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キックオフ

「うわ!! こんな所でリョウってば試合するんだ!!」 「まぁ、インターハイだしね。 テレビでも中継されるんだよ。」 スタジアムの入り口で、手続きをしながら翼と朝比奈は選手の控室へと向かっていた。 新聞部の特権なのか、部長から関係者パスを渡されていたのだった。 「こんなデカいトコだとは知らなかったわ・・・」 「予選とかは、学校のグランドだったりしたしね。けど、僕もココまで入ったのは初めてだよ。これのおかげだね~」 首にかけていたパスをひらひらさせながら、ハルが翼に御礼を言った。 少し行くと控室の前で、ストレッチしているリョウを見つけた。 「リョウ~。 調子はどう?」 「お! 翼に、ハル!! 来たのか~。」 ユニホームに身を包んだリョウに、翼が差し入れを手渡す。 「ほら、これ! 差し入れ! チームの人と試合終わったら食べて!!」 クーラーボックスには冷凍したゼリー。咲紀に味見をして貰ってるから、味的には問題ないはず! それでも、試合前に食べて何かあったら困るので、終わって食べるのに丁度いい様に冷凍して持ってきたのだ。 翼から、クーラーボックスを受け取ったリョウは、控室内に居たマネージャーに声を掛けそれを手渡した。 「お!サンキュ!  ・・・・あ、マネージャーこれ、差し入れ後で食うから・・・」 「リョウ、今日はカッコイイとこ期待してるよ!! 」 そう言って、肩に掛けていたカメラを持ち上げる。 「おう!! 任せろ!」 「あ、オレ! 監督にも挨拶しないと!!  ハル先にベンチの方、行ってて!」 そう言って、控室の中に翼は入っていった。 「ったく、翼は緊張感無いな・・・。」 「あはは、まぁ、リョウも緊張ほぐれたんじゃない? 僕も、応援してるから頑張って!」 「ああ! ハルも来てくれてありがとう。」 「あ、そうだ。僕からも差し入れ。」 ハルから手渡されたモノを見て、一瞬リョウの瞳が揺れる。 「頑張れよ。応援してるからな!」 「・・・おう!」 リョウの胸に、軽くパンチして気合をハルがいれた。 「ハルも差し入れ用意してたんだな。」 控え室のドア越しに、なんとなく聞こえた事をカメラセッティングの間の繋ぎで話しただけで、別に何の意味も無かったのに 朝日奈の顔が一瞬、固まった気がした。 「え? ああ、まぁ手ぶらじゃアレだしね。 あ、食べ物じゃないから安心して?」 「えっ・・・ああ、別にかぶっても問題ないだろ?」 カメラのセッティングをしながら、翼が朝比奈を見る。 どこか、緊張した顔でコートの中を見ていた。 「? ハル、どうかした?なんか、ハルの方がこれから試合するみたいな顔してる。」 「え? あ、そう?? なんか、僕が緊張しちゃってるのかな。。」 「ハルでも、そんな事あるんだ・・・。」 「えーなに、僕だって緊張位しますよ!相馬じゃないんだからさ~。」 「あー・・・確かに、相馬はしなそう! ・・・って、相馬もそろそろか?」 「そうだね。 田中さんもさっき着いたみたいだし。今ならまだ、メール見れるんじゃないかな??」 そう言われて翼も一旦カメラから目を離し、ポケットから携帯を出しそのまま相馬にメールを送った。

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