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田中でございます。

相馬様は幼い頃から、大変聡い子でした。 それ故に、他の御兄弟達を差し置いてご本人は青桐家を継ぐ御積りは無かった。 ですが、青桐家当主、青桐総一郎様は違うお考えの様で、幼い相馬様を色々な所へとお連れになっては、その都度ご本人に判断させる事が多々ありました。それが、当主としてのお考えとなれば、誰も逆らう者は青桐家には居ません。 そんな中、唯一 相馬様の御自由に出来る事が、伴侶となる方を決める事。 相馬様の御父様、私達の旦那様が自分達の子供の為にと、当主である総一郎様へご自分が当主の座には着かない事を条件に認めさせた事でした。 元々、総一郎様は相馬様の資質を見抜いていた所もあったのでしょうが・・・、その点については特に反対をする事無く他の御兄弟の方々もご自分で御相手を見つけている様なので旦那様のお考えは正しかったのかも知れません。 ですが、それが故にあの八月朔日莉緒様の件は、旦那様も心を痛めてしまいました。 相馬様もあの事件以降、ご自分のモノには目印をお付けになる様になりました。 初めの頃は、私や屋敷の者達に付けていましたが、それも段々と親しい者と認めた方々へと厳選される様になられて・・・ 高等部へ上がられて、あの方に出会われて、相馬様は少し変わられました。 なのに・・・、また・・・ あの八月朔日の家は・・・ けれど、今回の件もまた、総一郎様はあの時の様に相馬様に一任させる御積りの様で・・・。 相馬様にお仕えしている身としては、心苦しい所もありますが・・・、これも青桐家次期当主としての試練だとすると、私如きが心配するのも野暮な事なのでしょう。  そんな相馬様の手助けを私めは、助力ながらさせて頂く迄でございます。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「相馬様の体調などはご心配いりませんので、ご安心ください。」 そう言って私は、相馬様の事を気に掛けて居て下さっている方々へ 手作り弁当をお届けしたのでした。

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