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弓道大会・予選 

「そーまくん! 頑張ってね!応援してるから♡」 「・・・気が散る。」 道着に着替え、控室に向かう時もリオはついてきては、いつも以上に今日は騒がしかった。 周りからの視線も冷たく向けられていた そんな空気を察したのか、恭二と恭一は観客席へと連れて行こうと宥めていた。 「ほら、リオ! 他の人にも迷惑だから、あっちで見ような!」 「リオ様、お席を用意してますので移動しましょう。」 「やだやだぁ~!!! そーま君と行くの~!!」 そう言って、相馬の腕に絡みつこうと伸ばした手は、冷たく振り払われた。 「リオ、いい加減にしろ。」 ひゅツ・・・ 思わず、リオの喉が恐怖で鳴った 冷たく射ぬく様な目で、相馬がリオを一瞥し控室へと進んで行った。 相馬の姿が見えなくなった途端、リオは足元から崩れる様にしゃがみ込んでしまった。 恭一と恭二は両側から抱える様にして、観覧席までリオを連れて行った。 「り、リオ様。大丈夫ですか!?」 顔面蒼白になってる、リオを観覧席に座らせ恭一がバックから水筒を取り出し渡す。 「リオ様、こちらをどうぞ。」 水筒を確認すると、リオは震える手で受け取り一口、二口と飲む。 渡された分を飲み終わる頃には、震えも収まっていた。 「恭一、ありがとう。」 空になった水筒を、恭一へ渡すと顔色もすっかり良くなっていた。 まるで、さっきまでの出来事が嘘だったかの様にいつも通りのリオに戻ってはしゃぎ出した。 「ねぇ、恭一、恭二! 早く、そーま君出てこないかなぁ~!! 楽しみだね!」 「ええ、リオ様。 相馬様ならきっと活躍間違いなしでしょう。」 「そーだよ!リオが応援に来てあげてるんだもん!当たり前だよね♪」 恭一とのやり取りで、段々テンションが上がってきたリオに思わず、恭二が口を挟んでしまった。 「まったく、リオは立ち直りが早いな! さっき相馬に叱られたばかりなんだから、少しは静かにしてろよ。」 そう恭二が嗜めると、きょとんとした顔で逆に見られた。 「?? 何のこと、リオ そーま君に叱られてなんて無いよ? 恭二ってば変な事言わないで!!」 「え・・・でも・・・」 若干、戸惑ってしまった恭二を無視し、恭一はリオに前を向くよう促していた。 「リオ様、間もなく大会が始まるようですよ。 少し静かにして前を見ましょう」 「恭一、そーだね。」 「ほら、恭二も席に座れ。邪魔になるぞ。」 恭一に促されるまま、リオと並んで恭二も席に観覧席について大会を観る。  恭二は大会の最中、どうしてもさっきのリオの様子が気になっていた。 控え室に入るなり、奥の方で同じ年頃の選手達の声が聞こえて来た。 「噂の婚約者連れとは流石、優勝候補様は違いますね~。」 「全く、精神統一の居る競技なのに何考えてんだか・・・」 蔑んだ目でこちらを見ている選手達の中には、何度か大会で見掛けた事のある顔もいた。 なるほど・・・。負け犬程良く吠える。 しかし「婚約者」か・・・。 面白い。 ふふっと思わず、口元がにやけてしまった。その瞳は、冷えたままに・・・ それを、彼らは余裕の表情と取ったのか、その目には憎しみ、妬み嫉妬の感情を滲ませていた。 そんな感情に支配された彼らに、相馬が負ける事など 勿論無かった。

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