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八月朔日 莉緒 (6) (八月朔日 莉緒 視点)
あの映画の後から、そうまくんの様子が変わった。
いや・・・
あの事があってから、彼の自分に対する態度は変っていた事には気が付いていた
この学園に本来は通うつもりは無かった。けれど、継母の二人目の妊娠と継兄弟のお披露目が重なったからと、こっちに戻ってきたのだ。
僕の時と違い、弟の舞は父譲りの出来だった。
僕は、父に舞を稽古してもらう事は未だに無い。
あの事件以降、父も、祖父も僕には何も期待していないのだろう・・・。
弟は、僕と違い体格にも恵まれている。
まだ、幼いながらにバランスの良い手足。それを柔軟に操れる筋肉。
僕の欲するモノ全てを持っている。
けど、弟の事は憎いと思った事は無かった。 あの事件のきっかけにはなったのかも知れないが、またこうして彼が居てくれるのもこの弟のお披露目があったからだし・・・
そのタイミングで、継母の妊娠。
そして、祖父が倒れたのだった。
祖父が倒れたのは表向き、過労となっている。けど、祖父の常用していた薬が何者かにすり替えられていた事を僕は知っている。
まるで、弟を妊娠していた継母の時の様に・・・。
そして、僕に届いた写真。
そんな全てのタイミングが重なったおかげで、今 相馬君は僕の側にいる。
また、同じ事件を繰り返さない様にと、本家からのお目付け役としてだろうと僕には関係ない。
けれど、あいつに対しての彼の態度が・・・
視線が、あの頃には無かった意思を持っている事に気が付いてしまったのだ。
あの体育祭の時も・・・
弓道場へ見学に行った時も・・・
彼がその腕に抱いていたのは、あいつだった。
僕の嫌いな色を綺麗と言ったあいつ
真っ直ぐと人を見つめるその瞳は僕の様な汚いモノなんて見た事無いんだろうね。
気に入らない。
「ねぇ、恭一!! あいつ、邪魔なんだけど!! 二度とそうまくんの前に出れない様にしてよ!!!!!!」
「・・・畏まりました。リオの望むままに・・・」
鏡越しに命令すると
そう、一礼して恭一は部屋から出て行った。
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