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特技です。

相馬は空気の悪い控室ではなく、少し暑いが青々と茂った木の陰の下に居た。 そこへ恰好に似合わないクーラーボックスを持ったスーツの男が、駆け寄ってきた。 「相馬様。只今戻りました。」 「・・・リョウの所まで行ったのか・・・。」 「はい。申し付かった様に致しました。」 「そうか。・・・それは?」 「こちら、佐々木様より相馬様へお預かり致しましたので、試合が終わった後にお召し上がり下さいませ。」 「・・・そうか。」 クーラーボックスの中身を見せ、また大事そうに田中は仕舞った。 「ところで、あの件はどうなっている?」 「その件の報告書は後程、お部屋にお届けいたします。」 そう言って一礼し、下がろうとしかけたが・・・ 「・・・どうした?」 「相馬!絶対勝てよ!!」(声真似&ポーズあり) 「・・・・・・・た、田中?」 「以上。佐々木様よりご伝言でございました。 今度こそ、失礼いたします。」 「あ、ああ・・・。」 心地よい風が、二人の間を吹き抜けていった。 大会の始まる案内放送が流れた。 会場内に、リオ達の姿が有った。観覧席では、いちをはマナーを守ってはいるらしい。 時折、リオと視線が合ったが、すべて無視したが・・・ どうやら、他人にはそれすらも、熱い視線の交わし合いに見えるのか控室で突っかかってきた男達は、勝手に憤っては心を乱していった。 この緊張感   一瞬の静寂 そして 矢が空を切る・・・ 的に当たるこの音 全てが心地いい。 結果は、言わなくても相馬の一位通過だった。  その心地良さはすぐに喧噪の中に消し飛んでいった。 「そーま君凄ーい!!! 一位だよ!!」 「ちょ!!リオ! 騒いだらまた、相馬に怒られるぞ!」 「えー!! もう、恭二煩い!! そーまくーん!!凄いー!!」 「・・・リオ。オレは着替える。」 「えー、リオも着いてく~。」 「おい。恭二、恭一、いい加減にちゃんと見て置け。」 「はーい!」 「畏まりました。」 恭二と恭一は相馬に返事をし、リオの両サイドから捕まえてそのまま車へ戻って行った。 「もー!!恭一!! 恭二!! 離して!! そうま君のとこに行くの!!」 「リオ様、あまり我が儘を言いますと、相馬様に嫌われてしまいますよ?」 「えー、やだー。」 「・・・なら、リオも最初から、大人しくしろよ。」 「恭二、煩い!」 二人は、リオの腕を離し普通に迎えの車の所まで来ていた。 「僕、そうま君の車で帰る~。 田中、ここ開けて」 そう言って、青桐家の運転手に声を掛けた。 「・・・相馬様より、申し付かっていない方を乗せる訳には・・・。」 「はぁ? この僕をそうま君がダメだなんて言う訳ないじゃん!? なんなの?? いいから早く、開けなさい。この僕を誰だと思ってるの?」 恭一、恭二は何も言わずリオの後ろに構えている 田中はその二人に視線をやるが、溜息を一つ・・・ 「畏まりました。恭一様、相馬様へは貴方様がご了承を御取り下さいませ。 リオ様、どうぞ御乗り下さいませ。」 「最初からそうしなさい!! 僕は、そうま君の大事な人なんだからね!!!!!!!」 後ろのドアを開け、リオを中に乗せる。 エアコンの利いた車内。 ふかふかのシート。 青桐家の車は八月朔日家のよりもかなりグレードが良かった。  「ふふ、僕がそうま君と結婚したら、これも僕のモノ・・・」 そう言いながら、車のシートの質を確かめる様に撫でてるリオを恭二は何とも言い難い気持ちで見つめてしまった。 (・・・リオ?) 「ん? なにこれ? 」 シートに置かれていた、クーラーボックスを見つけたリオはそれを開けようと手に取った。 「リオ様、そちらは相馬様にとご友人からの差し入れですので・・・。」 そう田中がリオの行動を制止させようとしたが・・・先に動いたのは恭一だった。 「リオ様、もうそろそろ相馬様がいらっしゃいますので、お化粧でも少し直されたらいかがですか?」 クーラーボックの代わりに化粧ポーチを手渡す。 「え! そうま君に、嫌われちゃう~!!」 恭一から、ポーチを受け取り、手慣れた様子で化粧を直す。そしてそのまま、クーラーボックスは恭一が持っていた。 「・・・何をしてるんだ?」 「「お疲れ様です、相馬様。」」  田中と、恭一の声は重なった。 「リオ様が、相馬様とご一緒に帰宅されたいと・・・」 「構いませんよね?相馬様」 「・・・、ああ。お前らも乗ると良い。」 恭一と、恭二にも乗る様に伝え、二人を先に乗せた。 「田中、どうせ大会の間は八月朔日に行くんだ。構わない・・・。」 そう、田中に伝え自分も車に乗り込むが、その目は言葉とは真逆の感情を表している様だった。 「・・・畏まりました。」

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