上達した様だな・・・。」
いつの間に・・・
その声に振り向くとそこには、相馬が師と仰ぐ男が立っていた。
「ご無沙汰しております。」
頭を下げ一礼と共に挨拶をしようとするが、静止され
相馬は顔を上げた。
「よいよい。堅苦しい挨拶などいい。 むしろ、こちらから挨拶をしに行かねばならぬ立場ゆえ・・・。」
「・・・。もう、御身体は宜しいのですか?」
「ああ、心配をかけたな・・・。」
「・・・いえ・・・。」
「しかし、随分と感情的な矢を射る様になったのう・・・。」
「・・・・」
「・・・莉緒の・・・いや・・・爺の世迷い事・・・聞かなかった事にしてくれ。」
相馬が一礼をするとそのまま、老師は弓道場を後にした。
矢取りをしてると、黒髪をツインテールにし水色のリボンを結んだリオが今度は弓道場に入ってきた。
「そーま君、ここにいたんだ。」
頭のリボンに合わせた、水色のワンピースを風に揺らしながら、相馬に近づいてきた。
「・・・、今日は調子が良さそうだな。」
「うん!! だから、今日はお出かけしたい~。」
「ああ。 おい、聞いてただろ。 後は頼んだ。」
「畏まりました。」
後ろに控えていた、恭一と恭二に相馬は命令し、リオは相馬の腕に身体を寄せ母屋の方へと向かっていった。
「恭一、リオの奴、嬉しそうで良かったな!」
恭二は自分の事の様に喜びながら、恭一を見たが、恭一の表情は恭二とは違っていた。
「・・・そうだな。」
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