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莉緒とリオ(2)(恭一 視点)
自分達が、八月朔日の家に来た時には既にあの男は莉緒に一番近い場所に居た。
その時は、まだ胡散臭い奴とだけしか自分は感じていなかった。
それに、莉緒自身も相馬に見て貰えていた事を支えに、あの男の稽古にも真剣に取り組んでいた。
莉緒の母親は、芸能とは無縁の普通の家柄の女だった。
八月朔日の限家元との出会いは、病院で。弟子に付き添い出向いた先で、入院していた莉緒の母に一目惚れをした家元が、口説きに口説き落とした末に結ばれ出来たのが莉緒だったのだが・・・。
伝統を重んじる家柄の嫁として、世継ぎの母としての重圧
それらが、元々体の弱かった莉緒の母の寿命を縮めていったのだった。
そんな母にそっくりな莉緒の髪の色は、家元の心を見る度に締め付けていたのだった。
自分が愛さなければ、愛した女を死なせずに済んだのに・・・
自分が子供を欲しがらなければ、彼女を苦しめる事も無かったのに・・・
そうやって、莉緒の母親が死んでから家元は莉緒と向き合う事に理由をつけては逃げていった。
自分が母親譲りの髪の色な事に、父が酷く悲しい目を向けていた事に幼いながらも莉緒は気が付いていたのだった。
元々、莉緒の母親の事を八月朔日の一族は良くは思っていなかった。
身体が弱い事もだが、母親に異国の血が入っている事にも難色を示していたのだ。
だが、莉緒が生まれた。 世継ぎとなる男の子。
しかし、成長するにつれ莉緒は、父親ではなく母親に似ていく一方で母親はどんどんと弱っていき、莉緒を産んで間もなく亡くなってしまったのだ。
その頃から、八月朔日家に新しい女が出入りするようになっていた。
莉緒はまだ幼く、気が付かなかったのだろうけど・・・
そんな中、莉緒の伯父は副業として行っていた事業に失敗した。
そして莉緒を担ぎだしたのだ。後妻を娶った事で、莉緒の存在を持て余し始めた事もあり、伯父が莉緒を利用しようとしていたのに気が付いていたが見て見ぬ振りをしていたのだ。
また、タイミング悪く後妻の妊娠そして子供の性別が発覚した。
その頃から、莉緒の周囲では異変が起きる様になった。
まるで、莉緒が犯人かの様に・・・。
それでも、莉緒は疑う事無く、あの男を信じた。
全ては伯父が裏で糸を引いていたのも知らず・・・。
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